ケアマネジャー(介護支援専門員)の職に就いたものの、なかなかその仕事に慣れず、アセスメントとケアプランについてしっかり連動させることができない、「御用聞き」や「サービスありき」になってしまっているのではないかと、不安や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな不安や悩みの手助けとなるようにケアマネジメントの大切なポイントである「アセスメント」について紹介をしていきます。
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目次
ケアプラン作成の要!アセスメントの重要性
アセスメント(事前評価・課題分析)は、利用者さん一人ひとりに合った適切なケアマネジメントを行ううえで最も重要なプロセスの一つです。アセスメントが利用者さんへの介護の起点となると言っても過言ではないでしょう
ケアマネジャーは、単にアセスメントシートにある項目を埋めるだけでなく、利用者さんの生活状況や心身状態、ご要望などを把握し、解決すべき課題(ニーズ)などの基本情報を適切に導き出す必要があります。
アセスメント力を上げる3つの「力」
ケアマネジメントを行うためにアセスメントは重要なプロセスになりますが、ケアマネジャーのアセスメント力を高めるためにはどのようなポイントを押さえておけば良いのでしょうか。ここではアセスメント力を高めるための3つポイントをご紹介します。
困りごとの背景を引き出す「質問力
利用者さん本人やそのご家族が抱えている困りごとや悩みごとは、「なぜそうなのか」といった原因がわからないことが多いものです。原因を探るには、興味や関心で質問を繰り返すのではなく、知りたいことをはっきりさせたうえで、本音や真意を引き出し、情報を収集する必要があります。
その際に意識して使いたいスキルが「答えやすい質問・答えたくなるような問いかけ」です。具体的には、自由に回答のできるオープンクエスチョンと、イエス・ノーで答えられるクローズドクエスチョンを使い分けることが大切になります。オープンクエスチョンで利用者さんの考えを整理しながらまとめていき、まとまらないようなら、クローズドクエスチョンを使うことで主旨がわかりやすく整理された「よい質問」をすることができるでしょう。
その人らしさを理解するための「情報収集力」
ケアマネジャーが利用者さんの一人ひとりが持つ個性やその人らしさを理解するには、その方が生きてきた時代のことや生活環境について想像できるかどうかが大切です。たとえば、戦時中を生きてこられた利用者さんのことを理解するには、その頃の時代背景や生活環境を知っている必要があるのです。
想像する力を身につけるためにおすすめなのが事例検討会などへの参加です。自分が受け持っている利用者さんの数以上の事例に触れることができ、ケアマネジャー同士の情報交換の場にもなります。多様な人生を知ることが利用者さんの持つ個性や、その人らしさへの理解につながっていくのです。
本当のニーズを導き出す「洞察力」
まず、前提として「困りごと=ニーズ」ではないことを理解しておきましょう。利用者さんからの困りごとの相談を受けてサービスに結びつけることや、希望を叶えるための支援をすることも必要ですが、ニーズとはそれだけではないということです。
たとえば、利用者さんが「食事はいつも自分で作って食べています」と言ったとします。そこで、「わかりました」と答えるのではなく、ケアマネジャーはガスやIHなどの調理器具を正しく使えているのか、賞味期限切れの食材を使っていないのか、買い物に行くときに危険はないのかなど、単純には見えていない部分を探る必要があります。そうすることで、本人も気づいていない隠れたニーズを引き出すことができるのです。
アセスメント力を上げるには「質問力」「情報収集力」「洞察力」の3つの力が重要
具体的なアセスメント項目とは
ケアマネジャーはアセスメントをするうえで、どのような点に注意することで必要な情報を収集できるのでしょうか。ここでは、確実にチェックしておきたいアセスメントの項目を紹介します。
健康状態既往歴
- 主傷病
- 症状
- 痛みなど
- 皮膚の状態や問題
- じょく瘡の有無や程度
- 麻痺の有無
- 関節の拘縮
- 視力(眼鏡などの使用)
- 聴力(補聴器などの使用)
- 意思の疎通(言語障害の有無) など
ADL
- 歩行(屋内・屋外、車椅子・歩行器の使用など)
