
一定の基準を満たしたすべての労働者に与えられる年次有給休暇。勤続年数や雇用形態ごとに付与日数が異なったり、有給休暇の有効期限があったりするので、その計算に苦労している労務管理のご担当者も多いと思います。
この記事では、有給休暇の付与日数を計算する方法を、例を交えながらわかりやすくご紹介していきます。有給休暇を繰り越しする際の計算方法を知りたい方もぜひ参考にしてみてください。
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目次
年次有給休暇の付与日数

年次有給休暇は以下の条件を満たす労働者に必ず付与されます。
ただし通常の労働者と、短時間労働者では付与日数が異なります。正しく計算するには、有休付与日数の基本ルールについて理解することが大事です。ここではその違いについて詳しく解説していきます。
【早見表1】正社員や契約社員など一般労働者の場合
正社員や契約社員など、フルタイムで働く通常の労働者には、付与日数に関して以下のルールがあります。
勤続勤務年数(年) | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
「継続勤務年数(年)」の「0.5」とは半年を指します。つまり6ヶ月の勤務で、10日の有休付与が義務付けられているということです。たとえば3年6ヶ月働いている従業員の場合、その年の有休は14日以上与えなければなりません。年数を重ねるごとに付与日数は増え続け、6年6ヶ月以上は20日が最低基準となります。
ただしあくまで労働基準法で定められた最低基準の日数なので、福利厚生の一部として上記より多く付与する会社もあります。休暇に関する事項は必ず就業規則で規定されているので、確認しておきましょう。
また、勤続年数についての考え方は記事の中盤でまとめているので、ぜひこちらもチェックしてください。
【早見表2】アルバイトやパートなど短時間労働者の場合
短時間労働者は、以下の付与日数が定められています。下記の方法を比例付与といいます。
週所定労働時間 | 1年間の所定労働時間 | 継続勤務年数(年) | |||||||
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 | |||
付与日数(日) | 4日 | 169~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 | |
2日 | 73~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 | |
1日 | 48~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
引用:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
上記の表を見ると、勤続年数が2年半で週4日勤務する労働者の場合、有休の付与日数は9日になります。
所定労働日数を週で定めていない従業員の場合は、年間の所定労働日数で計算してください。たとえば月8回勤務する労働者の場合、1年間の労働日数は96日になります。もし勤続年数が1年半の労働者なら、上記の図にあてはめると4日の有休を与える必要があります。
有給休暇付与日数を計算する際の注意点

有休の付与日数を数える際は「継続勤務年数」と「使用期限」について正しく理解しておく必要があります。計算するにあたって押さえておくべき点についてそれぞれ解説していきます。
継続勤務年数について
継続勤務年数とは、在籍期間のことです。定年退職者を引き続き嘱託社員として再雇用した場合は、雇用期間が継続していると考え、継続勤務として扱います。もし病気などによる欠勤で出勤率が8割に満たなくても、雇用期間が継続しているので勤続年数として数えます。ただし、翌年の有休の付与日数は0日になります。
この出勤率の計算式は「全労働日数÷出勤日数」です。全労働日数からは、欠勤した日のほか、休日労働した日も除くようにしてください。ただし有休のほか労災による休業や産休、育休、介護休業、遅刻、早退は出勤扱いとなります。
※全労働日数:就業規則等で労働日と定めた日から休日を除いた日数
年次有給休暇の使用期限について
年次有給休暇の使用期限は2年で、翌年に繰り越しが可能です。そのため未消化分の計算を忘れずに行う必要があります。
たとえば3年6ヶ月働いている従業員に、2023年4月1日付けで有休を14日与えた場合で考えてみます。2024年3月31日までに6日分の有休を取得したら、翌年に繰り越される分は8日です。ただし2025年3月31日までに、8日分を使い切ることができなかった場合、この分は消滅してしまいます。
年次有給休暇の付与日数の計算例
年次有給休暇の付与日数について、「入社5年目の正社員」「勤続年数3年目のパート」「有休の使用期限が切れてしまった労働者」という3つのケースを参考にして実際に計算してみます。
入社5年目の正社員の場合
入社してから5年が経過した、フルタイムで働いている従業員の場合、付与日数は継続勤務年数をもとに調べます。
継続勤務年数(年) | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 |
付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 |
現在の付与日数を割り出すには、取得日数分を引いて計算する必要があります。以下の表を参考にしてください。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 |
繰り越し分 | ‐ | 4 | 5 | 5 | 6 |
有休取得日数 | 6 | 10 | 12 | 13 | – |
繰り越し分は「付与日数‐取得日数」で計算します。繰り越された分と、新しく付与された日数を合わせると、5年目の有休利用可能日数は22日となります。
勤続年数3年目のパートの場合
週所定労働日数が4日で、勤続年数3年目のパート社員の場合、付与日数は以下になります。
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | |||
0.5 | 1.5 | 2.5 | ||
4日 | 169~216日 | 7 | 8 | 9 |
引用:年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています|厚生労働省
この場合も取得日数分を引いて、現在の付与日数を割り出しましょう。
1年目 | 2年目 | 3年目 | |
---|---|---|---|
付与日数 | 7 | 8 | 9 |
繰り越し分 | ‐ | 1 | 4 |
有休取得日数 | 6 | 5 | – |
3年目に有休として利用可能な日数の合計は、「9日(新しく付与された日数)+4日(繰り越し分)」で13日となります。
有休の使用期限が切れてしまった場合
最後に4年目の正社員で、付与された有休の使用期限が切れてしまったケースを紹介します。まず、付与日数は以下のとおりです。
継続勤務年数(年) | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 |
付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 |
有休の使用期限は2年間のため、期限を過ぎた分の日数は繰り越しできません。一例を表にしました。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | |
---|---|---|---|---|
付与日数 | 10 | 11 | 12 | 14 |
繰り越し分 | ‐ | 5 | 11 | 12 |
有休取得日数 | 5 | 5 | 6 | ‐ |
使用期限切れの日数 | 0 | 0 | 5 |
3年目の欄を見ると、2年目に付与された付与日数をまるまる繰り越していることがわかります。そのため3年目に取得した6日を引いた5日分は使用期限切れとなり、翌年に繰り越しできません。
よって4年目には3年目に付与された12日分だけを繰り越し、合計の付与日数は26日となります。
年次有給休暇の管理を楽にするコツ

