介護事業所の労務管理のポイントと、悩み別の改善策

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職員と事業所の間で雇用契約締結で示される「労働条件」や職員がその能力を最大限に発揮できる「労働環境」の整備など、労務管理には様々な業務が含まれます。特に介護事業所においては、多様な雇用形態や勤務表への対応、業界全体の慢性的な人材不足による人材確保の難しさなどから、異業種に比べて業務管理が難しいと言われています。

労務管理は業務を効率化していくことも大切ですが、それ以上に「働きがいのある職場」や「働きやすい職場」をつくることが重要です。職員を確保・定着をさせる」ことが労務管理に求められる重要な役割です。

ここでは、介護事業所の労務管理に関するポイントや、業務改善策や注意点をご紹介します。


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労務管理とは?

労務管理とは、従業員の「労働条件」や「労働環境」、「福利厚生」などを管理し、働きやすい環境を整えるために行う業務です。具体的には、求人や採用に始まり、給与計算や勤怠管理、社会保険や雇用保険の手続き、就業規則や業務の改善、何かあったときの労働保険の手続きに至るまで、会社が従業員に対して雇用に対して行うすべての管理がそれにあたります。

介護事業所における労務管理の特徴とポイント

介護業界の労務管理には複数の雇用形態や勤務体制、様々な職種があり、管理すべき項目も多岐にわたります。ここでは、介護事業所の労務管理における特徴とポイントについて紹介しましょう。 

雇用形態が多様

正規職員のみならず、非常勤や派遣職員など、介護事業所には多くのスタッフを確保するために様々な雇用形態があります。

それぞれの事情によって常勤では働けない人や、「朝夕のみ」や「夜勤のみ」、「土日のみ」など、職員の事情に合わせての勤務時間、勤務日数で効率よく働きたい人も受け入れており、多様で柔軟な働き方に合わせた労務管理は介護事業所における特徴の一つです。

慢性的な人材不足

介護事業所における慢性的な人材不足は深刻な問題であり、一般的には採用が困難であること、離職率が高いこと、人間関係の問題や介護業界におけるネガティブなイメージがあることなどが原因として挙げられています。

これには様々な対策が考えられますが、働きやすく、多様な人材が活躍できる職場の労働環境を整えなければなりません。慢性的な人材不足の問題を抱える介護事業所では、労務管理がカギを握っています。

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多様な労働時間

介護現場は、それぞれの営業時間によって職員の労働時間も異なります。特別養護老人ホームやグループホームなどでは基本的には365日24時間休むことなく、サービスを提供しており、2交代制や3交代制、早番、日勤、遅番、夜勤といった多様な労働時間の組み合わせで職員は勤務しています。

入浴等の人員配置を厚くしなければいけない業務の時間帯だけ職員が勤務する場合や、急な欠勤など、臨機応変に業務に合わせて、勤務時間帯を複数人で分担して対応することもあるでしょう。介護事業所における労務管理の基本が「労働時間内外の管理」であり、利用者の心身状況に合わせて、業務内容の変更があるのも大きな特徴の一つとなっています。

女性職員の割合が多い

施設や訪問介護などで働く介護職員の男女比は、男性が19.0%に女性が78.4%(令和2年度介護労働実態調査「事業所における介護労働実態調査結果報告書」)と女性が男性を上回り、圧倒的に女性が多いのが特徴です。そのため妊娠中や産休、今の時代は男性も家庭のことを協力する時代なので、男女問わずに育休、介護休暇などの整備はもちろんのこと、取得が奨励されるような体制と職場内の相互理解が重要になります。

非常勤職員の管理

訪問介護や通所介護などの介護現場では、非常勤などの非正規職員の割合が高く、「仕事に対する評価が異なる」や「顧客数に合わせて勤務時間数が異なる」「正職員と非常勤職員の業務が異なる」こともあるため、「新しい業務への不満が多い」「雇用不安定」といったことが共通の悩みとして挙げられています。

