レスパイトケアとは?在宅での介護者を支えるサービス

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レスパイトケアとは?在宅での介護者を支えるサービス

介護業界で働いている人や介護をしている人であれば、「レスパイトケア」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。レスパイトケアは介護をする側のケアを目的としています。利用者さんの介護生活を維持していくためには、ご家族など介護者に対するサポートも欠かせません。

日常のケアでご家族が疲弊することで利用者さんの介護体制が崩壊することを防ぐためにも、介護をする側のリフレッシュする機会を設けることも重要です。本記事ではレスパイトケアの意味や役割、課題などについて解説します。


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「レスパイトケア」とは介護する側のケア

レスパイトとは本来、「小休止」の意味を持つ言葉です。これが「レスパイトケア」になると、介護を行っている人を一時的に解放し、休みをとってもらう支援を指します。介護サービスが高齢者を預かることで、ご家族の負担を減らすというわけです。

要介護者に対する介護サービスには様々なものがありますが、ご家族に対する直接のケアは介護保険上認められていません。しかしご家族が介護疲れを起こすことで、要介護者と共倒れになってしまう危険もあります。

レスパイトケアとは、要介護者に介護サービスを提供している間、介護者自身が後ろめたさを感じることなく休息することを目的とします。またご家族がひとりで悩みを抱え込むことがないように、介護職が介入しやすい状況を作るという側面もあります。

レスパイトケアの代名詞としてはショートステイが一般的です。介護保険の適用が可能なショートステイやデイサービスなどは、フォーマルな支援に分類されます。インフォーマルなものとしては、普段介護をしないご家族が介護を手伝うことや、家族介護者の会などに参加して情報交換することも含まれえます。

レスパイトケアの役割

在宅で慣れない高齢者の介護を行うことは、介護者であるご家族に大きな負担がかかってくるでしょう。精神的に疲れ切った結果、介護うつを発症したり虐待に発展したりするケースも考えられます。介護をする側が介護を続けられなくなると、介護される側の生活もままならなくなってきます。レスパイトケアはこういった問題の抑止力として期待されているのです。

2013年の法改正において、国は「在宅医療・介護」を推進する方針を明らかにしています。レスパイトケアの大きな目標は在宅の介護者をサポートすることによって、介護施設から在宅へとケアの場所を移行することにもあるのです。

  • 「レスパイトケア」で利用者さんのご家族をサポートすることも介護職の大切な仕事のひとつ

介護負担の軽減

レスパイトケアの一番の目的は、介護者の負担軽減にあります。いつまで続くかも分からない介護で疲れ果て、自分のやりたいことを我慢するような生活は、心身ともに負担が大きいものです。近年では介護離職が社会的問題として認識されつつあり、要介護者だけではなく介護者にもケアが必要であるという考え方になっています。

レスパイトケアとして介護保険適用のサービスを利用することにより、介護者が一時的に介護から離れることは、心身の負担を軽くして結果的に要介護者が在宅生活を長く続けられることにもつながります。国の方針として地域包括ケアシステムを中心に在宅介護を推進しているなかでは、レスパイトケアの浸透が必要不可欠といえるでしょう。

介護者の環境作り

レスパイトケアには、息抜きや気分転換以外の効果もあります。在宅介護はどうしても閉鎖的になりがちで、あまり公に論じられることが少ない側面があります。介護をしていて困ったことが起き、「ほかのお宅ではどうしているのだろう?」と疑問に思っても、なかなか相談できる相手がいない場合が多いでしょう。

レスパイトケアとして介護サービスを利用すると、第三者として介護事業所や病院が関わることになり、介護者が困りごとを相談しやすい環境が作れます。プロの目線からアドバイスをもらえることで、介護者は安心して介護にあたれるようになるでしょう。

レスパイトケアを利用することで介護者に時間的余裕が生まれると、外出をしたり人に会ったりするきっかけにもなります。介護者の他者交流をうながし、その機会を得ることができるというのも、介護者の心身の安定をはかるためには重要なポイントとなります。

このように、介護者の環境を作るというのもレスパイトケアの大きな役割といえます。

レスパイトケアとして利用できるサービスとは

レスパイトケアとして利用できるサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。介護保険適用になるフォーマルなサービスとして代表的な、「ショートステイ」と「デイサービス」、「訪問介護」について解説していきます。

ショートステイ

ショートステイは「短期入所生活介護」といい、その名のとおり短期間施設に入所して生活上の介護を受けることを指します。1泊から利用でき、最長で30日間の利用が可能です。短期入所生活介護にはショートステイだけではなく、特別養護老人ホームなどへの短期入所も含まれます。

同様のサービスには、医療ショートと呼ばれる「短期入所療養介護」というものもあります。こちらは入所先が介護老人保健施設や医療機関(病院、診療所)、介護医療院となり、医療ニーズの高い要介護者への対応を得意としています。

ショートステイを利用することで、介護者は一定期間介護から離れてゆっくりと休息が取れるため、レスパイト効果は非常に大きいでしょう。また、介護者が体調を崩したり、旅行に行きたくなったりしたときなど、いろいろな場面で活用できます。冠婚葬祭やどうしても数日間家を空けなくてはならない状況などの緊急時にも対応することで、介護者の日常生活を支えています。

ショートステイでは、入浴や食事といった身の回りのお世話はもちろん、健康管理についてもしっかりフォローを行います。施設の職員は介護のプロとしてご家族の相談にのり、アドバイスを求められる場合もあります。ご家族にとっては、不安や疑問に対して介護の専門職から的確な助言を受けられ、自分だけで介護をしている孤独感が解消できるため非常に有意義でしょう。このように、ショートステイは介護者にとってさまざまな利点があり、レスパイトケアの代表的なサービスといえます。

