他業種からの転職で20万円支給「介護職就職支援金貸付事業」とは?

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他業種 転職 20万円 支給 介護職就職支援金貸付事業

他業種から介護職へ転職する方に20万円が支給される制度、「介護職就職支援金貸付事業」をご存知でしょうか。慢性的な人材不足に加え、新型コロナウイルス感染対策により業務負荷が高まる介護業界では、これまで以上に多くの人材が求められています。

この記事では、介護就職支援金貸付事業の概要に併せて必要な研修や介護の仕事内容などを解説していきます。

2021年4月に予定される「介護職就職支援金貸付事業」とは

介護職就職支援金貸付事業とは、未経験で介護や福祉の仕事に従事される方に向けて最大20万円を貸付する制度です。貸付とは言うものの、その後、介護や福祉の業界にで2年間就労すると全額返済免除となります。

貸付条件のひとつとなるのが、介護資格取得を目指した職業訓練の修了です。介護職員初任者研修や介護福祉士実務者研修を無料で受講できます。

職業訓練を修了すれば20万円が借りられ、参考書の購入費や転居費用など、就職準備金として利用できます。

また、職業訓練中は、雇用保険の受給対象外の方であれば、月10万円の職業訓練受講給付金の受け取りも可能です。

雇用保険の受給対象外の方であれば、月10万円の給付金の受給も可能です。20万円を借入れできるのは、職業訓練が修了したタイミング。参考書の購入費や転居費用など、就職準備金として利用できます。

開始時期・2021年4月予定
対象者・他職種から介護、福祉分野への就職を目指す方
金額・最大20万円(継続勤務2年で全額返済免除となる)
条件・指定の職業訓練(介護職員初任者研修、または介護福祉士実務者研修)を修了していること
その他・職業訓練受講期間は2~6ヶ月・雇用保険を受給できない方には、講座受講中に職業訓練受講給付金(月10万円)を支給・20万円の支援金は就労前に支給される

業界外から新たな人材を呼び込むことが目的

業界外 人材 呼び込む

介護就職支援金貸付事業が始まる背景には、介護業界における人材不足の深刻化が関係しています。2025年度末に必要と推計される介護人材は、約245万人。

一方、2019年度の介護労働実態調査の結果調査では、事業所の半数以上が良質な人材の確保が難しいと感じています。さらに、新型コロナウイルス感染症対策により、介護士の業務負担は増大しています。

現場の人手不足はさらに深刻化し、他業種からの新たな人材を求めて政府が政策を打ち出したのです。近年は介護の離職率は横ばい状態であり、処遇改善の取り組みが人材定着につながっていると考えられます。

今回の貸付事業をもとに、介護人材のさらなる定着や育成が強化されていくといえるでしょう。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和元年度 介護労働実態調査の結果と特徴」

職業訓練で取得を目指す介護資格とは?

職業訓練 取得 介護資格

職業訓練で取得できる資格は、「介護職員初任者研修」や「介護福祉士実務者研修」などです。実際にどのようなスキルが身に付くのか、カリキュラム内容とともに確認していきましょう。

介護資格の入門編「介護職員初任者研修」

介護職員初任者研修は、介護資格の入門編ともいえる資格です。利用者さんに直接触れる身体介護をするためには、初任者研修を修了しなくてはいけません。介護職は無資格でもチャレンジできる資格ですが、初任者研修を修了していれば転職時にも有利に働くでしょう。

130時間(10項目)のカリキュラムで学ぶのは、介護の基本やコミュニケーション技術、認知症などについてです。カリキュラム修了後には筆記試験がありますが、一度で合格しなくても追試制度を利用できます。介護職未経験の方でも取得しやすく、職場でスムーズに仕事を始めるためにも、まずは取得しておきたい資格であるといえるでしょう。

カリキュラム時間数
職務の理解6
介護における尊厳の保持・自立支援9
介護の基本6
介護・福祉サービスの理解と医療の連携9
介護におけるコミュニケーション技術6
老化の理解6
認知症の理解6
障害の理解3
こころとからだのしくみと生活支援75
講義の振り返り4
合計130

※現在は無資格でも介護職として業務に就くことは可能ですが、2021年4月の介護報酬改定で、無資格で働くすべての介護職員に「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられることとなります。完全適用は2024年を予定しています。

介護福祉士を目指せる「実務者研修」

介護福祉士実務者研修は、質の高い介護サービスを提供するための基本的な介護能力の習得を目的とした資格です。国家資格である介護福祉士を受験するためには、実務者研修の修了が義務付けられています。介護福祉士を受験するためには実務経験も必要となるため、将来的にキャリアアップを考える人に役立つ資格であるといえるでしょう。

初任者研修の上位資格にも当たる実務者研修では、初任者研修の内容に加えて医療的ケアを学習します。たん吸引や経管栄養の基礎知識が身につき、より幅広い分野で活躍することが可能です。受講時間は450時間(20項目)となっているため、受講期間は初任者研修より長期間にわたります。

カリキュラム時間数
人間の尊厳と自立5
社会の理解Ⅰ5
社会の理解Ⅱ30
介護の基本Ⅰ10
介護の基本Ⅱ20
コミュニケーション技術20
生活支援技術Ⅰ20
生活支援技術Ⅱ30
発達と老化の理解Ⅰ10
発達と老化の理解Ⅱ20
認知症の理解Ⅰ10
認知症の理解Ⅱ20
障害の理解Ⅰ10
障害の理解Ⅱ20
こころとからだのしくみⅠ20
こころとからだのしくみⅡ60
介護過程Ⅰ20
介護過程Ⅱ25
介護過程Ⅲ45
医療的ケア50
合計450

