介護職員へのOJT~応急処置の対応①~

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介護職員へのOJT~応急処置の対応①~

職場内教育(OJT:On the Job Training)は、日常の仕事の中で教育・指導を行うことにより実践力を高める目的があります。
いざという時の応急処置の対応についてOJTを活用し、指導を行っていないと、必要な時に適切な対応が出来ず、職員が不安になるだけではなく、利用者の命に関わる恐れがあります。
今回は、『職員へのOJT~応急処置の対応~』についてご紹介しますので、皆様のサービスの質の向上にお役立て頂けたら幸いです。

誤飲・誤嚥

誤飲・誤嚥

観察点(確認すること)

  1. 何が詰まったか確認
  2. 顔面蒼白の確認
  3. 呼吸困難、呼吸停止の有無
  4. チアノーゼの出現
    顔面蒼白、口唇や爪が紫色
    首筋に冷や汗(しっとり、じっとりとした冷や汗)
  5. むせが続く場合

対応方法

救急車での搬送を視野に入れ以下の行動を速やかに行う

詰まった物を除去

  • 背中をたたく
  • 大きな咳をできる限り続けてもらう
  • 口腔の物を掻き出す(指をかまれないように注意する)
  • 義歯を外す
  • 吸引器で口内の物を吸引

看護師及び対応可能な職員に至急連絡、呼び寄せ対応

※むせている状態で、咳を繰り返す場合

胸郭下部(側胸部の下腹部)を咳とともに圧迫すると腹部に力が入りやすく、自力で排出できやすい)
※背部叩打法、ハイムリック法

誤飲したものが、酸性やアルカリ性の強い薬品などの場合、吐くと薬品の逆流により、食道や咽喉、口腔内の炎症を引き起こすため、無理に吐かせないよう注意する。

排尿の異常

排尿の異常

正常な状態

1日の尿量:1.5リットルから2リットル
日中 4~5回 夜間 1~2回
色:薄い黄色
色等の異常

  • 紅茶色:ビルビリン尿(肝疾患)
  • 極薄い黄色、甘い臭い、多尿(糖尿病の高血糖症)
  • 血液の混じった尿:尿路感染症 バルーンカテーテル留置中に起こりやすい(チューブが引っ張られ膀胱内に傷がつき出血する)

観察点(確認すること)

  1. 頻尿:1日の尿回数10回以上
  2. 尿閉:尿意を感じても、排尿が容易にできない
    努力して腹圧をかけても排尿ができなくなった状態
  3. 無尿:尿が腎臓で作られなくなった状態
  4. 尿失禁:無意識に尿が漏れる
  5. 1日の尿量、尿の濁り具合
    尿に血液混入の有無等
  6. ⑥排尿時、下腹部の疼痛や不快感の有無

対応方法

  • 日中および夜間の排尿回数が非常に多く排尿痛、尿混濁、異臭、発熱などがある場合、又は尿が出にくい場合、尿路感染症の疑い。受診の相談をする
  • 尿が8時間以上ない場合、下腹部の膨満の有無を確認、水分が不足な状態か(脱水の疑い)、尿閉の状態か等を確認

*看護師への報告を行う

排便の異常

排便の異常

正常な状態

回数:1日に1~2回程度
硬さ:有形便(便の形があり、ある程度の軟らかさがある)

その他の便の状況
硬便:ころころと石のように硬い便
泥状便:粘度のような便水様便:水のような便
色:茶色 1日量:約100~200g

観察点(確認すること)

下痢便

排便の回数、色、硬さ、混入物など、いつから下痢便になったか、どれくらい続いているのか、食事との関係はどうか

便秘

硬い便を1日に数回程度
毎日排便があっても少量程度か又は排便が困難な状態、残便感がある

下血

黒いコールタールのような便(どろどろしている黒い便)

対応方法

下痢が続く場合

  • 安静にして、体力の消耗を防ぐ
  • 水分摂取を多くして、消化の良いものを食べる
  • 臀部の汚染はかぶれの原因になるので、清潔を保つ
  • 下剤服用中は中止し、看護師に指示内容を確認する

便秘の場合

  • 何日間排便が無いのか確認
  • 吐き気、嘔吐の有無
  • 腹部膨満の有無
  • 食欲不振がないか

これらの症状を確認しながら多めの水分摂取をすすめる

  • 運動量を増やす、散歩、体操
  • 入浴時に腹部マッサージをする
  • 自然排便ができるよう排便環境を整える⇒定時にトイレでの排泄、繊維の多い食べ物を摂取する

下血の場合

  • 看護師、担当医へ即連絡し受診をする

頭部を殴打した場合

頭部を殴打した場合

転倒により頭部を打撲した場合、頭蓋内出血や硬膜下血腫に対する注意が必要

観察点(確認すること)

  • 外傷、頭痛、意識状態の変化等
    頭が痛い、気持ちが悪い、吐く、ぼーとしている、動かない

対応方法

  • 衣服をゆるめ、頭部を水平にして寝かせる
    外傷の有無にかかわらず、冷あん法を行う(いやがる場合は状況判断必要)
  • 意識状態を確認する
    意識がない場合は直ちに救急車の手配が必要
  • 外傷が無くて意識がはっきりしている場合
    そのときは問題が無くても、数日後に頭痛や吐き気を訴えることがある。
    入浴を控えるなど経過観察を行う、様子が変わったと感じたときは直ちに受診の準備をする。

捻挫をした場合

捻挫をした場合

訴えの少ない高齢者の場合、骨折と捻挫を見た目で区別するのはとても困難。

  • 患部の形が変わる
  • 動かしたり触れたりすると激しい痛みがある
  • 自分で動かせなくなる
  • 歩行できていた方が、歩行できない、立てない     

→骨折の疑いあり

*骨折の疑いがある場合は受診する。

観察点(確認すること)

  • 患部の痛み、動かすと痛い
  • なんとなく腫れている
  • 熱感がある

対応方法

  • アイスノン、ポリ袋に入れた氷水をガーゼやタオルなどで包み20分程度冷やし、患部の様子観察をする。
  • 患部を湿布する
  • 安静を保つ(揉んだり、マッサージはしない)
  • 腫れや痛みが強くなったり長く続いたりするときは骨折の疑いがある。

まとめ

まとめ

以前、住宅型有料老人ホームで、誤嚥事故がありましたが、利用者への対応が適切でなく、窒息死に至ったケースがあります。保有する知識だけで安心するのではなく、日頃の訓練がいざという時に慌てずに、利用者の命を救うことになりますので、申し送りや研修の際にもご確認下さい。

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