デイサービス

デイサービスはまたの名を「通所介護」といい、送迎を含めて日帰り利用できるサービスです。

ご家族は、デイサービスを利用している間に自分の時間を作ってリフレッシュしたり、必要な用事を済ませるたりできます。

デイサービスでは食事や入浴だけではなく、リハビリ(機能訓練)も行います。そのほかにもレクリエーションや健康チェック、ティータイムなどさまざまなプログラムが準備されています。特に近年は独自の特色を強く打ち出す「特化型デイサービス」もあり、リハビリ特化型や認知症対応型などさまざまな施設があります。

デイサービスは全国各地に存在しており、その施設によってサービスの内容や雰囲気が異なるので、機会があれば見学してみるのもよいでしょう。

訪問介護

訪問介護とは利用者さんの自宅に伺い、身体介護や生活援助を行うサービスです。
ご家族が介護を行っていて負担が大きいと感じる部分を中心に、ホームヘルパーがサポートを行います。

たとえば、ご家族の身体的負担が大きい場合、入浴や食事の介護、おむつ交換など身体的な介護を依頼することができます。介護疲れが共倒れになるくらいに深刻化している場合は、調理や洗濯、掃除などの家事援助をホームヘルパーが代行することもできます。ご家族が求めるサービスを提供することでストレスが緩和され、時間ができることで精神的なゆとりも生まれやすくなるのです。

レスパイトケアの現状と課題

ありがたいサービスといえるでしょう。そのため大変人気があり、利用予約が取りにくい場合があるようです。ショートステイは定期利用や長期利用をしている方が多く、利用者さん1人あたりの利用日数は月に10.2日というデータがあります。突発的な出来事で利用を申し込んでも、空きがないと受け入れを断られることもあり、複数の事業所と契約をしている利用者さんも多く見られます。また介護保険の限度額の関係で必要な日数の利用ができなかったり、ほかの介護サービスの利用部分が減ってしまったりする可能性もあります。

ショートステイの長期利用は、特別養護老人ホームなどの不足により施設入所ができない要介護者が代替として利用することがほとんどで、介護職員の間では「ロングショート」というおかしな言葉も聞かれるほどです。レスパイトケアのさらなる普及のためには、ショートステイの整備はもちろん、入所系施設の整備も急がれます。

その点デイサービスの数は全国的に見ても非常に充実しており、令和元年の調査では全国で43,893事業所という驚くべき数字が出ています。通所リハビリテーション(デイケア)を含めると60,437事業所となり、地域によってはコンビニよりも多いといわれることもあるほどです。ショートステイとは違って日帰りではありますが、確実に利用できるという点では、レスパイトケアとしてのデイサービスの利用が大きく期待できるでしょう。

訪問介護は、レスパイトケアとして紹介した中で唯一の「自宅にいながら受けられるサービス」です。集団生活のなかの画一的なサービスと違い、その家庭ごとの生活習慣を尊重した支援が時間単位で受けられるのが魅力です。訪問介護の事業所数はデイサービスほどではないものの34,825事業所となり、ほぼ全国どこに住んでいてもサービスを受けられる程に普及しています。

介護業界全体において人手不足が叫ばれている昨今、訪問介護はそのなかでも特に深刻です。ホームヘルパーの高齢化が急速に進んでおり、なんと50歳以上のホームヘルパーが全体の73.0%であることが全労連の調査によって明らかになりました。これはホームヘルパーの業務において家事支援が非常に大きなウエイトを占めており、家庭を持っている主婦層の就業に適しているところに理由があります。今後ますます需要が広がっていくことが見込まれるだけに、次世代の育成が課題となっているのです。

近年レスパイトケアとして注目されているのは、2006年に創設された小規模多機能型居宅です。小規模多機能型居宅介護は「小多機」と略されることもあり、通いを中心として訪問や泊まりを組み合わせるというこれまでにはない画期的なサービスです。利用者さんの様態や希望に応じて柔軟にサービスが提供され、緊急時も臨機応変に対応してもらえるメリットがあります。複数の事業所と契約する必要はなく、全てがひとつの事業所によって提供されるため、日々の介護に追われるご家族のレスパイトとしては理想的な仕組みです。その後「看多機」とも呼ばれる看護小規模多機能型居宅介護も登場し、訪問看護のサービスも組み合わせて利用できるシステムが確立されています。

しかし、良いことばかりではありません。上のふたつは介護保険上で特殊な扱いになっており、利用できるサービスに制限があります。今まで利用していたデイサービスや訪問介護、ショートステイを利用することができなくなるのです。慣れ親しんだケアマネジャーの契約を打ち切り、小規模多機能型居宅介護に所属する方に変更しなくてはいけません。泊まりや通いを一元的に利用できることは、情報の共有も容易で大変なメリットがありますが、長く介護サービスを使っている方にはデメリットも大きいといえます。そのため一時的なレスパイトケアとして利用するには難があり、人によって向き不向きが激しいサービスといえるのです。

このように、レスパイトケアは概念としては広く知られているものの、制度としての確立までは至っていないのが現状です。在宅介護の継続を左右するともいえるレスパイトケアを、制度として構築するにはもう少し時間がかかるかもしれません。

在宅介護の将来を担うレスパイトケア

内閣府の調査によると、自宅で介護を受けたい人の割合は73.5%です。介護職のケア対象は要介護者になりますが、その家族に対しても同じぐらい慎重に目を向ける必要があります。レスパイトケアは介護が崩壊しないための大きな柱であり、社会問題となっている介護離職を防ぐ重要な柱でになるでしょう。

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