- 排泄
- 食事
- 入浴
- 寝返り
- 起きあがり
- 移乗
- 着衣 など
※「自立・見守り・介助・全介助」の、どの状態にあてはまるのかをチェックしましょう。
IADL
- 買い物
- 料理
- 掃除・部屋の整理
- 洗濯
- 電話の使用
- 金銭管理
- 服薬状況
- 交通機関の利用 など
※「できる・できない・やらせない」の、いずれの状態なのかをチェックしましょう。
認知症および周辺症状
- 物忘れ
- 被害妄想
- 幻覚
- 徘徊
- 暴言暴行
- 拒否 など
コミュニケーション能力
- 意志の伝達
- 伝達方法
- 視力
- 聴力
- など
社会との関わり
- 家族交流
- 近所づきあい
- 友人など、仲間との交流
- 地域活動への参加 など
排尿・排便
- 尿意
- 便意
- 排泄回数
- 失禁の状況
- 排尿排泄後の後始末 など
アセスメントが不十分になるケース
介護保険サービスの「はめ込み」ばかりを考えて利用者さんやご家族から聞き取りをしてしまうと、アセスメントが不十分になりやすいので注意が必要です。ヒアリングをする際に家族環境や周辺環境をきちんと把握することは大切ですが、介護保険の介護認定調査で行う「要介護度」を測る形にとどまらないようにしましょう。
同様に、ADLや問題となりうる行動にスポットをあてて、「自立・一部介助・全介助」のどの支援が必要なのかと活動力を測定するような形のヒアリングも、アセスメントが不十分になってしまうので気をつける必要があります。支援パッケージを決めることが目的とならないようにしましょう。
さらに、「あの利用者さんと同じパターンだな」と決めつけてしまい、本来は似たような人でも個人ごとにニーズや環境が異なるという点を見落としてしまう場合があるので注意が必要です。
アセスメントを不十分なものにならないようにするために、次の4つポイントを見失わないようにしてください。
- コミュニティケアの推進
- 生活の支援
- QOLの向上
- コストのコントロール
利用者さんの望む暮らしからは「こういう暮らしをしたい」「この役割を続けていきたい」など具体的な目標が見えるはずです。上記の4つのポイントを押さえて、利用者さんが「何をしたいのか」という目標を理解し、その目標達成のために何が必要なのかを把握し、サポートしていくことが求められます。
たとえば、ある目標を達成するためには身体機能の向上が必要です。このときに、身体機能の向上は手段であって目標ではないと捉えることが大切と言えます。身体機能の向上は利用者さんの「やりたいこと」を実現するための手段のひとつなのです。
- アセスメントは支援パッケージを決めることが目的になってしまってはいけない!
- 身体機能の向上などは、あくまでも利用者さんの「望む暮らし」を実現するための「手段」であって、目的ではないことを忘れずに!
アセスメントの基本マナーとポイント
上記でも紹介した、「良い質問」をするためにもケアマネジャーは相手になる高齢者やご家族の方との信頼関係を築くことが大切になります。以下のようなマナーとポイントを心得て対応することが不可欠です。
居宅訪問時のマナー
- 相手に不快感を与えない身だしなみをする。
- 名刺は両手で持ち、名前を名乗りながら相手の胸の高さに差し出す。
- 自己紹介は事業所名と名前を告げるだけでなく、ケアマネジャーとしてのあなたの役割をわかりやすく説明できるようにする。
- 相手の都合の良い時間帯を、あらかじめ確認してから訪問する。
- アセスメントにかける時間は、相手の負担にならない範囲にする。
アセスメントのポイント
サービス担当者会議などにもあてはまることですが、相談者の自宅を訪問する前にはご家族・他職種や他機関(地域包括支援センターや居宅介護支援などのサービス事業者)といった事業者や支援者からの情報を集めてより正確な利用者の心身の状態を把握しておくことも必要です。事前に情報を集めて的外れな質問は避けるようにしましょう。
まとめ
ケアマネジャーが利用者さんにとって適正なケアプランを作るためには、丁寧なアセスメントが必要不可欠となります。その前提には、ケアマネジメントとは「利用者の社会生活上のニーズを充足させるため適切な社会資源と結びつける手続きの総体」であることを忘れてはいけません。この点を踏まえて、利用者さんの望む生活を支援できるようにケアマネジメントを行っていきましょう。