ほかの介護士も一人で夜勤を行っているの?介護施設の夜勤の実態とは?

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夜勤

介護現場は慢性的な人手不足という問題を抱えています。そのため「夜勤の際は一人で業務を行うことが多い」という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。そこで、実際に夜勤を一人で行うことは日常化しているのか、また夜勤のメリットやデメリットについて、現役の介護職の方はもちろん、これから介護職を目指す人にもわかりやすくご紹介します。

夜勤の仕事内容

夜勤の場合、出勤してはじめに行うことは、日勤の人からの仕事の引き継ぎです。実際の引き継ぎ方法は施設によって異なりますが、日中に何か変化があった利用者さんがいれば注意点などの報告を受けることがあります。日勤からの引き継ぎの後は夕食の時間に入るため、そのまま夕食の介助を行います。夕食が終わったら就寝時間を見ながら歯みがきや着替えの介助と進んでいくのが一般的な流れです。

就寝時間が過ぎてからは、1~2時間おきに全部屋を巡回して安否確認を行います。さらに、決まった時間に排泄介助を行いますが、ナースコールが鳴ればすぐに対応できるよう準備もしておかなければなりません。安否確認と排泄介助の合間には介護記録の作成や掃除なども行います。特に問題が起きなければ休憩をとることも可能で、穏やかな時間帯と言えるでしょう。

夜勤での難関の1つは起床介助です。5時を過ぎてくると起床する利用者さんが増えてくるため、ナースコールが一気に多くなります。トイレの誘導や排泄介助、オムツ交換にバイタル回収と慌ただしい時間帯です。そして、休むことなく朝食の準備に入ります。朝食は食事の介助はもちろんですが、ほかにも服薬介助なども必要です。この時間帯には、早番の人が出勤してくるため、引き継ぎ業務を行えば退勤時間となります。また、利用者さんの介護のほかに、朝礼なども業務に含まれるのが一般的です。

夜勤のワンオペについて

介護施設の夜勤では、ワンオペを採用しているケースは少なくありません。ワンオペとはワンオペレーションの略で、施設内の業務を一人で行うことです。ここでは、ワンオペの実態について解説していきます。

一人は適切な人数なのか

介護施設の夜勤業務を一人で行うことは、果たして適切と言えるのでしょうか。
厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準として、「介護老人福祉施設(特養)」と「短期入所生活介護(ショートステイ)」のみ、利用者の人数に対して夜勤の人員配置基準が設けられています。その他の施設については「要介護者が一人でもいる場合、介護職員を一人以上置くことが必要」とされているだけで、この内容から言えば「最低一人の介護職員がいれば夜勤業務を行うことに問題はない」ととらえることもできます。また、介護保険法では「夜間の介護や緊急時に対応可能な数の職員を置くこと」とされていますが、人数までは明確にしていません。

たしかに、一人でも介護職員を置けば介護保険法には抵触しないと考えられます。しかし、要介護者の人数に関係なく、緊急事態が起こったときに一人で対応するのは難しいと言えます。安全を配慮して、一人ではなく複数人で業務にあたることが適切と考えたほうがいいでしょう。最低でも2人の介護職員を置けば、何か起こったときでも一人は緊急事態に対処し、残る一人は他の利用者さんを見るという役割分担ができます。

ワンオペの実態

日本医療労働組合連合会「2018年介護施設夜勤実態調査結果」によると、介護施設の約85.5%が2交代制の勤務体系をとっています。そのなかでも全体の約5割を超える施設で夜勤配置は一人体制と回答しています。
介護施設の夜勤配置は施設の業態ごとに要件が定められていますが、利用者さんの状態や施設の構造などは要件として考慮されていないため、複数フロアを一人で対応している状況なども含めると、実質的なワンオペが常態化しているのが現状です。特にグループホームや小規模・看護小規模多能型居宅介護のほとんどが、ワンオペとなっています。

また、深刻な人手不足が続く中で、多くの施設では非正規の職員も夜勤に入ることでカバーしています。介護施設全体の半数以上で非正規職員が夜勤業務を担っているという現状を抱えています。

さらに、夜勤を行う施設では労働安全衛生規則第616条により「仮眠場所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない」と定められていますが、特養や短期入所でも4割の施設、施設規模が小さい看多機やグループホームでは5割を超える施設で仮眠室が設置されていないという状況です。
ワンオペでの夜勤に加え、勤務中に仮眠や休憩をとることもままならないということです。

夜勤で大変・不安なところは?

