
高齢化がすすむ日本において、介護が必要な高齢者は年々増加傾向にあります。一方、高齢者を支える介護従事者はそれに伴っておらず、介護従事者の不足はもう一つの社会的課題として深刻化が増しています。介護従事者は、他の産業に比べて離職率が高く、慢性的な人材不足にあります。国は令和3年の介護報酬改定において、質の高いサービスを提供している事業者への評価を適切に行うため、サービス提供体制強化加算を大きく改正しました。こちらでは改定を踏まえ「サービス提供体制強化加算」について解説します。
シフト表を作るだけで、勤務形態一覧表を自動生成!
介護専用のシフト管理サービス「CWS for Care」 なら、配置基準や加算要件は自動で確認、「兼務」にも対応。勤務形態一覧表はボタンひとつで自動出力、作成時間がゼロになります。
⇒ 「CWS for Care」公式サイトへアクセスして、今すぐ資料を無料ダウンロード

目次
サービス提供体制強化加算のねらいとは

サービス提供体制強化加算を取得するには、原則として毎年3月にその年度の雇用状況を都道府県知事へ申請しなければなりません。この加算は、介護従事者全体において介護福祉士の占める割合が高い事業所や、勤続年数の長いスタッフが多い事業所に報酬を上乗せすることで、質の高いケアを推進させることがねらいです。
介護福祉士による専門性の高いサービスは、利用者にとって安全で安心できるケアを提供できます。また働きやすい職場環境は職員の長期雇用を実現すると共に、介護従事者としてじっくりとキャリアを積むことができる職場づくりにもつながります。
令和3年春サービス提供体制強化加算は一新!

令和3年度の介護報酬改定では、今までのサービス提供体制を評価する仕組みが一新され、上位区分の新設や報酬単位の見直しが行われました。たとえば通所介護の場合、改正前の加算(Ⅰ)の加算要件を(Ⅱ)に位置づけしなおし、新たに上位の区分となるサービス提供体制強化加算(Ⅰ)の要件のハードルを高くしたうえで単位数を上げました。
これにより、従来の基本の人員配置基準よりも手厚い人員体制で運営していた事業所を今まで以上に評価できる仕組みが導入され、まさに加算の捉え方が根本から一新されたのです。
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)が新設
従来のサービス提供体制強化加算を改正するにあたって国が目指したのは、サービスの質の向上を図ることと職員のキャリアアップを推進することです。介護福祉士国家資格保有者が介護従事者全体に占める割合の高い事業所は、専門性の高いサービスが行われているとして加算(Ⅰ)の取得対象となっています。
また、介護福祉士や勤続年数の長い職員の割合が高い事業所は、経験豊かなスタッフによる人材育成やキャリアアップの仕組みが整備されているとみなされ、改正前よりも高い報酬を得ることが可能になりました。
介護職員の勤続年数が長いと報酬単位が増える
夜間対応型訪問介護や訪問入浴介護では、勤続期間が10年以上の介護福祉士が職員全体の25%以上を占めると、勤続年数要件を満たして加算をとれるようになりました。国はこの要件を新設することで、職場への定着率向上や離職防止、キャリアアップによるサービスの質向上を狙っています。顔なじみの職員による介護サービスを安定的かつ継続的に提供することが、利用者の安心感にもつながっています。
サービス種類別の介護給付費算定要件を比較
加算の取得要件は、事業種別によって異なります。訪問介護サービスにおいては、高齢者の自宅を訪問して身体介護や生活援助を行い、施設サービスでは24時間体制で中重度の要介護者のケアをするといったように、それぞれのケアの特徴があります。
事業形態ごとに必要な知識やスキルが異なるため、加算の取得には従業員の資格や勤続年数だけではなく、利用者情報の文書等による伝達・訪問介護員等からの報告、研修などの定期的なスキルアップへの取り組みも要件になることがあります。
サービス種別 | 特徴 | 算定できる要件 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
24時間体制 | 介護福祉士配置 | 常勤職員配置 | 勤続年数 | 計画的な研修 | 人員欠如の免除有 | |
訪問介護 | なし | 〇 | - | - | 〇 | - |
通所介護 | なし | 〇 | - | 〇 | - | 〇 |
入所施設 | あり | 〇 | 〇 | 〇 | - | 〇 |
通所介護でサービス提供体制強化加算を取得する

