介護現場の人材育成とは?課題や取り組む際のポイントを紹介

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介護現場の人材育成とは

介護現場のスタッフの成長は、事業の成長にもつながるものであるため、人材育成は重要です。しかし、スタッフのスキル向上を望んでいながらも指導方法が統一されず、教え方がバラバラであったり指導が不適切であったりと、思うようにスキル向上のための体制づくりを実現できていない介護施設は少なくありません。

またそうした施設では、先輩後輩などとの人間関係も上手くいかず、離職する人も多くいるため、人材不足の解消が先に目がいき、育成どころではない介護事業所もあることでしょう。とはいえ、人材育成は人材定着につなげることだけでなく、リスクマネジメントにおいても重要な取り組みです。

この記事では、介護人材の定着につながる介護現場の人材育成について、課題や取り組む際のポイントを解説します。


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介護の人材育成が急務!深刻化する人材不足

介護の人材育成が急務!深刻化する人材不足

介護業界における人材不足の現状と要因

令和3年7月に厚労省が公表した「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要性について」によると、2023年度に233万人、2025年に243万人、2040年には280万人の介護職員が必要とされています。

国を挙げて「介護職員の処遇改善」「多様な人材の確保と育成」「離職防止・定着促進・生産性向上」「介護職の魅力向上」「外国人材の受入環境整備」などに取り組んではいるものの、依然として人材不足感は高く、介護関係職種の有効求人倍率も高い水準を推移している状況です。

人材不足の理由について、令和2年度に公益財団法人介護労働安定センターが取りまとめた「介護労働実態調査」によると「採用が困難である」、「他産業に比べて労働条件等が良くない」、「同業他社との人材獲得競争が激しい」などが挙げられています。

必要な人材を確保していくためには、介護に対するネガティブなイメージの払拭や業務改善への取り組み、教育制度の整備が急務といえるでしょう。

参考:

厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

公益財団法人 介護労働安定センター「令和2年度「介護労働実態調査」結果の概要について」    

深刻化する人材不足への対策

人材不足への対策としてまず重要なのは、働きやすい労働環境の整備です。業務改善に取り組み、煩雑な業務の負担を軽減するとともに介護の質の向上を目指すことがとても大切です。

介護に対して、「きつい・汚い・危険」いわゆる「3K」のイメージを持っている方は少なくありません。

介護の魅力を発信する体験型・参加型イベントの開催や、これまでにアプローチしてこなかった若年層や子育てを終えた層、アクティブな高齢者層に目を向けて採用活動を行うのも良いでしょう。群馬県では介護人材育成認証制度を導入し、人材育成及び処遇・職場環境改善に積極的に取り組む「ぐんま介護人材育成宣言事業者」の認証を行い、一般に広く公表しています。

最近では、外国人人材の受け入れを積極的に進める事業所も増えてきました。公益社団法人全国老人福祉施設協議会が行ったアンケート調査では、受け入れた外国人スタッフに対する評価が高く、受け入れ施設の多くが今後も「受け入れを増やしたい」と回答しています。外国人の人材を減らしたいという声がほぼゼロであることからも、人材不足対策に外国人の雇用を考えてみるのもよいでしょう。

その他、介護業務に有益な資格は多々あります。スタッフの選択肢を広げてあげることや、今後目指したいキャリアのために資格取得をサポートすることは、これから頑張りたいと思っている介護職員にとって魅力的なものとなり、人材の獲得と定着に有効な手段であるといえるでしょう。

参考:全国老人福祉施設協議会「外国人介護人材アンケート結果資料」

介護の人材育成は定着率アップに有効な手段

介護の人材育成は定着率アップに有効な手段

前述した介護労働実態調査によると、前職をやめた理由のうち「結婚や妊娠、出産、育児のため」が第1位で、回答の25.0%を占めています。第2位は「職場の人間関係に問題があったため」(16.6%)でした。

職場における人間関係の悩みや不安、不満などの詳細を見てみると、「自分と合わない上司や同僚がいる」、「部下の指導が難しい」、「経営層や管理職等の管理能力が低い」、「業務の指示が不明確で不十分である」、「ケアの方法等について意見交換が不十分である」といった理由が挙げられています。

最近では、度を越した悪質なクレーㇺも増えてきました。そんなクレームに職員一人で対応させたり、現場の管理者に任せっぱなしにしたりすると、深刻な問題に発展した結果、心が折れ、さらに離職率を上昇させてしまうかもしれません。

離職を防ぐためには人材育成の仕組みづくりはもちろんのこと、各種ハラスメントが起きない体制づくりが大切なのです。

参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和2年度「介護労働実態調査」結果の概要について

介護職における人材育成の課題とは

介護職における人材育成の課題とは

ここでは、介護職の人材育成の課題について解説します。

忙しくて育成の時間的余裕がない

管理者やリーダー、中堅メンバー(ベテラン)が日々の業務に追われている状況では、スタッフと向き合う時間がありません。そのため「相談したい」「指導を受けたい」と思っているスタッフが不安になり、不満を募らせて離職につながるケースがよくあります。

人材育成をしていくためには、ある程度時間に余裕のある環境を整えることが大切です。

指導方法が場当たり的

スタッフ指導が計画的かつ体系的に行われていないと、場当たり的な指導で、しかも属人化しやすくなります。

その人の「経験や勘」の蓄積に基づく指導となってしまい、標準化されていないだけに、指導を受けるスタッフを混乱させてしまうことがあります。たとえば、同じオムツ交換の指導であってもA指導者とB指導者の指導方法が異なると、教えられたスタッフには迷いが生じ、いずれ不安が不満に変わってしまうケースが考えられるでしょう。