長時間勤務での体調管理

まず夜勤の大変さとして、勤務時間が長時間に及びやすい点が挙げられます。そのため、夜勤が続くと体調を崩してしまう人も多くいます。

急変への対応

夜間に一人で業務を行う中で、利用者さんの容態が急変した際の対応に不安を感じる人も少なくありません。利用者さんやご家族から感謝される瞬間などにやりがいを感じる一方、慢性的な人手不足で十分な対応ができないことへのプレッシャーは大きくなります。
実際に介護の夜勤現場は、医療施設と異なり緊急時に対応できる医療の有資格者が不在のケースが多くあります。緊急時の対応は全て現場の介護士にかかっているというのが現状です。

緊急事態が起きたらどうするべきか

介護施設での夜勤は日勤に比べ職員の数が少なく、場合よっては一人で対応(ワンオペ)することもあり、緊急時に備えた心構えが必要と言えます。
最も重要なのは、普段から対応方法を意識しておくことでいざというときに冷静に対処することです。緊急時にはまず、救急搬送が必要かどうかの判断を行います。そのうえで必要に応じて蘇生措置を適切に行い、落ち着いて緊急事態を乗り切ることが求められます。具体的にどのような判断や行動をとるべきか知っておきましょう。

緊急時には電話連絡によって看護師や医師に指示をあおげる体制が整っている施設も少なくありません。またすぐに駆けつけられるよう、オンコール体制をとっている施設も多くあります。
夜勤自体は一人でも、後ろには医師や看護師によるサポート体制があることを意識することが大切です。さらに介護ロボットやIoT機器による利用者さんの見守りが可能な施設も多くあります。自分の目と足で確認するべきところと、設備に任せるところの割り振りをしっかり行うことが大切です。

夜勤のメリット・デメリット

介護の現場で夜勤として働くには、ワンオペが多いうえに緊急事態など予想が難しい問題はつきものです。しかし、きつい仕事である反面、よい面もあります。ここでは、夜勤で働くことのメリットとデメリットについて説明していきます。

夜勤のメリット

メリットとして挙げられるひとつに待遇面があります。夜勤手当の分、給与アップが期待できます。ワンオペで大変だと感じるのはナースコールです。ただし、ナースコールが鳴らないときは日勤より仕事量が少ないことも多く、余裕を持って働けます。一緒になったスタッフと仲良くなれる、利用者さんの違う一面が見れ理解が深まるなどのメリットもあります。加えて夜勤の場合は次の朝まで仕事がない場合が大半です。明けからの1日を有意義に過ごすことも可能です。

夜勤のデメリット

睡眠時間が日中に偏るため、体内時計が狂いやすくなります。また、平日の日中に勤務している友人や家族と時間を合わせることがなかなか難しくなります。特に既婚者の場合は、帰宅が朝になることで家事のタイミングも合わせづらくなります。急用などが生じた場合に代わりの職員がなかなか見つからないという点も、予定調整の際に大変となる部分です。

まとめ

介護士不足などの理由から夜勤のワンオペを採用している施設が多いのが現状です。
そのため、まだ介護職を始めて間もない時期でも一人での夜勤対応が求められ、不安を抱える方もいらっしゃるでしょう。

一人で夜勤をこなすことは簡単ではありませんが、事前に仕事の内容を理解し、緊急時の対応などを頭に入れておくことで、適切な対処ができるようになります。どうしても一人夜勤が不安といった方は、2名以上での夜勤体制が整った施設に転職するのも選択肢のひとつです。

夜勤の場合は手当で収入アップが期待できます。また、責任の大きな仕事にチャレンジしながら経験を積めるチャンスでもあります。少しずつ業務に慣れていくことで、自信を持って夜勤に入れるようになり、スキルアップにもつながるでしょう。


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