2020年4月から適用が始まった「同一労働同一賃金」の観点からも、業務内容や賃金など待遇面に正規職員との不合理な差がないように、注意しなければなりません。

介護事業所で抱える労務管理の悩み

介護業界では、労務管理に多くの悩みを抱えている事業所が少なくありません。早出や遅出、夜勤といった変則勤務に加え、慢性的な人材不足の中で、急な退職者が出ると残されたスタッフが対応するため、人員体制による勤務時間や日数と変動しやすく、一律の管理が難しい現状にあります。

比較的規模の小さな事業所では労務管理について専門的な知識を持っている職員の数も少なく、間違って理解されていることも多いので、就業規則や給与規定、マニュアルなど整備されていない、タイムカードや給与明細を紙で管理されている、多くの業務が手作業で行われているといった状況もある中で、時間と労力がかかっていることが多いです。

介護事業所の労務管理の改善に必要なこと

ここでは、介護事業所において労務管理の改善や労務のリスク回避に必要となるものについて紹介します。

労働条件は書面で明示する

スタッフを雇用した際には、労働契約や雇用契約を結びます。所定労働時間や賃金などの労働条件を書面の交付によって明示しなければなりません。一人の職員が一法人で複数の事業所に勤務する場合、それぞれの内容について明記し、説明、交付を行う必要があります。

終業時間が不明確であれば、スタッフは何時に業務が開始し、終了するのか、どこからが残業になるのかを知るすべがありません。さらに賃金の計算方法が、不透明だと、自分の働きに正当な対価が支払われているのかが不安になるでしょう。

書面を交付して明示することで、雇用側と雇用される側双方において認識の相違が少なくなり、事前にトラブルを回避することができます。

就業規則の作成と周知を徹底する

就業規則は、スタッフの目につくところに置かれているのが基本です。またその内容は、就労実態に即している必要があります。実態にそぐわない就業規則は、労働者とのトラブルにつながりやすく、また周知されていないと不信感を生み、労働基準局に相談に行かれるケースもあり、離職率を高めてしまう原因にもなります。

労働実態に即した就業規則を作成し、周知することで、スタッフは安心して働けるようになります。また、就業規則を示しながら採用時に労働条件などを説明できれば、信用力を高めることにもつながります。就業規則の作成と周知の徹底は、事業所の安定運営にとって非常に重要です。

労働時間を適正に把握し管理する

介護という仕事の特性上、24時間365日勤務体制に応じた労働時間管理の環境づくりが労務管理のカギとなります。労働時間は介護サービスを提供している時間に限ったものではありません。

交代制勤務における引継ぎ時間や業務報告書などの作成時間、施設行事の準備時間などが労働時間に含まれ、業務に付随する内容を適正に把握して、管理することでサービス残業やみなし残業、過少申告を防ぎ、働きやすい職場環境の構築につながります。

休憩・休日をしっかり確保する

人員不足などによって休憩が確保されなかったり、所定の休憩時間に利用者の急変や事故対応、ナースコール対応などで休憩が取れなかったりする場合があります。労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合には少なくても45分、8時間を超える場合には60分の休憩が義務づけられており、確実に取得できるようにしなければいけません。

「休憩中には労働から解放されていなければならない(コロナ禍においては感染防止の管理徹底が必要)」、「休憩は労働時間の途中に与えなければならない」といった約束ごとがあります。また、週1回はかならず休日を与えなければならず、「夜勤明け」の日は法定休日として認められないので注意しましょう。

適正な賃金を支払う

サービス残業や休日出勤が常態化し、残業代や割増賃金を支払わずにトラブルになるケースは後を絶ちません。引継ぎ時間や業務報告書などの作成時間も通算した時間数として、相応の支払いが必要であることはあまり知られていないようです。