労働者ごとに有休取得数が異なったり、基準日(有休を付与した日)などの条件が異なったりするので、年次有給休暇の管理は煩雑になりがちです。効率的に管理するコツとして、「基準日の統一」と「エクセルや勤怠管理システムを使った自動計算」の2つを紹介します。
基準日を統一する
労働者ごとの基準日をひとつにまとめることで、管理がしやすくなります。たとえば年始の1月1日や、年度初めの4月1日に統一してみましょう。全労働者の基準日をそろえるだけでなく、いくつかのグループに分けて管理する方法もあります。中途採用が多い事業所では、入社日が近い労働者の基準日を月初でまとめる方法もおすすめです。
ただし基準日を前倒しにすることで取得させなければいけない有休日数が変わることに注意が必要です。
2022年10月1日に初年度の有休を与え、翌年の有休付与日を4月1日に前倒しした場合を例にとって考えてみましょう。
2024年3月31日までに取得させる日数は「全体の月数÷12×5日」の計算式で割り出しましょう。この場合「18ヶ月(2022年10月1日〜2024年3月31日の月数)÷12×5日」で「7.5日」となります。
エクセルや勤怠管理システムで自動計算する
従業員ごとの取得日数をひとつずつ計算するのは時間がかかりますし、人的ミスが生じるリスクがあります。作業を効率化するには、エクセルや勤怠管理システムを入れる方法がおすすめです。自動計算してくれるので、手間が省けるうえ、計算ミスを防ぐことができます。
年次有給休暇に関する基本ルール

最後に年次有給休暇について、企業側が押さえておくべき基本ルールについてまとめました。
年5日は有休を取得させる義務がある
企業側は年次有給休暇を10日与えた従業員ごとに、年5日の有休を取得させる義務があります。労働者本人が有休の取得を希望しない場合でも、使用者の責任となるので注意しましょう。違反した場合、30万円以下の罰金、または6ヶ月以下の懲役が科される可能性があります。
使いきれなかった有休の買取を行うことも、例外を除き基本的にNGです。また、有休を取得した労働者の給与や昇進に関して不利な扱いをすることは禁止されています。
有給休暇管理簿を作成する義務がある
企業には労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する義務があります。労働者名簿や賃金台帳などと合わせて管理することが可能で、要件を満たしていればシステムでの管理も問題ありません。
ただし、「基準日」「日数」「時季」の項目は必ず盛り込む必要があります。詳しくは以下の記事も参考にしてください。
有給休暇の正しい計算方法を知り、効率よく管理しよう
有給休暇の付与日数や取得日数は従業員ごとに異なります。間違いなく管理するためには、計算方法やルールをしっかり覚えておくことが大事です。
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