通所介護では従来の加算(Ⅰ)を(Ⅱ)に位置づけしなおし、新しい加算(Ⅰ)の単位数を上げたうえで、要件のハードルを上げて新たな最上位区分の新設がされました。つまり、改正前では介護福祉士が全体の70%を占めていれば、一人当たり一回180円の加算を取得できていたことが、改正により一人当たり一回220円と増額されたのです。
これは30人の通所介護の場合、一日あたり220円×30人=6,600円の収入となり、1ヶ月間毎日営業したとすればおよそ20万円の収入となります。改正前と比較すると4万円の増額となることから、要件を満たすことができれば、運営面においても積極的に取得したい加算といえるのではないでしょうか。
算定要件と単位
通所介護におけるサービス提供体制強化加算は、3段階に分けられています。それぞれの要件はハードルが高いものの、通所系サービスの算定要件等を確認し、ぜひ取得を検討されてはいかがでしょうか。
区分 | 単位数 | 算定できる要件 |
---|---|---|
サービス提供体制強化 加算(Ⅰ) | 22単位/回 | ・介護スタッフのうち、介護福祉士の占める割合が70%以上 または ・介護スタッフのうち、 勤続10年以上の介護福祉士の占める割合が25%以上 |
加算(Ⅱ) | 18単位/回 | ・介護スタッフのうち、 介護福祉士の占める割合が50%以上 |
加算(Ⅲ) | 6単位/回 | ・介護スタッフのうち、 介護福祉士の占める割合が40%以上 または ・利用者に直接サービスを提供する職員のうち、 勤続7年以上の者の占める割合が30%以上 |
計算方法と計算シート
都道府県の介護保険担当課のホームページでは、サービス提供体制加算などの申請届出書がダウンロードできるところもありますので、施設・事業所の体制が算定要件に満たしているかを確認できます。過誤算定を防ぐためにも活用してみましょう。
参考サイト:職員割合算出シート|石川県七尾市HP
訪問看護でサービス提供体制強化加算を取得する

訪問看護は単独事業所や診療所との併設など、設置形態によって報酬が異なります。単独の訪問看護ステーションの場合、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)では一回当たり60円が算定できます。一日のうち10人の利用者にサービスを提供すると600円の収入となり、1ヶ月間毎日営業すると18,000円の収入となります。
算定要件と単位
訪問看護での加算は令和3年から新設されました。設置形態によって要件が異なり、少額の単位数ではあるもののぜひ取得検討されてはいかがでしょうか。
施設形態 | 区分 | 単位数 | 共通の要件 | 算定できる要件 |
---|---|---|---|---|
指定訪問看護ステーション、病院、診療所 | サービス提供体制強化 加算(Ⅰ) | 6単位/回 | ・すべての看護師ごとに研修計画の作成と実施(予定を含む) ・利用者に関する情報や留意事項を伝達し、または事業所内の看護師会議を定期開催している ・健康診断を定期的に行っている | 看護師全体のうち、 勤続7年以上のスタッフの占める割合が30%以上 |
加算(Ⅱ) | 3単位/回 | 看護師全体のうち、 勤続3年以上のスタッフの占める割合が30%以上 | ||
定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所と連携 | サービス提供体制強化 加算(Ⅰ) | 50単位/回 | 看護師全体のうち、 勤続7年以上のスタッフの占める割合が30%以上 | |
加算(Ⅱ) | 25単位/回 | 看護師全体のうち、 勤続3年以上のスタッフの占める割合が30%以上 |
計算方法と計算シート
都道府県の介護保険担当課のホームページでは、サービス提供体制加算などの申請届出書がダウンロードできるところもあるので、事業所の体制が算定要件に満たしているかを確認できます。過誤算定を防ぐためにも活用してみましょう。
参考サイト:職員割合算出シート|石川県七尾市HP
サービス提供体制強化加算要件を満たして質の高さをウリにしよう

サービス提供体制強化加算は、サービスの質向上や職員のキャリアアップを推進するために設けられました。介護従事者にとっては施設・事業所の介護報酬の収益増による賃金改善や、専門職の多い職場環境においては自己研鑽に取り組めます。
介護福祉士の配置割合が多い事業所や、勤務年数が長い職員を配置している施設・事業所は加算取得の要件を満たしている可能性がありますし、介護現場で有資格者や長く働く職員がいる安心感は、求人や顧客獲得のウリにもなります。
算定要件を満たすだけで、多くのメリットを享受できるサービス提供体制強化加算をぜひとも取得され、サービスの質を向上させるとともに職員が安心できる職場づくりに活用しましょう。
