人が人としての良心を持ち、自ら善と悪を正しく見極める社会生活を営んでゆく「道徳」のことをモラルと言います。私たちが提供する介護サービスは、サービス内容によっては密室性が高い、他人に見えにくいサービスです。そのため、モラル(道徳)のない職員は、介護サービスを提供することが、場合によっては難しくなります。
今回は「モラル」についてご紹介させていただきますので、皆さんの業務姿勢の見直しに、ご活用いただければ幸いです。
目次
適切なモラルに必要なこと
周囲の「モラル」にも敏感に!
自分だけが高いモラルを持てばよいわけではありません。周囲にも敏感になることが重要です。「モラルなきものは去れ」という意識をすべての職員が共有しましょう。
ほうれんそうを徹底しよう。
質の高いサービスを提供するため、そして社内でのモラルを徹底するためには、情報の共有化が非常に重要です。ほうれんそう3原則をもとに、確実な報告・連絡・相談を実践してください。
≪ほうれんそう3原則≫
- 気づいた時点で、ほうれんそう
利用者の身体状況や環境などに変化があったときなど、気づいたときにタイムリーに報告することが原則です。
- イヤなことほど、ほうれんそう
嫌なことは報告したくないという意識が働いてしまいますが、そんなときこそ勇気をもって報告が必要です。報告をせずそのまま放置しておくと、より大きな問題になってしまうことがあります。
- 迷ったときには、ほうれんそう
「報告すべきか?それほどでもないので報告は必要ない?」と迷ったときは、迷うことなく報告してください。
「報告・連絡・相談」は義務であり、故意に報告しない場合は報告義務違反になります。明るく、活発な拠点づくりのため、日頃から「ほうれんそうの徹底」を心がけていきましょう!
業務上のモラル
これから紹介する「業務上のモラル」は必ず守って業務を行ないましょう。
法と規則を守ること。(犯罪行為は絶対にしない)
法と規則を守ることは、最低限のモラルです。法で罰せられるような、犯罪行為は絶対にしてはいけません。さらに、会社には規則があり、この規則を守る義務があります。
会社の規則である「就業規則」にも、「表彰および懲戒」に関する規定を定めていることがほとんどです。
- 勤怠に関して虚偽の取り扱いをする。
- 他の職員に性的な言動によって不快な思いをさせる(いわゆるセクハラ行為)。
- 会社の物品を勝手に持ち出す。
- 故意または職務上の怠慢により会社に損害を与える。
- 虚偽の事項を流布して会社に不利益を与える。
- 社内の風紀秩序を乱す。
- 利用者宅から、金銭、物品などを窃盗する。
- 犯罪や破廉恥行為をおこなって職員としての体面を汚す。
- 業務上知り得た情報(社内情報・利用者の個人情報 など)を社内外に漏らす。
ここに挙げた行為はすべて禁止されていて、懲戒の対象となり得るものです。
そのなかでも、特に「介護職(ヘルパー)などの犯罪事件」など、絶対にあってはいけません。犯罪行為をする職員は、利用者にとって恐怖であり、不安そのものでしかありません。
利用者に対して「この介護職員(ヘルパー)は信用しても大丈夫かしら、お金を盗ったりしないかしら」など不安感を与えないよう、日頃の行動・言動から心がけましょう。
守秘義務を遵守しましょう。
守秘義務とは「業務上知り得た、利用者やそのご家族の秘密を漏らしてはならない」という義務のことで、法律で規定されているとともに、社内でも明確な決まりがあります。守秘義務は、就業中はもちろん退職後でも守ることが義務づけられています。
また、サービス担当者会議などで個人情報を使用する場合があるため、契約時には「個人情報の使用に係る同意書」をいただくことが必要です。
≪法令による規定≫
●厚生省令第37号(平成11年3月31日)第33条
業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を漏らしてはならない。サービス担当者会議などで個人情報を用いる場合は、あらかじめ文書で同意を得ておくことが必要です。
●社会福祉士及び介護福祉士法第46条
守秘義務に違反した場合は、1年以下の懲役または30万円未満の罰金に処する
●個人情報保護法
平成17年4月からが施行された個人情報を保護する法律
この法律では、個人情報を取り扱う事業所に対して、個人情報の適正な取扱いを規程しています。守秘義務は、無意識や善意により違反してしまうことが多くあります。常に意識して守ることが大切です。
(例)
- 利用者を励まそうとして「●丁目の●●さんも、この前〇〇だったんですよ~」とお話をしてしまった。
- 友人と居酒屋で、利用者のご家族を話題にした
- 利用者の連絡先を書いたメモ帳を、移動中に道に落としてしまった
- 利用者の名前の書いた「サービス実施記録(介護記録)」をカバンごと盗まれてしまった。
上記の事例は、利用者の個人情報を故意にバラそうとしていたわけではなく、無意識に破られてしまっています。業務中または業務外であっても、常に「守秘義務違反を犯さない」と意識をしましょう。
全員の意識でモラルある言動を
介護現場においては、モラルを自分に厳しく問いつつ、サービスを提供しなければいけません。「誰も見ていないしこれくらいはよいだろう」という自己判断が、モラルない言動や会社全体の信用を損なうことになりますので、モラルある言動に務めるよう、会議や研修などで周知徹底を行ってください。