介護現場の定着率をアップさせる「メンター制度」とは

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仕事のなかで起こるさまざまな問題や人間関係の悩み。特に新人スタッフの場合は相談できる人がおらず、一人で抱え込んでしまうといったケースも少なくありません。

介護職では入職して3年以内に離職する割合が7割以上と高く、早期離職の防止と定着率を上げる施策が急務です。今回紹介するメンター制度は、「離職を止めたい!」、「組織をもっとよい方向に変えたい!」といった場合に、早期離職の防止と定着率を上げる施策として注目を集めており、さまざまな場面で導入が進んでいます。

この記事ではメンター制度の概要を紹介するとともに、介護現場に導入するメリットやその導入方法などについて解説します。


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介護現場の離職理由で多い「人間関係の問題」とは

近年、雇用の形態が多様化し、会社と労働者を取り巻く環境が大きく変わりました。令和元年度の介護労働実態調査では、仕事を辞めた理由として「職場での人間関係」が全体の上位に位置しており、離職防止には職場内の人間関係の改善、信頼関係の構築が重要な要素になっています。

さらに、「人間関係の悩み、不安、不満」では『部下の指導が難しい』、『自分と合わない上司や同僚がいる』、『上司や同僚と仕事での意思疎通がうまく行かない』といったものが挙げられています。ほかの職種よりも同じ介護職同士で関係がぎくしゃくしてしまい、特に指導する側と受ける側の関係悪化が離職に結び付くケースが多くあるのです。

介護現場でも活用できる!メンター制度とはどんなもの?

メンター制度では、知識と実務経験を持つ先輩スタッフである『メンター』が、経験の浅い後輩スタッフである『メンティー』の抱えている問題や課題を対話によって解決に導き、その成長を促します。信頼関係の構築や離職防止といった効果が期待でき、一般企業のみならず介護現場でも導入が進んでいます。

また、これと似ているものにエルダー制度があります。直接的な業務を通じて教えていくOJT制度と近い部分があり、実務を一緒に行いながら先輩職員が新人職員をケアするという制度です。

先輩が後輩を導くといった点で共通しています。

介護現場でメンター制度が注目される理由とは

もうすぐ国民の4人に1人が高齢者という「2025年問題」と呼ばれる超高齢化社会を迎え、介護人材の確保は優先して解決すべき課題です。介護労働実態調査では、実務経験3年以内の離職割合が非常に高く、その割合は約7割にも上ります。

早期の離職を防止して安定した労働力を得るために、信頼関係の構築によって相談しやすく安心して働ける環境が重要で、介護現場ではメンター制度の導入に注目が集まっています。

メンター制度を導入するには、メンターとしての役割や実践的なスキルを学ぶためのメンター研修を実施する必要があり、運用には一定の期間と費用がかかります。人材確保等支援助成金の雇用管理制度助成コースを活用すると、必要なコストを助成金でまかなうことができるので、費用面が負担を軽減できるでしょう。

介護現場にメンター制度を導入するメリットとデメリット

業務のサポートだけではなく、精神面のサポートにも強みを発揮するメンター制度には、導入するとどのようなメリットとデメリットをもたらすのでしょうか。以下に解説します。

メンター制度導入のメリット

経験が浅い人の場合、仕事の内容や手順だけを伝えられてもすぐにできるわけがありません。信頼関係を築くことで不安やストレスを解消し、モチベーションやスキルの向上、キャリア形成を強力にサポートできます。

また、組織の活性化は、早期離職の防止と定着率の向上にもつながります。さらに、教える側であるメンターも職場や仕事についての学びが多く、自己成長を加速化させることができます。

メンター制度導入のデメリット

メンターを務めるスタッフは、通常の仕事に加えて負担が重くなり、モチベーションの低下や通常の仕事に支障が出る恐れがあります。はじめて導入した際にはメンティーに目が行きがちですが、安定的に運用するにはメンターへの配慮も重要です。

この制度は、相互の信頼関係が築かれてこそ成果が得られます。教え方や接し方があまりよくなかったり相性が悪かったりすると、お互いがストレスを感じて信頼関係を築けないことがあります。適切な人選と接し方や指導方法などの事前レクチャーが必要です。

介護現場におけるメンター制度導入の流れ

人選を終えてそこで終了というわけにはいきません。以下に導入の流れを解説します。

運用ルールの設定

実際に運用してからトラブルが生じないように、運用の前にルールを定めて共有し、そのルールをきちんと守るよう定着させることがポイントです。ここでの意識が低いと、導入はしたものの失敗してしまう確率が高くなります。

