社会福祉士は社会福祉に関する相談援助の専門家であることを証明する国家資格で、身体的・精神的・経済的な理由などから日常生活に支障をきたしている人からの相談を受け支援するソーシャルワーカーとして仕事をする人が多いです。
対象となる方は子供から高齢者まで幅広く、活躍する施設も病院や保健所、高齢者介護施設など多岐にわたります。
高齢化や新型コロナウィルスの影響等により、福祉的な課題が増えるとともに、社会福祉士のニーズはますます高まっています。本記事では、社会福祉士を目指す方が気になる、仕事内容や給料の実情、将来性について解説します。
目次
社会福祉士の給料は高いのか?
社会福祉の様々な制度の中には、あまり知られていないものもあります。そうなると起こり得るのは、本来利用すべき人が制度の存在を知らないために利用できないといった事態です。
社会福祉士の役割は、なんらかの理由によって日常生活に支障がある人の相談に応じ、福祉に関する助言や指導を通じて福祉サービスや保険医療サービスとの橋渡しをすることです。世の常として「希少なものに高い価値がある」とすれば、昨今の福祉ニーズの高まりや、数ある福祉制度に精通する社会福祉に関する高度な専門性は、間違いなく「希少なもの」といえるでしょう。
とすれば、社会福祉士が高い給料をもらっていても不思議ではありません。しかし、現実には働く職場や業務内容、頻度によって給料に違いがあります。
高まる社会福祉士の需要
社会福祉士にはどれくらいの需要があるのでしょうか。ここでは社会福祉士の「需要」について解説します。
支援を必要としている人は増加している
これから社会福祉士を目指す人にとって気になるのは、「今」だけでなく「将来」にわたって需要があるのかどうかという点でしょう。今、日本にで生活する方の中には身体的・精神的・経済的な問題を抱えている方がたくさんいます。
その問題解決を目指して福祉サービスが充実するほど制度は多様化してしまい、自分がどの制度をどのように利用できるのかがわかりづらくなってしまいます。現在、福祉の支援を必要としている人は増え続けていますが、そうなると相談を受けるスタッフの増員が必要です。
また、多様化する福祉に対応できるよう、スタッフには高い専門性や知識、スキルが求められるようにもなります。社会福祉士は、難易度の高い試験に合格していることからも、幅広い知識と高いスキルを持っていると国家が認める資格です。
ただし、難易度が高いがゆえに資格保有者は少なく、福祉の需要の高まりに対して充分ではないことも事実です。今後も需要の高まる福祉に対応できる貴重な専門家である限り、社会福祉士は不要になることのない安定した資格といってよいでしょう。
社会福祉専門の国家資格
社会福祉士は、1987年に制定された「社会福祉士及び介護福祉士法」に定められる社会福祉業務における国家資格です。受験資格として福祉系大学や養成施設の修了が必要で、それだけでもハードルは高いといえます。
資格試験では社会福祉士の業務の幅広さや専門性が求められるため、かなりの難関です。2020年に実施された第32回試験の合格者は、受験者数39,629人に対して30%弱の11,612人。精神保健福祉士や介護福祉士と比べると、合格率が半分以下といった高難易度となっています。社会福祉士は、医師や看護師のような「業務独占資格」ではなく、「名称独占資格」です。
- 業務独占資格:資格を持っている人だけが独占的にその業務に携われる
- 名称独占資格:資格を持っている人だけが名称を名乗れる(まぎらわしい名称を使うのも禁止)
利用者さんに対して、高度なスキルと知識を持つ専門家であることを証明するための「独占」だといえるでしょう。
活躍できる職場の種類が豊富
社会のあらゆる場面で福祉は必要とされるため、社会福祉士が資格を活かせる職場は種類も豊富です。一例として、社会福祉士の主な勤務先を挙げてみましょう。
- 福祉事務所:市区町村の役所などで社会福祉行政の中心を担う
- 児童相談所:児童福祉の専門機関で、児童虐待、子どもの発達、不登校などの相談に応じる
- 学校:子どもたちの相談を受け、必要に応じて児童相談所や教育委員会などへ連絡や調整を行う
- 高齢者福祉関連施設:利用者さんやそのご家族の相談に応じたり、ほかの関係機関との連絡や調整を行う
- 障がい者福祉関連施設:障がいを抱える人が社会の一員として生活できるよう自立訓練や就労支援を行う
- 社会福祉協議会:地域福祉サービスの充実と推進、福祉コミュニティ作りを担う
- 医療機関:患者さんやご家族の悩みや課題の相談に応じ、適切な支援を行う
- 司法関係機関:少年院、更生保護施設、地域生活定着支援センターの出所者と社会福祉サービスを繋げる
- 独立型社会福祉士事務所:利用者さんとの契約にしたがって権利擁護や介護保険に関する業務を行う
社会福祉士の給料の実情
