令和3年度の介護報酬改定で、『感染症や災害への対応力強化』として、「日頃からの備えと業務継続に向けた取組の推進」として、
災害への地域と連携した対応の強化
令和3年度介護報酬改定に関する審議報告の概要
災害への対応においては、地域との連携が不可欠であることを踏まえ、非常災害対策(計画策定、関係機関との連携体制の確保、避難等訓練の実施等)が求められる介護サービス事業者(通所系、短期入所系、特定、施設系)を対象に、小多機等の例を参考に、訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めなければならないこととする
と明記されました。
今回は、「介護事業所における災害対応 平時の対策~職員の招集と避難~」についてご紹介します。
平時からの準備が重要ですので、運営改善にご活用頂ければ幸いです。
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目次
平常時の対策
職員の招集・参集基準の決定
夜間や休日における職員の招集方法は確立していますか。
夜間やデイサービスが休みの日は施設・事業所内の職員人数は少なくなります。よって、所要時間別緊急連絡体制は、管理者ではなく職員の皆さんが利用・活用できる環境が必要です。
災害については、震度5、その他の災害については行政からの避難勧告を一つの基準としましょう。
災害関連情報 |
【地震】震度5弱の地震発生または津波警報が発令されたとき 【その他】当該地区に大雨・洪水・暴風・波浪・高潮などの警報が発令されたとき |
【地震】震度5強の地震発生または大津波警報が発令されたとき 【その他】当該地区に大雨・洪水・暴風・波浪・高潮により避難勧告または避難指示が発令されたとき |
避難の判断「避難の判断基準を定めていますか?」
土砂災害の場合
- 土砂災害の危険箇所付近の施設では、土砂災害警戒情報が発表されたときや管轄行政のホームページで示す
土砂災害降雨危険度がレベル2になったときなどが避難開始のタイミングとして下さい。 - 土砂災害の前兆現象が現れた場合は、非常に危険な状態のため、土砂災害降雨危険度の状況によらず、直ちに避難して下さい。
洪水の場合
- 浸水する前の避難が原則です。市町村からの情報に注意し、避難準備情報や避難勧告、避難指示が出た場合は、早急に避難して下さい。
※「避難準備情報」・・・災害時要援護者等の特に避難行動に時間を要する者が、避難行動を開始しなければならない段階であり、災害の発生する可能性が高まった状況
「避難勧告」 ・・・通常の避難行動ができる者が避難行動を開始しなければならない段階であり、災害の発生する可能性が明らかに高まった状況
「避難指示」 ・・・①災害の前兆現象の発生や現在の逼迫した状況から、災害の発生する危険性が非常に高いと判断された状況
②災害が発生した状況 - 市町村からの情報がない場合でも、低地にある施設など立地条件によって危険となる場合があることから、少しでも危険を感じたらすぐに避難して下さい。
高潮の場合
- 海岸付近にある施設は、気象庁から高潮警報が発表された段階で避難を検討。
- 台風がまだ接近していないときにも警報が発表されることもあるので、気象情報に常に注意し、早めに避難して下さい。
地震(津波)の場合
- 地震発生後は、直ちに建物の内外を点検し、大きな亀裂や傾きが発見された場合には施設外に避難して下さい。
- 津波警報等が発表された場合は急いで、高い場所に避難して下さい。
※避難する場合は「事故様態別 緊急連絡のルール」に従い、状況報告を行うこと。
災害に応じた避難方法の検討「避難場所や避難経路、避難方法を定めていますか?」
施設内に避難する場合
- 施設内の避難場所は、予測される災害に応じて、事前に決めておく事が必要です。
例)
土砂災害のおそれ場合・・・①東棟2階共用部 ②東側作業棟内
床上浸水のおそれ場合・・・①本館2階食堂 ② 東棟2階共用部
強風被害のおそれの場合・・・①本館2階食堂 ②1階ロビー
地震の場合・・・ ①本館2階食堂
施設外に避難する場合
- 避難場所、避難経路については、複数設定し、選択できるようにして下さい。
- 避難場所や避難経路、避難方法については、避難所の立地条件・収容人員や利用者の特性を考慮して設定しましょう。
- 設定した避難経路は実際に通って、途中の危険な箇所や所要時間等を把握しておく事が必要です。
早期の避難