そのようなスタッフは「わからない状態」から抜け出せず、様々な対応する介護の場面において「適切な判断」ができないため、結果として時間を経ても正しい実践スキルが身につかないことになります。

指導者が育っていない

介護現場では、現場指導者の「経験と勘」に基づく指導が多く、指導方法が統一されていないことがよくあります。

高い実践能力を有していても、指導者としての大切な心構え「教えるために必要なこと」をきちんと教えられていないケースは少なくありません。そのため、しばしば指導する側とされる側で人間関係のトラブルが発生してしまうこともあります。

事業所において指導者が育っていないと、組織において継続的に人材が育たないことになり、中長期的な運営リスクにもなり得るのです。

介護の人材育成に役立つ取組や研修とは

介護の人材育成に役立つ取組や研修とは

人材育成にはどのような取組や研修があるのでしょう。ここでは、介護の人材育成で代表的な制度や研修を紹介します。

メンター制度

人間関係の改善や能力開発にメンター制度を導入している事業所は多くあります。メンター制度とは経験豊富で知識を持った先輩社員がメンターとなり、後輩職員のメンティに個別サポートを行いながら成長を促す制度です。このメンター制度にはメンタルヘルスケアの効果もあり、新人や若手だけではなく、様々な年齢の介護スタッフがもつ不安の解消や軽減が期待できます。

さらに、介護スタッフのモチベーションやスキル向上、リスクヘッジやキャリアアップにも効果的です。同じ場で学ぶ研修等でスタッフ間のコミュニケーションの活性化も期待でき、意欲を引き出すとともに互いを思いやる人間関係の構築が期待できます。

OJT研修

座学研修やセミナーとは異なるOJTとは、現場で行う教育で日常の業務を体験しながら学ぶことができる方法です。職員は自分にあった研修内容や学習ペースで教わり、学ぶことができるため、実用的な知識やスキルを効率的に身につけることができます。

指導者は通常業務を行いながらの教育であるため、時間的かつ心身的な負担が大きくなりやすい一方で、「間違いのない」「適切」な方法で指導することによってスキルアップさせられるというメリットがあります。

社内外研修

ばらつきが少なく、体系的に教育する方法として有効なのは、定期的な社内研修や勉強会です。研修会社が主催する有料セミナーや市区町村の行政が主催する研修、ホームヘルパー協議会等が主催する研修を活用するとよいでしょう。現在はZoomやYouTube配信など、イーランニングでの研修受講が容易になっています。

効果的な人材育成のための4つのステップ

効果的な人材育成のための4つのステップ

目的・目標を定める

まずは人材育成の目的と目標を定めることが重要です。理想の状態と現状のギャップを整理することで、必要な人材像や課題解決のための手段が見えてきます。

例えば、「ケアが標準化されている状態」を理想とし、現状は「ケアの標準化がはかられていない状態」だった場合、目的は「ケアの標準化」となります。そして、目的を達成するために「基本介護技術力をつける」「アセスメント力をつける」といった具体的な目標を設定することができます。

目的や目標の設定においては、介護現場で求められる基本的な知識やスキルはもちろん、施設や事業所の理念やビジョンを当てはめて考えることも大切です。理念やビジョン、目指すケアに必要なことを照らし合わせることで、それぞれの事業所にマッチした人材が育ち、組織力の強化に繋がるでしょう。

参考: 一般社団法人シルバーサービス振興会「介護事業者における体系的OJTの展開に関する調査研究事業報告書

計画を立てる

目的や目標を定めたならば、実施期間や実施内容をわかりやすく計画に落とし込みます。

ここで重要なのは、「指導のポイント」を具体的に記載しておくことです。具体的であればあるほど指導方法が標準化され、ばらつきを防ぐことができます。たとえば、「利用者の名前や身体状況・生活歴等を伝え、分からないことや疑問があれば説明する」、「ケアの手本を見せ、個々の状態に合わせた対応の留意点を説明する」などがそれにあたります。

現場配置前には座学や社内外の研修を組み、現場での業務が始まってからはメンター制度やOJTを活用するなど、上手に組み合わせた計画もよいでしょう。

評価基準を作る

公平性を担保するため、評価基準を設定しましょう。評価項目には基本的な介護技術の評価と利用者視点の評価を2大項目とし、そこに中項目や小項目、さらにはチェック項目を設定するとよいでしょう。

たとえば、基本的な介護技術を大項目とした場合、中項目を「食事介助」とし、小項目を「適切な食事介助ができている」とします。小項目に対するチェック項目は、「自力での摂食を促しつつ介助したか」、「同じ目線の高さで介助したか」、「咀嚼や飲み込みのタイミングを確認しながら介助したか」といったものが挙げられるでしょう。

共通のものさしを持つことによって、育成の標準化を図ることができます。評価基準が明確になっていないと曖昧な評価になったり、「指導者に嫌われたくない」「よく思われたい」といった心理に影響されて偏った評価になったりする恐れがあるので注意が必要です。

必要に応じて計画の見直しや改善を行う

人材育成計画は、職員毎のスキルや進捗状況など、必要に応じて計画を見直すことも重要です。定期的な面談などで評価基準をベースに「目標の達成度」を確認しましょう。評価基準に達成していない場合は指導者と職員が一緒になって、なぜ達成できなかったのか理由を考えます。理由が明確になれば、対処法を検討し、新たな目標と計画を立て、PDCAサイクルを回していきましょう。

人材育成を充実させて介護職の定着率アップを図ろう

人材育成を充実させて介護職の定着率アップを図ろう

人材育成は、職員一人ひとりにとって居心地の良い職場を整えることにつながり、人材定着率や採用率アップに有効な手段となりえます。今回の記事を参考に、ぜひ自社の人材育成に活用してください。

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