労働時間に応じた適正な賃金を支払うことは、労使間のやり取りのなかでも非常に重要といえるでしょう。

解雇・雇止めについて

遅刻や無断欠席、期待していた能力に満たないなどの理由により、やむを得ず解雇する場合には、少なくとも30日前までに予告しておけば解雇・雇止めが可能です。

ただし、実質的に期間の定めのない契約と変わらない場合など、使用者が雇止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないとき」は認められないので注意しましょう。

安全と衛生を確保する

働きがいを感じるベースにあるのは、働きやすい職場環境です。常時50人以上の労働者がいる事業所は、衛生管理者や産業医を選任して衛生委員会を設置する必要があり、また労働者が常時10人以上50人未満であれば衛生推進者を選任しなければいけません。

雇用者には衛生管理体制の整備や定期的な健康診断の実施が義務づけられており、スタッフが「働きやすさ」や「仕事へのやりがい」をもって働くために、スタッフの安全と健康に配慮することが重要なのです。

これからの介護の労務管理で特に注意すべきこと

人にまつわる課題は多様化かつ複雑化し、法改正は適宜行われています。ここでは、これからの介護における労務管理で特に注意すべき点について解説します。

同一労働同一賃金の実現

2021年4月から「同一労働同一賃金」が適用され、非正規職員を雇用している場合の賃金や福利厚生、教育などが、正規職員と非正規職員との間で待遇差があるときは合理的な理由が必要です。

正規職員と同様の責任を持つ業務についていても、非正規職員であることを理由に、まったく手当がつかないといったことをよく耳にします。本来そのような場合は合理的な理由が必要であり、理由がないのであれば業務に見合った手当や給与の見直しが必要になるのです。合理的か不合理かの最終判断は司法に委ねられるものであるとはいえ、トラブルになる前に待遇面について十分な検討が必要でしょう。

労働時間の適正な管理

2020年4月以降、介護施設には「時間外労働の上限規制」が適用されています。残業時間の上限は、原則月45時間、年360時間とされ、臨時的な特別の事情がない限りそれを超えてはいけません。上限を超えると罰則が適用されるので注意が必要です。

介護現場は変形労働時間制のため、スタッフ毎に働き方が異なります。労働時間を正確認管理するためには「予定」と「実績」を照らし合わせた管理が必要になります。勤務時間の「予定」と「実績」を管理し、配置基準を満たした勤怠管理なら介護事業所向けシフト管理システム「CWS for Care」がおすすめです。
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ハラスメント防止にかかる対策

最近は、ハラスメントに起因した事案が訴訟に発展するケースが増えています。職場におけるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントは、働く人の能力を奪うばかりではなく、尊厳や人格を傷つけるものです

職場の秩序を乱し、貴重な人材の損失にもつながるもので、事業の継続にも大きな悪影響を与えかねません。ハラスメント防止のための対策が急務となっています。

訪問介護の労働時間と賃金

2021年1月、厚生労働省から「訪問介護労働者の移動時間などの取扱いについて」が示されました。これまでの訪問介護では、事業所から利用宅へ移動する時間や、利用者宅から次の利用者宅へ移動する時間を労働時間として扱っていないことが問題となっていました。

訪問介護の事業者が遵守すべき法令が整理され、移動時間や待機時間を労働時間として扱うこととなりました。また、利用者からのキャンセルや時間変更でスタッフを休ませた場合、休業手当の支払いが必要になります。登録ヘルパーも多い訪問介護ですが、管理者やサービス提供責任者は適正に、サービス提供とキャンセル状況を把握管理して、賃金を支払うよう注意しておかなければなりません。

介護労務管理のポイントをおさえて人材不足解消を!

職場において労務管理が整備されていないと、働く職員は労働環境に不満を感じるばかりかモチベーションが低下してしまいます。職場での不平不満を周囲の職員に話し、離職してしまうような負のスパイラルに陥ると、「人材不足」をさらに加速化させてしまうことにもなります。

労務管理を軽視せず、しっかりと行い、周知することで、職員にとって働きやすい環境を整備できます。このような積み重ねが人材不足解消の近道となります。

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