- 津波、洪水、土砂災害等の可能性がある場合、早めの段階で「空振り覚悟で早めの避難」を心がけて下さい。
避難経路図の掲示
- 施設で定めた施設内、施設外それぞれの避難場所と避難経路を記載した避難経路図を、利用者の分かりやすい場所に掲示して下さい。
<作成例>避難経路図
食料等備蓄品の準備
災害時に必要な食料などの備蓄品リストを作成していますか。
食料等の備蓄については各施設・事業所において、下記のとおり対応、配備しましょう。
【配備の範囲】
入居系サービスの定員数分
【配備方法】
入居者1人あたりの1日分の備蓄量の目安
・ペットボトル水2.0ℓ
・缶詰またはレトルト食品3個
(缶詰)いわし缶・さんま缶・さば缶など
(レトルト)カレー、ハヤシ、牛丼、肉じゃが、中華丼、お粥など
・紙食器、紙コップ、使い捨て箸、スプーン・フォーク
上記内容を、2日分以上用意。(最低限2日分、倉庫等の保管場所の余裕に応じて3日分以上が望ましい)
※賞味期限到来前に通常食材としての使用を行うこと。
○食料・水以外の主な備蓄品、災害時必要品
区分 | 品名 |
調理器具 | カセットコンロ、コンロ用ボンベ、紙食器、箸 |
医療備品 | 消毒薬、胃腸薬、傷薬、鎮痛剤、ガーゼ、包帯、脱脂綿、 絆創膏、はさみ、体温計 |
情報機器 | 携帯ラジオ、メガホン、携帯電話充電器(電池式) |
生活用品 | 懐中電灯、電池、ローソク、ライター、ティッシュペーパー、ウェットティッシュ、Pトイレ、紙おむつ、生理用品 |
防寒具 | 使い捨てカイロ、石油ストーブ、灯油、毛布 |
安全用品 | 防災ずきん |
作業機械 | かなづち、のこぎり、釘、スコップ |
備蓄した食料や医薬品が有効期限切れにならないよう、備蓄品リストを作成し、定期的に在庫チェックを行って下さい。
<作成例> 備蓄品リスト
○デイサービスについて
- 複合型施設で、デイサービス専用の食料・水・調理器具等の備蓄は不要とします。
(但し、デイサービスご利用者の分を見込んで、施設全体の備蓄を若干多めに確保しておくことは差し支えありません。)
なお、最低限の非常時備品は用意しておくこと。懐中電灯、電池は必須。 - デイサービス単独拠点では、最低限の非常時食料・水として、平均ご利用者人数×1食分以上の量を備蓄しておくこと。
また、懐中電灯、電池、携帯ラジオ、医療備品等、必要最低限の非常時備品は用意しましょう。
地域とのネットワーク形成
地域住民、自治会等と非常時対応について連携を図っていますか。
非常時には近隣との連携・相互協力が不可欠です。日頃から、近隣住民・自治会・老人会等と交流し、非常時の避難や支援について話し合いをして下さい。特に、夜間帯に非常事態が発生した場合、地域住民に応援を要請できるよう、取り決めをしておきましょう。
また、消防訓練に地元の青年団や消防署、自治会をお招きして行う事も効果的です。
職員への防災教育
職員への防災教育を行っていますか。
職員の災害に対する理解と関心を高め、いざというとき適切な対応を取ることができるよう、各種災害の基礎知識や平常時、災害時に取るべき行動等を内容とする研修、勉強会を実施して下さい。
防災訓練の実施
定期的な防災訓練を実施していますか。
防災訓練の実施にあたっては、次の点に留意して実施します。
- 避難場所や避難経路の安全性についての実地確認
- 自力での避難が困難な者に対する避難・救出訓練
- 夜間を想定した避難訓練
- 災害時役割分担に基づいて、各自の行動をシミュレーション
市町村、消防その他の防災関係機関の協力を得ての実施にも努めて下さい。
訓練の実施にあたっては実施計画書、実施後は実施報告書を作成し、実施内容や反省点を記録、次の訓練実施に活かせるようにします。
火災を想定した訓練とは別に、年1回以上の防災訓練の実施が必要です。
まとめ
高齢者の命をお預かりしている立場として、日頃の災害に対する職員教育がいざという時のご利用者やそのご家族や職員の安心・安全につながります。自然災害の多い日本にとっては、台風によって「天気予報によって予測できること」と地震のように「突発的で予測が出来ないこと」と分かれます。
私の故郷の富山も今年の大雪で通所介護サービスの休止も余儀なくされ、休止になった事業所の職員が、老老介護のお宅の雪かきの支援に行かれたお話も聞きました。これから寒くなる時期を迎えますので、コロナ禍も加わり心配事は絶えませんが、いざという時の備えを職員教育の中で共有頂き、皆がどんな時も安心して生活できる対策にご活用下さい。