たとえば、話し合った内容は絶対に口外しない「守秘義務」を守る、困ったことや不都合が発生した際の「相談窓口」を設ける、仕事の一環としての位置づけを明確にしつつ原則として就業時間内で済ませるといったルールを定めます。また、制度上の関係が続く期間や実施頻度と時間の目安も決めておくとよいでしょう。

メンターとメンティーの決定

制度の成否には信頼関係がとても重要であることはいうまでもありません。加えて、適性のある人材を選ぶことが重要です。

メンターには能力と実績に加えて経験が豊富で、人材育成の必要性に共感できて熱心になれる人材が適しており、人として信頼できることが求められます。また、メンティーは協力関係に前向きであること、決めごとを守れること、そして実行力があることが重要です。

双方のマッチングには、「同じような問題を抱えて解決した経験があるか」、「性格や価値観が合っているか」などが選定におけるポイントになります。

メンター制度の実施

お互いの会話を通じて、気付きや助言、自己成長を促します。基本的に双方で進めることになりますが、目的やルール、実施上の心構え、進め方などを明確にしておくとよいでしょう。また、実施方法の事前レクチャーは欠かさずに行いましょう。

お互いの理解を深め、目的やゴールを確認しておく

目的とゴールを共有し、一緒に進めるうえでどうなりたいのか、お互いの期待感を明らかにして認識のずれがないかを確認しておきます。

なんとなく理解できていないことやしっくりとしないことは、お互いに遠慮なく伝えることが大切です。ゴールの設定には、数値で表すことができる効果指標を用いることをおすすめします。

設定したゴールを達成するために活動や支援をする

設定した目的やゴール確認したならば、面談を進めていきます。最初はお互いに慣れていない状態であるため、少しずつ信頼関係を構築し、小さな課題の解決から取り組むのが成功のポイントとなります。

回数を重ねるたびに話題が豊かになり、当初の目的がそれてしまいがちになるため、ワークシートなどを活用しながら目的やゴールの再確認を行い、関わり方を軌道修正していくことが大切です。

実施内容を振返り、今後の活動に活かす

メンターとメンティーすべてのペアが順調に進むわけではありません。途中で実施内容を振り返り、今後の活動に活かすためのフォローアップが大切です。メンター向けの集合研修や人事の個別面談など、効果をさらに高める動機づけを行います。

実施後の振返り

一定の期限を決め、関係を解消するタイミングでヒアリングやアンケートを通じた活動の評価を行い、目標の達成度を確認します。

ヒアリングやアンケートの集計、分析結果に基づき、成功と失敗事項のそれぞれを整理して改善に役立てます。可能であれば、スタッフ全員で整理事項を共有すると、全員で新しい気づきを得ることができます。

介護現場のメンター制度導入Q&A

ここでは、メンター制度でありがちな疑問について解説します。

Q1 社員が少なくて制度化が難しいが始められるか?

スタッフ数が少ない場合でも、最低限のルールを設定して目的を明確にしたうえで上司や同僚の理解のもとに実施方法を共有し、終了時の評価要領が整えば始められます。

Q2 メンター候補者の業務が多忙で時間確保が難しい。どのようにメンターに説明する?

自社にとって重要な施策であることとメンター制度がもたらす効果を説明し、今後は重要な役割を担ってもらうことに理解を示してもらいます。

また、業務量も増えるため、相談の持ち掛け方や日程調整などは原則メンターに合わせて進めていくことを説明します。過度な負担にならないよう最大限に配慮することを約束しましょう。

Q3 メンター制度を成功させるポイントは?

事前に勉強会や研修などを通じてレクチャーしておくことが大切です。また、同僚や直属の上司の理解が整わなければうまくいかないので、社員全員に対して十分な説明を行って理解を得ましょう。

職員との関係性が成否を左右するため、候補者の選定には十分に配慮して進めます。

メンター制度で無資格・介護未経験者でも安心して働ける環境へ

介護の担い手が不足し、苦しい状況の事業所は数多くあります。無資格者や未経験者をたくさん受け入ることに活路を見出しても、離職率が高くて定着しないのでは意味がありません。

メンター制度は、信頼関係の構築によって相談しやすく仕事のしやすい環境を整備し、社内の活性化を導くきっかけを作ります。離職率が低下して生産性が向上し、新規雇用にも効果的な制度なので、ぜひ導入を検討してみてください。

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