社会福祉士の仕事は、職場や職種によってそれぞれ役割が異なり、給料も違ってきます。ここでは、社会福祉士の給料の実情について解説します。
社会福祉士の給料相場
「平成27年度の社会福祉士就労状況調査」によると、社会福祉士の平均年収は男性で439万円、女性では339万円、正規職員に絞ると男性で454万円、女性では380万円となっています。全体に占める正規職員の割合は82.8%と非常に高く、充分に安定した収入を得る仕事だといえます。
また、年齢別に見るとでは、20代295万円、30代346万円、40代408万円、50代475万円、と年齢ごとに上がっています。福祉事務所など公的機関に勤める場合は「公務員」になるので、住居手当などの各種手当や福利厚生が充実しています。
特に福利厚生については、例えるならば「金額にならない給料」です。仕事をするには充分な経済的環境だといえます。
働く施設によって給料水準は異なる
社会福祉士の給料は、働く施設が民間であっても公務員と同等の給料水準であることがほとんどです。公務員の場合、年収は400万円以上、管理職になれば600万円を超える場合もありますが、同じ公務員でも自治体の規模によって違いがあります。
令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、高齢者福祉関連施設で働く社会福祉士の平均給与月額は次のとおりです。
- 介護老人福祉施設:383,970円
- 介護老人保健施設:379,670円
- 通所介護事業所:328,870円
- 通所リハビリテーション事業所:341,960円
- 特定施設入居者生活介護事業所:345,840円
- 小規模多機能型居宅介護事業所:349,000円
- 認知症対応型共同生活介護事業所:335,120円
最大5.5万円の差は、違いとしてはかなり大きいものだといえるでしょう。ただし、それぞれ業務の内容が違うため、単純に良し悪しを測ることはできません。
ほかの福祉系資格に比べて給料は高め
社会福祉士は、ほかの福祉系資格に比べて国家試験の難易度が高く、それが理由で資格保有者が少ないという特徴があります。業務内容の範囲が広く、幅広い職場で活躍できることからも、平均給料は比較的高めです。
「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、社会福祉士の平均給与額は353,020円となっており、介護福祉士の平均給与額329,250円と比較して高い水準となっています。
社会福祉士として給料をアップさせる方法
社会福祉士の資格を取ることで、基本給や手当のアップが期待できます。きちんと勤めれば昇給のチャンスもありますが、給料を増やすには次のような方法もあります。
資格手当と役職手当
福祉の現場で相談に応じることは、資格がなくてもできることですが、社会福祉士の資格を得ることでより幅広い業務を担当できるようになり、勤務先によっては1~3万円の資格手当が支給される場合もあります。
また、資格取得が昇進の条件とされている場合には、さらに役職手当が支給される可能性もあります。役職によって金額は違うものの、大幅な収入アップが期待できます。
ただし、昇進して管理職に就くと、マネジメントや経営が主な業務になって現場から離れがちになります。求められる能力が変わる場合があることを頭に留めておきましょう。
成年後見人を引き受けることで収入を追加
社会福祉士の資格があれば、「成年後見人」を引き受けることができます。成年後見人とは、知的障害や認知症などによって判断力が充分ではない人が、不利益を被らないようにサポートする人をいいます。
高齢者の増加などの影響から近年増加傾向にあり、その貴重な引き受け手として大いに期待されています。
独立すれば高額収入も可能
より高収入を得たいならば、社会福祉士として独立するのもいいでしょう。介護施設や福祉事務所を開業する、または成年後見人や専門学校の講師などを掛け合わせて独立することも可能です。
開業資金を用意したり、独立型社会福祉士養成研修を受けたりなど、やらなくてはならないことも色々とありますが、自分の頑張り次第では公務員や企業の社員として働くよりも高い収入を得られる可能性があります。
需要の高い社会福祉士は平均給料も高め
近年、社会福祉の支援を必要とする人は増加傾向にあり、様々なケースに対応するためにも福祉制度は複雑になっています。そのため、どのような場面でもスムーズに福祉を利用できる専門家の需要が高まっています。社会福祉士は、そんな需要に対応できる福祉の専門家です。
働く職場は実に幅広く多様で、それぞれ業務内容や待遇には違いがあります。ただ福祉関連の国家資格の中では総じて給料は高めです。さらに成年後見人制度を利用して独立すれば、より高収入を得ることも可能な将来性のある資格です。
今後も需要は高まることが予想される福祉業界で、専門家として活躍できる社会福祉士は、まさにこれからの社会に必須な職業だといえるでしょう。