食中毒予防と調理の基本(訪問介護編)

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食中毒予防と調理の基本(訪問介護編)

食中毒は、夏場にのみ発生するものではありません。毎年11月から2月にかけては、ノロウイルスに注意を払う必要があります。食中毒は、食品製造施設や飲食店などを原因として発生する場合もありますが、家庭においても依然として食中毒が発生しています。今回は「食中毒予防と調理の基本」をご参考にご紹介します。

訪問介護では、家庭での食品の取り扱いに十分注意し、食中毒を予防するためにご活用頂ければ幸いです。

主な食中毒細菌の特徴

サルモネラ


サルモネラは、家畜や家禽の腸管内にあり、鶏や豚、牛、ペットなどの動物が保菌しています。食肉や卵がこの細菌に汚染されていた場合、加熱調理が十分でなかったり調理済みの食品を汚染して起こる場合があるほか、サルモネラを保菌するネズミのふんや尿により汚染されたり、調理人が保菌し、食品が汚染され食中毒を起こすことがあります。原因食品としては、ウナギや卵焼き、ローストチキンなど食肉や卵などが見られます。
予防方法としては、

  1. 肉の生食を避けること
  2. 加熱調理を行う場合、食品の中心部まで十分火を通すこと
  3. ネズミなどの駆除の実施

などが必要です。

腸炎ビブリオ


腸炎ビブリオは海水中や海泥中に存在し、海水温が上昇すると海水中で急速に増殖します。従って、この菌による食中毒は7~9月に集中しています。原因となる食品は寿司や刺身が中心ですが、煮カニなど加熱加工を行った食品でも加工後に海水で冷却するなどして再び汚染が起こり、食中毒を起こす例もあります。

予防策としては、

  1. 腸炎ビブリオは海水と同じ塩分濃度でよく発育し増殖しますので、魚介類を調理する前に真水でよく洗うこと
  2. 増殖速度が早いことからわずかな時間でも冷蔵すること
  3. 魚介類の調理に用いた器具や手をよく洗浄し、器具は殺菌すること

などが必要です。

腸管出血性大腸菌


O-157などに代表される病原大腸菌の一つですが、赤痢菌が産生する毒素に類似したベロ毒素を産生し、激しい腹痛、水様性下痢、血便を特徴とするほか、特に子どもや老人では溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症を引き起こす場合もあり、速やかに医療機関に受診するなど注意が必要です。また、人から人へ直接感染が広がる場合があります。
食肉などのほか、水を原因として発生するため、食品の加熱調理を十分に行うほか、井戸水など飲料水の管理も重要です。

ノロウイルス

特徴としては、食品中では増えず、ヒトの腸管だけで増えます。カキ等の二枚貝の体内に蓄積されます。感染経路は、

*汚染されていた貝類を生あるいは十分に加熱しないで食べた場合
*調理従事者などを介して二次汚染した食品を食べた場合
*患者の糞便や吐物から二次汚染した場合です。

◎ノロウイルスによる食中毒防止のポイント

一般の食品衛生管理と健康管理がポイントとなります。

  1. 調理前は、健康チェックを行う。
    (微熱、下痢、嘔吐等はないか。家族に同様の症状の人がいる場合もウイルスを手に付けて調理場に持ち込む可能性が高いので特に注意が必要です。)
  2. 調理前、食事前、トイレの後には、十分に手洗いを行う。
  3. 布タオルなどの共用をしない。
  4. 調理器具はよく洗い、熱湯消毒や次亜塩素酸による消毒を行う。
  5. カキなどの二枚貝は、加熱して食べる。
    (ノロウイルスは食品の中心温度85度以上で1分間以上の加熱を行うと感染性がなくなるとされています。)
  6. 盛りつけのときは、料理を手や器具で汚染させないように注意する。

予防及びまん延防止

  • 事業所では、食中毒の予防及びまん延防止のため事業所内の衛生保持に努め、手洗い場、トイレ等の整備を努めるとともに、日ごろから整理整頓を心がけ、消毒、掃除、換気を定期的に行い、事業所内の衛生管理を努める
  • 食中毒になったら自己判断で対処せず必ず病院に行く
  • 食中毒になると下痢などで脱水症状を起こしやすくなる為、水分補給は十分にする
  • 食中毒になったら、まん延防止の為、食中毒の原因と思われる食材(生ごみ含む)を隔離保管し、保健所に提供する。また、消毒処理を行う

お客様の状態に合わせた調理法

調理援助計画の進め方

お客様の状態に合わせた調理をしていく際は、担当の医師や看護師、栄養士から情報・指示を受け、御家族、ケアマネジャーと相談し、調理についての計画を立てましょう。

専門的な調理について

調理援助の中でも、医師の指示に基づく「特段の専門的配慮をもって行う調理」については、『身体介護』となります。刻み食やミキサー食を提供をしていても、医師の指示等に基づく専門的調理でなければ『身体介護』とは認められませんので、注意しましょう。また、現場の状況により保険者(市町村および特別区)にも内容の確認をしながら、判断をしていくようにしましょう。

お客様の理解

医療機関の指示のもとで調理を行うことはもちろん重要ですが、お客様と介護従事者が調理法の重要性をお互いに理解していかなければいけません。味覚の低下した高齢者にとって、塩分制限等の薄味はとても辛いものです。お酢や香辛料を活かしたり、だし味を効かせるなど、調理の工夫をすることを心がけましょう。

食中毒予防のための調理の基本

日常生活の楽しみのひとつである「食事」

食事は単に栄養を摂取するというだけではなく、お客様にとって楽しみのひとつですので、食事を楽しんでいただけるように工夫をしましょう。また、バランス良く食事を摂っていただき、1日1500kcal以上を摂取することで、低栄養にならないように注意しながら食事を提供しましょう。

衛生上の配慮を

お客様に、楽しく安全に食事をしていただくために、調理の際は下記について十分注意をしましょう。

調理をする前に

①爪を短く切りましょう。

②エプロン(三角巾・帽子)を着用しましょう。

③石鹸でよく手を洗いをし、うがいもしましょう。

④手洗い後は、清潔なタオルで拭きましょう。

調理作業時の注意

①まな板、包丁は洗剤でよく洗ってから使用しましょう。

②野菜は流水でよく洗い、水気をきってから切りましょう。

③魚介類は必ず水道水で洗浄してから処理を始めましょう。

④牛肉・魚介類を扱った手や調理器具は、次の作業に移る前に洗浄・消毒をして二次汚染を防ぎましょう。

まとめ

異なる生活環境のお客様のお家に訪問する訪問介護においては、直行直帰の職員にも適切に食中毒予防について指導を行う必要があります。最近では漂白剤もスプレータイプのものも普及され、簡単に衛生管理が出来るようになりましたので、このような点も含めて日頃から徹底した衛生管理等の指導をされて下さい。

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