コロナが5類になり、運営指導を受けられるご相談も多くいただいています。利用者を介護・支援するには技術や知識が必要ですが、介護サービスを提供するには法令の遵守も重要です。
今回は、「法令遵守」について、ご紹介いたしますので、皆さんの自己点検にもご活用いただけたら幸いです。
介護事業所の面倒なシフト・勤怠管理がらくらく
人員基準や加算要件は自動でチェック!CWS for Careはシフト表作成、勤怠管理、勤務形態一覧表作成をワンストップで提供する、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。
⇒ 「CWS for Care」公式サイトへアクセスして、今すぐ資料を無料ダウンロード
目次
集団指導は必ず出席してください
集団指導は、介護サービス事業者が遵守すべき制度内容の周知徹底や、介護サービスおよび保険給付の適正化を図るために、以下について注意喚起を行うなど、不正事案の発生を未然に防止することを目的に行われます。
- 運営指導(実地指導)や監査において指摘の多かった事項
- 行政処分を行った介護サービス事業およびの不正の概要やその要因
行政にとっても、集団指導は介護サービス事業者への重要な情報伝達の場であるため、正当な理由なく集団指導を欠席した事業所については、個別指導がたとえば優先的に運営指導(実地指導)の対象となるが行われることとなりますので、管理者は可能な限り出席するようにしてください。
出席できずあとで資料を読むことにしてしまうと、業務の優先順位が低くなってしまいがちですので、管理者はなるべく集団指導当日に確認するようにしましょう。また、集団指導の内容は全職員に周知してください。
運営指導(実地指導)の指導内容や改善報告書の内容を把握・共有してください
口頭指導、文書指導内容を全職員で共有してください
集団資料や手引きを見れば行政がどんなことを指導しているのかをある程度確認できますが、実際に施設が受けた指導内容は、口頭・文書指摘を確認する必要があります。
また、運営指導(実地指導)には管理者、生活相談員の職員で臨むことが多いと思いますが、その内の誰かが指導内容を知っていればよいのではなく、立ち会った職員全員で指導内容を共通の認識とし、それをサービスの職員全員に共有してください。共有の方法としては、回覧や掲示だけでは職員全員が理解できるとは限りませんので、解説・説明も付け加えると効果的です。
改善報告書の内容も全職員で共有してください
「改善報告書」とは、文書指摘に対して事業所の改善対応を明記し行政に提出する文書のことです。
改善に向けた事業所の対応を報告するものですので、その内容が今後の改善と異なる、とうてい無理な対応を記載してしまうといった不誠実な内容、またそのつもりがなくても、結果的に報告書に書いた内容を履行できなければ、行政に「不誠実」と捉えられ、監査に発展する可能性もあります。
また、改善報告書は事業部職員や管理者で作成することが多いと思いますが、報告書に書いた内容をサービスの全職員に共有できているでしょうか。改善報告書は“とりあえず書いて出す”ものではなく、“書いたことを全職員で継続的に履行し改善を図る”ものですので、指摘内容だけでなく、改善報告書の内容も併せて共有してください。
担当者交代の引継ぎ時も漏れなく共有してください
「前任者から引き継いでいない」との理由で、実地指導にて同じ内容を繰り返し指摘されるケースも発生しております。
行政は事業所としての対応を見ているので引継ぎされていることが当然であり、「前任者から聞いていない」などといった社内の事情は通用しません。引継ぎの際には、「業務引継ぎ書」を作成し、実地指導での口頭・文書指導内容を記載してください。また、引継ぎ書への記載だけでは後任者が理解できているか分かりませんので、併せて、書類を確認しながらの説明も行ってください。
度重なる指摘は監査・行政指導・行政処分につながる可能性もありますので、運営指導(実地指導)での指摘内容の共有は重要です。
申請定員を遵守してください
通所介護
最大定員と申請定員がありますが、申請定員は把握できていますか︖分からない場合は、運営規程を確認してください。利用者数が申請定員を超えた場合、介護報酬の3割が減算となる場合があります。
利用者数とは、要介護・要支援・事業対象者(自立者)の合計人数です。要支援・事業対象者は月単位の報酬であることを理由に、「当日の介護報酬の請求はないので利用者数にカウントしない」といった誤った解釈をされている事例があるようです。利用者数とは“当日の請求人数”ではなく、“同一時間帯に利用があった要介護・要支援・事業対象者(自立者)の利用者の合計人数”です。
自立認定の利用者の強い希望によりサービスをご利用いただくケースもあるようですが、この場合は自立の利用者も含めて申請定員を超えないようにしてください。人員配置も、自立の利用者を含めた数に対しての配置です。
また、要介護の認定が下りている利用者の利用の優先が原則ですので、申請定員を超える場合は自立の利用者の利用を断らなければなりません。
短期入所生活介護
虐待や介護者の疾病など緊急の場合を除き、日中の同一時間帯の利用者数および宿泊者数が申請定員を超えてはいけません。“緊急の場合”は担当ケアマネジャ―が判断することであり、緊急短期入所受入加算の算定をします。
たとえば最大定員45名・申請定員30名となっている場合、空いている居室があるからといって31名以上受け入れると運営基準違反となり、場合によっては介護報酬の3割が減算となります。
空いている居室がないことを理由に静養室の利用が状態化している場合も不適切です。
ベッド柵は身体拘束につながりやすいので、安易に使用しないでください
下記は、一例にすぎませんが、少しでも当てはまるケースや、疑問に思ったことがありましたら、管理者へ相談しましょう。
4点柵壁付け2点柵:
身体拘束に該当します。一旦中止し、4点柵または壁付け2点柵にした理由や原因を関係職員で出し合い、その解消に向けて柵に代わるケア方法の話し合いを行ってください。
ベッドサイドの2点柵:
柵の設置によって利用者が自由に動くことができなければ身体拘束に当たります。柵の位置を変えるか、普段は設置せず臥床時など必要時のみ設置するなどの対応にしてください。
使わない柵の保管:
身体拘束が安易に実施できる環境を放置したままでは、自分たちに意図はなくとも、第三者から見れば“身体拘束を行っている”と疑われることがありますので、倉庫に保管しましょう。
法令違反に繋がりやすい方法に頼らないケアを
法令遵守するために知っておくこと、忘れがちであるが重要なことの一部をご紹介しました。
転倒・転落リスクがある利用者に対しては、必ずベッド柵以外の方法を検討してください。単に柵の使用で解決する方法では身体拘束につながりやすく、その状態が常態化(=ずっと同じ状態であること)・慣例化(=他の利用者にも同様にしてしまうこと)してしまう傾向にあります。
ベッド柵以外の方法では転倒・転落を防ぐことができない場合に限り、最終手段として柵の使用を検討するようにしてください。介護のプロとして、なるべく身体拘束に頼らないケア方法を職員全員で話し合ってください。