介護人材確保のために「辞めない職場づくり」4つのポイントを解説

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介護 辞めない職場

超高齢化を迎えた現代社会では、今後より多くの介護職員が必要になると考えられています。しかし、介護業界では人材不足が蔓延化しており、介護職員の確保と定着に悩む事業所も少なくありません。

職員の離職率を低下させるとともに、利用者さんにより良い介護サービスを提供するためには「辞めない職場づくり」への取り組みが重要です。こちらでは、介護人材の確保と定着のための、4つのポイントについて解説していきます。


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65.3%が人手不足を感じる「介護職の現状」

令和元年度の調査によると、全事業所の65.3%が人材不足を感じると回答しています。職種別では訪問介護職員の割合がもっとも高く、全体の80%以上にも上ります。

一方、介護職の離職率は15.4%と、全産業平均の14.6%と比較してもさほど高くはありません。生活関連サービス業の離職率は23.9%、宿泊および飲食サービス業は26.9%など、離職率の高い職種と比較すると大幅に下回る結果となっています。

各事業所の環境改善の努力により、近年の離職率は横ばい状態にあります。それでも介護の人材数は決して十分なものではなく、人手不足が蔓延している状況となっているのです。

事業所の56.7%「良質な人材確保が難しい」

介護サービス事業を経営する上での問題点として、全体の56.7%が良質な人材確保の難しさをあげています。サービス別で見ると、入居施設がもっとも高く68.0%です。

実際に、平成27年度に20.3%だった採用率は、令和元年度には18.2%とゆるやかな減少傾向にあります。減少理由としてあげられるのは、同業他社との競争や、他業種と比べ労働条件が良くないことなどです。

さらに、少子高齢化による労働人口の減少も、人材確保の難しさに影響していると考えられるでしょう。

人材確保のための十分な賃金が払えない

人材確保の次にあげられるのが財源の問題です。「人材確保・定着のために十分な賃金を払えない」と回答した事業所は、全体の47.5%。サービス別で見ると、通所型の施設が51.3%ともっとも高い割合を示しています。

また、「労働条件や労働環境改善をしたくてもできない」と回答する事業所も3割近くにのぼり、多くの事業所が人材と共に財源に課題を抱えていると言えるでしょう。

離職理由はお金だけじゃない?職場環境重視

職員側の離職理由に注目してみると、上位としてあげられたのが「職場の人間関係に問題があったため」(男性25.2%、女性22.6%)です。他にも、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」が高い割合を示しており、現場で働く介護士は職場環境を重視していることが分かります。

男女別に理由を見ると、男性のもっとも大きな離職理由は「自分の将来に見込みが立たなかったため」(29.0%)です。つまり、人材定着のためには、キャリアパス制度の構築や処遇改善が必要だと考えられます。

女性は結婚や出産を機に離職する割合が高く、育児と仕事を両立できる職場環境も重要だと言えるでしょう。

6割以上が入職から3年未満に離職

離職者の勤務年数を見ると、1年未満の者が37.8%、1年以上3年未満の者が25.7%と半数以上が3年未満で離職していることが分かります。非正規の介護職員においては、3年未満で離職する割合は全体の約7割です。

非正規の介護職員は未経験から始める人も多く、この期間の指導や、その後の介護福祉士資格取得を含めたキャリアパスが重要視されると考えられます。

「辞めない職場づくり」4つのポイントと好事例

介護現場にはさまざまな環境のスタッフが働いており、求める条件はそれぞれに異なります。すべてのスタッフの希望条件を満たすことはできませんが、より多くのスタッフが「長く働きたい」と思える職場を作るためには、以下の4つの項目を改善するのがポイントです。

職員と意識を共有「理念浸透」
人材を育てる「研修」
人材定着につながる「職員満足度向上」
働きやすい職場に「業務負担軽減」

それぞれの内容と厚生労働省による「介護事業所における魅力ある職場づくり事例集」にある好事例を確認していきましょう。

「理念浸透」を徹底しスタッフのモチベーション向上

経営理念を浸透させるためには、経営者と職員のコミュニケーションを欠かすことはできません。経営者が職員へ働きかける機会を設けるほか、ハンドブックを配布するなど具体的な取り組みが効果的です。

[事例]理念浸透で指導がスムーズになり人材も充足
岡山県の株式会社アール・ケアは、経営理念をスタッフに浸透させるため毎月全体会議を実施。職員の士気を上げるとともに、「業界初の自社サービスのブランド化」という理念の周知を徹底しています。

また、「大きなあこがれへの参加」という理念のもと、介護職のイメージを一新させる建物やユニフォームのデザイン開発に取り組み、職員が自慢できる環境づくりを目指しました。

