介護の仕事には、身体介護や生活援助、介護サービスでの利用者さんやご家族とのコミュニケーションなど幅広い業務内容が含まれます。具体的にはどのような仕事に携わるのかを詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。また介護の仕事に対してどのような心構えを持つ必要があるのか、どのような人が向いている仕事なのかについても解説します。
目次
介護の仕事とは
介護とは、年齢による衰えや心身の障害などにより、日常生活を送ることが難しい人を支援することです。
法律で定められた定義はありませんが「社会福祉士及び介護福祉士法」第2条によると、介護福祉士の定義について以下の通り記されています。
「介護福祉士」とは、第四十二条第一項の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもつて、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護(喀痰(かくたん)吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であつて、医師の指示の下に行われるもの(厚生労働省令で定めるものに限る。以下「喀痰吸引等」という。)を含む。)を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと(以下「介護等」という。)を業とする者をいう。
引用:昭和六十二年法律第三十号 社会福祉士及び介護福祉士法
介護の仕事とは日常生活に不安を抱える方が安心して生活できるよう、日常生活に伴う身体の動作、家事、健康管理、社会参加への支援が主な役割です。
介護の仕事に必要な資格
介護職として、介護補助や介護助手として介護業務に携わったり、家事や送迎などを行ったりする場合に資格は問われません。しかし、利用者さんの体に触れるなど介護の専門的な仕事には、無資格では従事できません。介護職としての資格が必要になります。
介護には介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士、ケアマネジャー(介護支援専門員)、介護事務などの資格があるので、必要に応じて取得するようにしましょう。
- 介護職員初任者研修
資格や経験を問わずにチャレンジできるものであるので、介護スタッフの入門資格ともいえます。養成校で講座を受講し、修了試験に合格すると資格取得です。養成校にもよりますが、1.5~4ヶ月ほどで取得できることもあります。
- 介護福祉士実務者研修
初任者研修と同じく、資格や経験を問わずに受験できる資格です。特定の資格を保有している場合には受講科目を省略できるので、スピーディに資格を取得できることがあります。
学ぶ内容は初任者研修よりも幅広く、専門的です。介護福祉士を目指す場合には実務者研修を修了していることと実務経験が求められるので、今後も介護業界で働いていきたいと考えている方は初任者研修ではなく、実務者研修を目指すほうが良いでしょう。また、実務者研修を取得していると、サービス提供責任者の役職に就くことができるので、訪問介護の分野でも活躍できます。
- 介護福祉士
介護福祉士は国家資格です。管理者業務も担当できるので、介護職員としてのスキルアップを目指すのであれば取得する必要があるでしょう。介護福祉士の試験を受けるためには、実務者研修を修了し、なおかつ介護業界で3年以上の経験があること、あるいは福祉系の高校などで既定の単位を取得していることなどが求められます。
- ケアマネジャー
介護保険サービスの利用に欠かせないケアプランを作成する仕事です。介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、登録することでケアマネジャーの仕事を行うことができます。
受験するためには介護福祉士などの資格を有し、5年以上かつ900日以上の業務経験を持っていることなどが求められるので、長期にわたる介護経験や福祉関連の経験が必要です。
- 介護事務
介護業界で事務作業をしたいと考える人は、介護報酬の請求業務、会計事務などを担当する介護事務の資格を目指すと良いでしょう。国家資格ではありませんが、特定の財団等で実施している介護事務の認定試験合格が求められることもあります。
介護の職場
介護の職場は主に次のものが挙げられます。
●入所施設
- 有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- グループホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 介護老人保健施設
●通所施設
- デイサービス
- ショートステイ
- 通所リハビリテーション(デイケア)
●訪問介護事業所
●病院
介護の仕事内容
介護職員の主な仕事としては次の5つが挙げられます。
- 身体介護
- 生活援助
- 利用者さんやご家族とのコミュニケーション
- ケアプランの作成
- 利用者さんの送迎
なお、利用者さんの体に触れる仕事は、介護福祉士や介護職員初任者研修などの資格を保有していることが求められるため、適切な資格を有していない場合には担当できません。
身体介護
身体介護とは、以下の3つを指しています。
① 利用者さんの身体に直接触れて行う介助
② ADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者さんと共に行う支援
③ その他専門的知識・技術をもって行う利用者の日常生活上・社会生活上のための支援
具体的には、入浴や排せつ、食事の介助、歯磨き、着替えなどの手伝いなどが含まれます。
