従業員1万人の就業管理を効率化! 人事・シフト・労務のDX化による生産性向上とコンプライアンス強化の両立を実現
株式会社SOYOKAZE
サービス形態:デイサービス/ショートステイ/グループホーム/有料老人ホーム他
拠点数:全国362拠点 709事業所(2024年7月末現在)
従業員数:11,598名(2024年3月末現在)
公式サイト:https://corp.sykz.co.jp/
大手介護事業者の株式会社SOYOKAZEでは、インフォコムのシフト管理サービス「CWS for Care」を活用した、人事・シフト・労務管理制度のDX化に取り組んでいます。取り組みを始めたきっかけ、実施に際しての課題、企業として目指す姿などについて、プロジェクトを統括する斉藤裕之常務執行役員にお話を伺いました。
※聞き手 インフォコム ヘルスケアイノベーション事業本部 新規事業推進部部長 三山敦生
導入前の課題
・手計算・手入力のためエラーが起きる
・紙とデータで重複業務が発生する
・月末に業務が集中する
CWS for Careを選んだ理由
・在宅系サービス(DS、SSなど)、かつ複合的なサービス運営の複雑なシフト作成に対応
・人員基準・加算などコンプライアンスのすべてのチェック
・人員配置の見える化・適正化による経営改善
・法改正への対応/介護保険サービスに関する豊富な知見
手計算・手入力によるエラーや紙とデータの重複
複雑な勤務体系で働く1万人の人事・シフト・勤怠管理にかかる業務量は膨大に
まず、SOYOKAZE様と斉藤様ご自身について、教えていただけますでしょうか。
斉藤氏:当社は2024年7月末時点で、北海道から九州まで全国362拠点で709の事業所を展開しており、約1万人の従業員がいます。特にデイサービスが234、ショートステイが182と多いのが特徴です。このほか、グループホーム、有料老人ホーム、居宅介護支援、訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護など多様なサービスを手掛けています。
私は電気メーカーの介護事業会社を経て2021年に入社し、経営企画室でIoTやシステム関連の課題整理などに取り組んできました。
今回、人事・シフト・労務のDX化に取り組んだのは、どのような理由からでしょうか。
斉藤氏:これまで、人事・シフト・勤怠の業務はExcelなどのアナログで行ってきました。しかし、1万人もの従業員がいると、その業務量は膨大で、大変な手間がかかっていました。当社では複数の介護サービス事業所を複合した拠点も多く運営しており、1人の従業員が1日の中で複数の事業所で働くなど、勤務体系が複雑なこともそれに拍車をかけていました。様々なデータを手計算・手入力するのは単に時間がかかるだけでなく、誤記入などのエラーが発生するリスクも高くなります。また、月末に業務が集中してしまうという問題もありました。
こうした状況を改善しようと、4~5年前に一度DX化に取り組んだことがあるのですが、当社の課題に十分に対応できるシステムがなく上手くいきませんでした。しかし「近年のコンプライアンスを重視する社会環境や人材不足への対応、そして適正な人員配置による経営の安定を図ることは、企業にとって優先的に取り組む課題である」との認識から、2年前に私が統括する形でプロジェクトが再スタートしました。
デイサービスやショートステイを含む、複合的なサービス運営の複雑なシフト作成にも対応できる点が決め手に
シフト管理システムで「CWS for Care」を選んだ理由は何でしょうか。
斉藤氏:10社ほどのシステム会社やベンダーと面談しましたが、いずれも機能面などで満足いくものではありませんでした。当社が数多く運営するデイサービス、ショートステイは利用者数がその日により変動しますので、シフトも自然と複雑になります。「CWS for Care」はそれに対応できたこと、そして、同社の担当者の法改正や介護保険サービスなどに関する知見が豊富だったことなどが決め手になりました。
ただし、それでも「CWS for Care」だけでは、当社が抱える課題を全て解決することはできませんでした。そこでインフォコムさんに相談したところ、他社のシステムと連携したものを開発してくれることになりました。
今は人事データベースシステム、シフト管理システム、勤怠管理システムの3つが連携しておりワンストップで管理できます。最終的には給与管理システムを加えた4つを一体化していく考えです。
現在は、一部の事業所にパイロット版として導入していますが、2024年中に全事業所での導入を目指しています。また、やはり全国で介護事業所を展開するツクイがグループ会社にありますので、そちらにも紹介していきたいと考えています。
目指すのは「あるべき管理体制」
今回のDX化で期待できる効果は何でしょうか。
斉藤氏:事務作業の時間は確実に削減できます。しかし、それだけでは「経営改善」にはつながりません。DX化で生まれた時間を介護サービスの品質向上や従業員の自己研鑽・自己啓発に充てるなどの取り組みが進み、経営の強化が図れることを期待しています。
また、今回のDX化により、必要以上に人が配置されていないか、適切に配置されているかなどが「見える化」されます。こうした「あるべき管理体制」が構築できることが非常に大きいと考えています。
DX推進にはプロジェクトの共通理解と協力・連携体制の構築が不可欠
DX化の推進に際して、何か課題になったことはありますか。
斉藤氏:当社に限らず、介護業界全体に言えることかもしれませんが「事業者自身のエンジニアリング機能が弱い」「仕組みや運用を変更することに対して、従業員の抵抗感がある」ことではないでしょうか。例えば、現状の業務に対する意見、課題などについては現場からは沢山上がってきますが「それをどう集約し、解決につなげていくか」やシステム要件を定義することについては、考え方やノウハウが乏しいように感じます。特に本システムのように大規模で横断的な開発になると尚更です。そのため、開発ベンダーとの連携、サポートが大変重要です。
そうした課題をどのようにして解決していきましたか。
斉藤氏:「DX化を進める必要がある」という意識を、部門を超えて全社的に醸成させていくことです。当社では、各部門の担当者とインフォコムさんによるミーティングを約2年間、毎週行い、今回のプロジェクトについて理解してもらうとともに、協力・連携する体制の構築を行ってきました。
実際に、ミーティングがスタートしてみると、お互いに他の部署のことについては知識が少なく、業務上でどのような課題を抱えているのかなどといった点についてもほとんど把握していないという実態が明らかになりました。組織に横串を指すようなチームづくりは相互理解を深め、組織の一体化が進むという点では、非常に効果的だと思います。今年7月には、年内の全社導入に向けた数十人単位のチームも立ち上げています。
しかし、それでも実際にシステム・IoTを導入するとなると、慣れない業務でストレスを感じる人が出て来ることが考えられます。それを最小限に抑えるためのサポート体制の整備も必要と考えています。
DX化はあくまでも手段。システムやIoT導入の「目的」をしっかり定める事が重要
ありがとうございました。では、最後に他の介護事業者様などに向けて、何かメッセージをお願いいたします。
斉藤氏:まず「DX化とは、必ずしもシステムやIoTを導入することではない」という点です。目的と手段で見た場合にシステムやIoTはあくまでも「手段」の一つに過ぎません。DX化が目標となってしまわないよう、それらを導入することで、組織として何を目指すのかという「目的」をしっかりと定めることが重要ではないでしょうか。
また、システムやIoTを開発したり、活用したりするのは「人」です。利用する介護事業者側、提供するメーカーやベンダー側の双方に、現状の課題を正しく認識し、解決に向けて強い意志を持って取り組む人がいないと、DX化は成功しません。「人の縁などが非常に重要になる」と、私自身実感しました。パートナー選びは妥協せずに行うべきです。