結果、離職率は平均より低い6%を推移。20名の採用人数に対し年間応募者数は350名と、高い実績を生み出しています。

定期的な「研修」で人材確保と定着を促進

より多くの職員が必要な介護施設では、優秀な人材は自らが育成するという姿勢が求められます。経営者が研修に携わることで、職員とのコミュニケーションが活性化されるというメリットも生まれるでしょう。

[事例]研修ポイント制度でスキルアップを見える化
広島県の社会福祉法人正仁会は、独自の研修プログラム「NLC(にのみやラーニング・チャレンジ)」を発足。研修やセミナーに参加するごとに、配布したポイントカードにポイントが加算される取り組みを実施しました。

たまったポイントは、外部研修への参加費用や書籍代として利用可能。研修の参加率がアップしたことで介護の質が高まり、2名必要だった現場が1名で回るなど作業効率が向上しました。

スキルアップした職員は、大学の講師や介護用品の企画開発などでも活躍。結果、職員全体のモチベーションがアップするというメリットも生まれています。

働く意欲を引き出す「職員満足度向上」

職員が「長く働きたい」と思える職場を作るためには、現場のニーズをくみ取ることが大切です。職員の満足度がアップすれば良い口コミが広がり、人材確保もしやすくなると考えられます。

[事例]職員からの信頼を獲得し満足度アップ
住宅型有料老人ホーム・ゆうの風三田尻は、「利用者と職員どちらも大事」という考えから職員の満足度向上を目指した取り組みに着手します。現場で働く職員の信頼を得るため、経営情報を細かく開示。子育て中の職員には、曜日や時間帯、休日を優遇したうえで改めて契約を交わしたほか、資格取得者には資格手当を付与しました。

また、「職員が稼いだお金は1円でも大事に活かしたい」という考えのもと、各部署の裁量で一定の金額を自由に使える制度を導入。「働き続けたい」「会社が大好き」という職員が増加し、離職率も10%前後にとどまるという結果を生み出しました。

「業務負担軽減」で離職リスクに対処

人材不足による業務負担の増大は、腰痛や残業、メンタルの不調の要因にもなり得ます。負担軽減に役立つ取り組みこそ、現場の声を取り入れながら進めていくことが大切です。

[事例]「お仕事サポーター」の導入で介護負担軽減
広島県の社会福祉法人あと会は、利用者さんからトイレ掃除の指摘を受けたことをきっかけに、「お仕事サポーター」制度を導入します。食器洗いやリネン交換、掃除など介護以外の業務だけを担当する人材を地域から募集。主婦や高齢者を中心に、24人のサポーターを確保しました。

1ユニットに1名程度のサポーターを配置した結果、介護以外の業務負担は大きく軽減。職員と入居者さんとのコミュニケーションが充実し、介護サービスの質向上へとつながりました。

また、介護ロボットも積極的に導入し、業務の効率化を図るほか腰痛発生防止の取り組みも実施。結果、職員の負担軽減に直結しただけでなく、お仕事サポーターとして参加した人が介護職として改めて就職するなど、人材確保の面でも大きなメリットが得られました。

「介護職員が辞めない職場」へ 国の取り組み

約245万人の介護人材が必要となる2025年度に向け、政府は介護人材を確保するためのさまざまな取り組みを実施しています。職員が辞めない働きやすい職場づくりには、これらの制度の活用も効果的です。

取り組みを見える化「認証評価制度」

「人材育成等に取り組む介護事業者の認証評価制度」は、事業所の取り組みを都道府県が評価し、認証を付与する制度です。環境改善に意欲的だと認証を受けた事業所の情報は、都道府県のホームページや就職フェアを通し、求職者へと提供されます。

認証によって同業他社との差別化が図れることは、人材確保において効果的であると言えるでしょう。また、自治体によっては、認証の取得とあわせ人材確保等支援助成金の活用も可能。

財源確保の問題を抱える事業所にとって、大きなメリットが得られると考えられます。

介護負担を軽減「ICT事業」の導入促進

「ICT導入支援事業」は、介護ソフトやタブレット端末導入のための補助金を支給する事業です。ICT化によりシフトやカルテをネット上で管理できれば、職員間の情報共有が可能となるだけでなく、業務負担軽減にもつながります。

訪問介護の現場でも、事業所へ戻ることなく、その場でカルテ記入が可能となるのです。さらには、タブレット端末やスマートフォンに慣れ親しむ、若年層の人材確保にもつながると期待されています。

職員が笑顔で働く「辞めない職場」づくりを

より多くの介護人材を確保するためには、競合他社との差別化が重要です。そして、確保した人材を定着させるためには、職員が働きやすい環境を作らなくてはいけません。

そのためには、現場の声に耳を傾けニーズをくみ取っていく必要があります。職員の満足度が高ければ介護の質は向上し、より良い介護サービスの提供へとつながります。

必要な研修を実施し自らの職場で人材を育成しながら、職員にも利用者さんにも喜ばれる環境づくりを目指していきましょう。

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