参考:各介護サービスについて(社保審-介護給付費分科会 第176回(R2.3.16) )
生活援助
生活援助とは、調理や洗濯、掃除などの家事の援助を行う仕事で、介護サービスを利用する本人の代行的なサービスといえます。生活援助では利用者さんの身体に直接触れることがないので、介護福祉士や介護職員初任者研修などの資格がなくても担当可能です。
利用者さんやご家族とのコミュニケーション
介護施設や訪問介護サービスの利用者さん、またそのご家族とのコミュニケーションも大切な介護の仕事です。利用者さんやご家族の悩みを丁寧に聞くことで、ストレス軽減をサポートできることもあります。
入所施設や通所施設では、利用者さん同士のコミュニケーションをサポートすることも少なくありません。誰もが楽しく生活できるように、しっかりと利用者さん同士の関係や状況を観察し、適切に介助していきます。
ケアプランの作成
利用者さんがどのような介護サービスを受けるのかについてまとめた書類が「ケアプラン」です。ケアプランを作成するのはケアマネジャーの仕事ですが、利用者さんの状態を知る介護職員もプラン作成に関わります。
利用者さんの送迎
通所施設では、利用者さんの送迎を行うこともあります。身体的な介護を行うわけではないので特に資格は求められませんが、車いすに乗せる、車いすのまま持ち上げるなどの作業もあるため、体力が求められるでしょう。
訪問介護では利用者さんを送迎することはありませんが、車で利用者さんの居宅に向かうことも多いです。通所施設で送迎に携わる場合と同様、運転免許があると良いでしょう。
介護の仕事をするうえでの心構え
内容によっては資格不問で携われる介護の仕事ですが、どの仕事を行うときも相応の心構えが必要です。特に次の3つについては、十分に意識しておきましょう。
- 利用者さんの生活を変えない
- 利用者さんの意思を尊重する
- 利用者さんの能力を最大限に活用する
それぞれの心構えについて、詳しく解説します。
利用者さんの生活を変えない
介護は利用者さん本位で実施する必要があります。介護の場面において工夫することは良いことですが、決して利用者さんの気持ちや要求を無視して介護者本位の介護をするということがあってはいけません。
利用者さん本位の介護とは、可能な限り利用者さんが今までと同じ生活を送れるようにサポートすることです。利用者さんが普段と同じ生活を楽しめるように配慮しましょう。
利用者さんの意思を尊重する
介護は、利用者さんの意思を尊重して行われます。利用者さんが食べたくないときに無理やり口に入れたり、やりたくないレクリエーションに無理に参加させたりすることは、介護とは言い難いでしょう。
また介護者の意思を押し付けること、介護者が実施したい介護サービスを利用するように誘導することも、介護の基本方針から外れます。
利用者さんの能力を最大限に活用する
介護を提供するときは、利用者さんが持っている能力を最大限に活用することを原則とします。利用者さんのペースがゆっくりだからという理由で、利用者さん自身でできることを介護者が代わりに行うのは、介護の原則から反する行為です。
また介護しすぎて、利用者さんの能力を低下させることも望ましい状態とはいえません。あくまでも利用者さんができないことをサポートするように心掛けましょう。
介護の仕事に向いている人
介護は誰もが行うことができる仕事です。しかし、特定の資質を有している場合は、さらに介護に適している人材といえるでしょう。特に次の3つのいずれかに当てはまる人は、介護の仕事に向いています。
- 体力に自信がある人
- 人と関わることが好きな人
- 学ぶことが好きな人
それぞれ具体的にはどのような人物なのか、またなぜその資質を持っていると介護に向いているのかを解説します。
体力に自信がある人
身体介護を行うときは、体力が必要です。利用者さんを抱きかかえて入浴や排せつを手伝うとき、車いすに乗せるときなどは、相応の体力が必要になるでしょう。
また、24時間体制で介護サービスが提供されている入所型の施設などでは、夜勤などもあります。基礎体力があり、生活リズムが崩れても体調に影響が出ない人、勤務時間が長引いたり立ち仕事が続いたりしたとしても、健康を損ないにくい人が望ましいといえるでしょう。
人と関わることが好きな人
介護のなかでコミュニケーションは大切な要素です。利用者さんとのコミュニケーション、あるいは利用者さんのご家族とのコミュニケーションに加え、職員同士のコミュニケーションもあります。
いずれも活発にコミュニケーションを取ることで、良好な人間関係を構築できるでしょう。人と関わることが好きな人は、介護の仕事に向いているといえます。
学ぶことが好きな人
介護にはさまざまな資格があり、それぞれの資格を取得することで働く場面が増え、キャリアアップも望めます。学ぶことが好きな人は、介護の仕事にも向いているといえるでしょう。
また介護には含まれる領域が広く、医療や看護、福祉などについても知識を深めると、より良い介護を提供できるようになります。さらに介護には公的制度も多く、しかも頻繁に改正されたり新しい制度やサービスが施行されたりするので、知識をアップデートすることも必要です。継続的に勉強することができることも、介護に適した資質といえるでしょう。
介護の仕事を選択肢に入れてみよう
介護は、幅広い知識や領域を含むやりがいのある仕事です。高齢化が進むなか、今後もますますニーズが増えると予想されます。施設が多くて求人も多いので、転職しやすいこと、就職しやすいことも介護の魅力です。ぜひ介護の仕事も将来の選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。