施設や在宅で生活している高齢者で、経管栄養や胃ろうなどの口以外から栄養を摂取しなくてはならないケースは、脳卒中による球マヒや仮性球マヒなど「嚥下中枢に障がいがある場合」に限られるといわれています。
ただし、経管栄養や胃ろうだからといって必ずしも口から食べられないわけではなく、お客様によっては工夫次第で口から食べられる可能性があります。
お客様やご家族も望まれるケースも多いので、ケアマネジャーを中心に医師や歯科医師、看護師、栄養士、言語聴覚士などと連携しながら、経口摂取に移行が少しずつ出来るようにする工夫もお客様の尊厳の保持においては重要です。
今回は「介護サービスにおける高齢者の食事:食事環境を作る」についてご紹介しますので、皆さまの食事環境の工夫にご活用頂けたら幸いです。
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目次
食事は口から食べることが基本
口から食べることには様々な効果があります。
(1)口腔内の衛生状態がよくなる (2)運動・感覚を司る部分が活発になる (3)内臓が活発に動き出す |
口から食べるための条件
口から食べるためには主に3つの条件があります。
(1)食べ物が適当な大きさであること (2)唾液が充分に分泌されていること (3)呼吸が一瞬止まること |
介護スタッフが食事介助を行う際には、これらの条件を理解した上でお客様の誤嚥防止に努める必要があります。
安全で楽しい食事環境を作る
食べる行為のメカニズム
食べる時の姿勢
●寝たまま食事をする
●ギャッジアップしたベッドで、もたれたまま食事をする
●座っていても左右に傾いている姿勢で食事をする
通常の姿勢
寝たまま食事をすると・・・
健康な人でも顔が上向き加減の姿勢で食事をすることは誤嚥しやすくなり大変危険です。
正しい姿勢
自力で食べる方も介助で食べる方も、快適に食べるための姿勢の基本は同じです。ベッドから離れ、イスに座って前かがみで食事をしましょう。
あごを引き前屈みになっていただくと、食べ物が勝手に喉に送り込まれることなく自分の意志で飲み込むことが出来ます。
半身マヒなどで飲み込みが難しい人こそ、正しい食事姿勢をとることが大切です。
「すぐにむせてしまうから刻み食にしよう」と考える前に、正しい姿勢で召し上がっているか見直してみましょう。
食事介助で使用する自助具
飲み込みがしづらい障がいがある方や、身体状況等によって食事の形態や介助方法を工夫することはもちろんですが、お客さま一人ひとりに合った「食器・自助具の選択」をすることも重要です。
食べこぼしたり時間がかかったりしても、自助具を使うことで自分で口に運ぶことができ、ご家族と一緒に食事ができることは大きな楽しみとなります。
自助具
食事用エプロン | 食べこぼしを受けるポケットがついていたり、 水をはじくなど防水性にも優れています。 |
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吸い飲み | 取っ手がついていて持ちやすいので、 カップなどで飲むことが困難な場合に使用します。 |
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自立食器 | 滑り止め防止加工などがされています。 すくいやすいようにコーナーに角度がついています。 |
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スポンジ付きスプーン・フォーク | 持ち手が太く、握力の弱い方向きです。 首の部分が自由自在に曲がります。 お湯で温められることで、 柄の形状自由に変形させられるものもあります。 |
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中割れトングタイプ スプーン | お箸を使うのが困難な方向きです。 すくう、刺す、つまむ等が簡単にできます。 |
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箸(ピンセットタイプ) | 握力が弱く、自力で箸が持ちにくい方が楽に使うことができます。 | |
差込バンド | 握力の弱い方に。スプーンやフォークをバンドで固定します。 鉛筆や歯ブラシにも使えます。 |
自助具を選ぶ時のポイント
自助具を使用するときは、お客様のどの部分を補うことが必要かを考えて選びましょう。
・食器の固定方法 ・食器からのすくいやすさ ・重さや大きさはあっているか ・自助具を操作する(箸でつまむなど)ことが可能か ・自助具が清潔に保てるか |
まとめ
お客様の口腔内にトラブルがある場合は、まず治すことが重要です。「入れ歯が合わない」「虫歯がある」等の口腔内の問題があると、美味しくお食事を取っていただくことができません。
また、こうしたトラブルによりお粥など食べやすいものばかりを食べ、低栄養状態に陥っている可能性もありますので、歯科医や歯科衛生士にも相談しながら、安全で楽しい食事環境を心がけて下さい。