人が人としての良心を持ち、自ら善と悪を正しく見極める社会生活を営んでゆく「道徳」のことをモラルと言います。私たちが提供する介護サービスは、サービス内容によっては密室性が高い、他人に見えにくいサービスです。
今回は「モラル(医療行為」についてご紹介させていただきますので、皆さんの業務姿勢の見直しに、ご活用いただければ幸いです。
個人的な契約(やりとり)は厳禁です。
(例)
- 勤務時間以外に、個人的に頼まれてケアをした。
- 利用者に個人的なビジネスで扱っている商品を販売・おすすめした。
- 利用者から勧められて、利用者から個人的に商品を購入した。・・・など
これらはすべて個人的な契約(やりとり)であり絶対にしてはいけません。
≪個人的な契約(やりとり)を禁止している理由≫
- 利用者と個人ではなく会社との契約に基づいて、介護サービスを提供している。
- 業務で知り得た情報を、他のことに活用することになるため、守秘義務違反に問われる可能性がある。
- 責任の所在が不明確なため、事故などが起こると職員個人が責任を問われる可能性がある。
以上のように、個人的な契約や、やりとりを禁止することは、職員自身を守ることにもつながります。
また、一般的な就業規則には、「会社の職務または地位を利用して私利をはかったとき」は懲戒処分になると規定されています。個人的な契約(やりとり)は、動機がどうであれ、たとえ、善意であっても禁止です。
以下の記事では、上記のほかに守るべきコンプライアンスについて解説しています。
「医療行為」の禁止
(1)医療行為の定義
厚生労働省によると下記のように定められています。
医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為
参照:「医行為」について|厚生労働省
(2)法令による規定
医師法第17条・歯科医師法第17条
「医師(歯科医師)でなければ、医業(歯科医業)をおこなってはならない」
参照:医師法(昭和二十三年法律第二百一号)、歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)
つまり、医療行為とは、免許をもった医師のみが行うことのできる診断・治療などを指します(つまり、介護職やホームヘルパーの医療行為は禁止です)。医療行為は、具体的な行為ごとに決められているわけではありません。
つまり「医療行為とは、手術・注射・点滴・・・」といった規定はないため、医療行為の定義に照らして解釈する必要があります。
ご家族がおこなっている行為だから、職員もできるという判断は間違いです。ご家族は本人と同一とみなされることが多いのですが、職員は明らかに第三者であり、立場が大きく違います。そのため、ご家族ができることでも、職員にはできない場合があります。
ですが、介護現場においては、医療行為か否か判断に迷う行為が生じやすいため、平成17年7月に厚生労働省より、医療行為の解釈に関する下記の通知が出されています。
医療機関以外の高齢者介護や障がい者介護の現場等において、判断に疑義が生じることが多い行為にあたって原則として医療行為ではないと考えられるものを別紙の通り列挙したので、医師、看護師の医療に関する免許を有しない者が行なう事が適切か否かする際の参考とされたい。
参照:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)|厚生労働省
この通知の別紙によって、医療行為ではないと判断された行為(点眼、爪きり、血圧の測定、シップの貼付、軟膏塗布・・・など)の詳細が掲載されています。
法人によっては、下記の行為のみを社内決済なしで行えるというルールにされている場合もあります。
実施できる行為 | 備考 | |
1 | 体温計測 | 水銀体温計・電子体温計で腋下にて、または耳式電子体温計で外耳道にて計測 |
2 | 自動血圧測定器での血圧測定 | |
3 | パルスオキシメーターの装着(動脈血酸素飽和度を測定するため) | 新生児、入院の必要があるものを除く |
4 | 爪切り、爪のヤスリがけ | 爪または爪周囲の皮膚に異常がある場合や、専門的な管理が必要な場合を除く |
5 | 日常的な口腔清掃 | 重度の歯周病などがある場合を除く |
6 | 耳垢の除去 | 耳垢塞栓の除去は不可 |
7 | 自己導尿を補助するための、体位の保持 | カテーテルの準備は不可 |
(3)心がけること
①利用者への事前説明
サービス導入時、医療行為は法律で禁止されているため、できないことをご説明すること。
②予防的視点
医療行為や医療行為に類することが必要になったり、依頼されたりする可能性を予測し、事前に対策を検討しておくこと。
③医療機関との連携
医療行為かどうか迷うような行為に関しては、医療機関と連携をとり、事前に指示を受けておくことで、急な対応をしなければならない状況を避けることができます。
迷う場合は相談しよう
厚生労働省からの通知の別紙にて、医療行為ではないと判断された行為を行う際は、「管理者・ケアマネジャーへの報告・連絡・相談」と「ケアプラン記載・サービス担当者会議の承認」は必要です。少しでも「医療行為かな?」と判断に迷う行為には、事前に管理者に相談をするように心がけましょう。