「介護職就職支援金貸付事業」の貸付条件

介護職就職支援金貸付事業は、介護業界への人材確保を目的とした制度です。そのため、職業訓練を修了したあとは、介護職に就業することが貸付条件となります。継続して2年以上勤務すれば、貸付金の返済は必要ありません。

転職にあたっては、ハローワークや福祉人材センターによる就職支援を活用できます。セミナーや介護施設の見学、体験なども組み込まれる予定です。

支援金の支給時期と使い道

支援金 支給時期 使い道

支援金の支給時期は、職業訓練を修了してから就職するまでの間です。訓練修了後に発行される証明書を提出すると支援金を借入できます。

支援金の使い道は就職準備を基本としていますが、転居費用や仕事に使用する自動車の購入費、研修参加費など幅広く利用可能です。例えば、子どもを保育園に預ける必要がある方は、預け先を見つけるための費用にあてることもできます。金額は最大20万円とされており、無利子での借入が可能です。

「介護職就職支援貸付事業」の注意点

介護職就職支援貸付事業  注意点

2年間継続して就業すると、支援金は全額返済免除となります。一方、途中で離職した場合には返済義務が発生するので注意が必要です。

また、貸付事業はあくまでも任意事業であるため、全自治体で開始されるわけではありません。詳細は地域によって異なるため、ハローワークや社会福祉協議会、福祉人材センターなどで確認しておきましょう。

働く場所で異なる、介護職の具体的な仕事内容とは

働く場所 介護 仕事内容

就職支援金は、介護や福祉分野に就業する方に向けて支給されます。ひとくちに「介護」といっても、提供する介護サービスによって形態はさまざまです。実際にどのような環境で働くのか、「入居」「通所」「訪問介護」それぞれの特徴や仕事内容を確認していきましょう。

入居系の場合

入居系の施設は、24時間体制で生活全般に関するサポートを行います。特別養護老人ホームや有料老人ホーム、介護老人保健施設などが入居型の施設にあたります。

介護度の高い入居者さんが多い施設の場合、食事や入浴、排泄などの身体介護に加え、たん吸引や経管栄養といった医療的ケアが必要な場合もあります。また24時間体制で介護サービスを提供するため、日勤だけではなく夜勤が必要なことも特徴です。夜間勤務には手当が付き、夜勤専従という働き方もあります。

有料老人ホームでは施設によって特徴が異なります。自立度の高い利用者さんが多い施設では、身体介護の場面が少なく、接遇スキルが求められるといった場合もあります。自分に合った職場を選ぶためには、あらかじめ施設の特徴を理解しておくことが重要です。

通所系の場合

通所系の施設では、ご自宅から通ってくる利用者さんに対して食事や入浴、リハビリやレクリエーションといったサービスを提供します。通所介護(デイサービス)や通所リハビリテーション(デイケア)とも呼ばれ、比較的介護度の低い方が利用するのが特徴です。基本的に勤務は日中に限られ、送迎業務が必要となります。日曜日や祝日は休みの施設もあるでしょう。

訪問系の場合

介護士は施設だけではなく、利用者さんの生活の場である居宅でも活躍します。訪問介護員は、利用者さんのご自宅を直接訪問し、生活援助や身体介護などのサービスを提供する仕事です。

買い物や調理、掃除などの生活援助を行うため、これまで培った家事スキルを活かすことができます。入浴介助や排せつ介助を通じて介護スキルもアップできるでしょう。

高齢者の在宅生活を支える訪問介護員は、超高齢化社会において高いニーズが見込まれる職種です。訪問時間は計画書で定められているため、シフト勤務が多く、曜日や時間帯を選びやすい仕事でもあるでしょう。

介護職復帰の方には「再就職準備金貸付事業」

介護人材確保のための制度として、介護職の経験をもつ方の復帰を支援する「再就職準備金貸付事業」があります。介護職に再就職するための費用として最大40万円を借入できます。

貸付対象となるのは、子どもの預け先を探すための費用や参考書費用、転居に伴う敷金や礼金などです。介護就職支援金貸付事業と同様に、2年間介護職に従事すると全額返済免除となります。

対象者は、過去に1年以上の実務経験がある介護福祉士、または初任者研修や実務者研修の修了者です。貸付制度を利用するためには、再就職する日までに利用計画書を添えて申請する必要があります。

実地主体は都道府県社会福祉協議会となるため、介護職への復帰を考えている方は検討してみてはいかがでしょうか。

対象者次のいずれかの資格を保有し、1年以上の実務経験があること ・介護福祉士・介護福祉士実務者・介護職員初任者研修(または現在廃止の介護職員基礎研修、1級課程、2級課程のいずれか)
貸付対象費用介護職への再就職に関するもの
貸付金最大40万円(介護業務に2年間従事すると全額返済免除あり)
利用条件介護保険サービス事業所に再就職すること

介護職への転職に介護職就職支援金貸付事業を活用しよう

介護職は、今後も高いニーズが見込まれる仕事です。必要な研修を修了していれば、介護の基本を身につけたうえで仕事に臨むことができます。ハローワークの就職支援を利用すれば、より自分に合った職場で活躍することもできるでしょう。

支援金があれば、生活を安定させた上で新たな業界へとチャレンジすることが可能です。他職種から介護職への転職を考えている方は、介護職就職支援金貸付事業を活用してみてはいかがでしょうか。

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