施設介護や居宅介護、介護業務におけるアセスメントとは、利用者に適切なサービスを提供するために欠かせない業務のひとつです。ケアマネジャーは利用者とそのご家族の悩みや課題を分析したうえで、解決するためのケアプランを作成することが大事です。また、アセスメントは厚生労働省の指定する「課題分析標準項目」をもとに実施する必要があります。
この記事ではアセスメントの実施方法や注意点、アセスメントシートの書き方まで徹底的に解説していきます。
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目次
施設介護や居宅介護、介護業務におけるアセスメントとは
「アセスメント」は英語の「assessment」を指し、「評価」や「分析」などの意味を持ちます。主観に左右されない客観的な評価や分析を指す言葉であることがポイントです。
介護現場で使われるアセスメントは、ケアプランや介護計画を作成する過程で実施される評価と分析を指します。利用者ごとに適切なケアプランや介護計画を作成するため、利用者家族からのヒアリングのほか、生活サイクルや周辺環境の確認など、情報収集をしたうえで評価を行います。
続いて、アセスメントの目的や実施するタイミングなど、基本情報を詳しく解説していきます。
アセスメントの目的
アセスメントは利用者に合ったケアプランや介護計画を作成し、利用者ごとに適切なサービスを提供するために非常に重要となります。情報が不足した状態での不適切なケアは、場合によって利用者の事故や苦情を招くおそれがあるためです。
たとえば身体の一部が麻痺している利用者が「出来る限り人の手を借りずに、自分で出来るようになりたい」という生活を望む場合、車いす上でのスタッフ主体の介護は、生活の質を下げたり、本人の意欲を削いだりするおそれがあります。心身の状態だけでなく、本人の生活歴からの性格や価値観なども含め、利用者の状況を客観的に評価・分析を行い、対策を考えることが重要です。
そのために事前のヒアリングなどの情報収集が必要となります。あらゆる側面から利用者の状態を分析することで、課題を正確に把握、分析することにもつながります。
アセスメントを実施する時期や対象
アセスメントは主にケアプランや介護計画を作成するときに実施されます。また、ケアプランや介護計画は利用者の心身状態に合わせ適宜見直しが必要なため、短期目標などの期間の変更時などだけでなく、日々の介護サービスの提供中にも随時アセスメントを行う必要があります。一般的にはケアプラン作成時にはケアマネジャーが、介護計画書作成時には生活相談員やサービス提供責任者がアセスメントを行います。
アセスメントの対象者は利用者だけでなく、そのご家族も含まれます。ほかにも友人・親戚や、通院している病院の主治医・看護師などもヒアリングの対象となります。また、ほかの介護サービスを利用している場合は、その施設や事業所の担当者も対象となるので覚えておきましょう。
看護アセスメントとの違い
看護でもアセスメントという言葉が用いられますが、施設介護や居宅介護、介護業務で行われるアセスメントとは意味合いが異なります。看護アセスメントとは、患者の看護を行う過程で実施されるものです。患者のQOL向上を目的に、看護計画を立てるために行われ、診察や検査結果、観察だけでなく、不安や不調に関する状態も分析して計画を立てます。
厚生労働省の課題分析標準項目について
厚生労働省では、利用者の課題を正確に把握するための手法として「課題分析標準項目」を定めています。「課題分析標準項目」は、「基本情報に関する項目」と「課題分析(アセスメント)に関する項目」に分かれており、全部で23項目あります。詳しい内容は以下にまとめました。
1 | 基本情報(受付、利用者等基本情報) |
---|---|
2 | 生活状況 |
3 | 利用者の被保険者情報 |
4 | 現在利用しているサービスの状況 |
5 | 障害老人の日常生活自立度 |
6 | 認知症である老人の日常生活自立度 |
7 | 主訴 |
8 | 認定情報 |
9 | 課題分析(アセスメント)理由 |
10 | 健康状態 | 既往歴や主傷病、痛みなど利用者本人の健康状態について |
---|---|---|
11 | ADL | 寝返り・起き上がり・移乗・歩行・着衣・入浴・排せつなどADLに関する項目 |
12 | IADL | 調理・掃除・買物・金銭管理・服薬状況などIADLに関する項目 |
13 | 認知 | 日常の意思決定を行うための認知能力に程度に関して |
14 | コミュニケーション能力 | 意思の伝達・視力・聴力などコミュニケーションに関する項目 |
15 | 社会との関わり | 社会的活動への参加意欲・社会との関わりの変化・喪失感や孤独感など |
16 | 排尿・排便 | 失禁の状況・排尿排せつ後の後始末・コントロール方法・頻度などについて |
17 | じょく瘡・皮膚の問題 | じょく瘡の程度・皮膚の清潔状況などに関して |
18 | 口腔衛生 | 歯・口腔内の状態や口腔衛生に関する項目 |
19 | 食事摂取 | 栄養・食事回数・水分量などについて |
20 | 問題行動 | 暴言暴行・徘徊・介護の抵抗・収集癖・火の不始末・不潔行為・異食行動などについて |
21 | 介護力 | 介護者の有無・介護者の介護意思・介護負担・主な介護者に関する情報などについて |
22 | 居住環境 | 住宅改修の必要性・危険個所などについて |
23 | 特別な状況 | 虐待・ターミナルケアなどに関する項目 |
上記の23項目をもとに情報収集を行い、利用者の全体像を正しく把握することが大切になります。
ケアプランや介護計画におけるアセスメントの実施方法とポイント
ここではアセスメントを実施するための事前確認やポイント、注意点について解説していきます。
事前確認を念入りに行う
利用者宅へ訪問してアセスメントを実施する前に、必ず事前に情報収集を行いましょう。いきなり利用者やご家族にヒアリングしても、警戒される場合もあり、適切な情報が集まらない場合があるためです。利用者とそのご家族の精神的負担を減らす意味でも、基本情報をあらかじめケアマネジャーなどから収集しておくことが大切です。
ケアマネジャーは主治医・看護師・地域包括支援センターなどに、施設や居宅介護サービス事業所はケアマネジャーに事前にヒアリングを行い、ご本人の情報をできるだけ多く、適切に集めるようにしてください。リハビリを行っている場合には、理学療法士などリハビリ専門職とも連携しましょう。
訪問マナーを押さえる
利用者のご自宅へ訪問するため、失礼のないように訪問マナーをしっかり押さえておきましょう。身だしなみや言葉遣いなど、失礼のない訪問マナーをこころがけましょう。相手に不快感を与えないよう接し、不信感を持たれない接遇を意識してみてください。
訪問時は事前にアポイントメントを取り、丁寧にご挨拶をしたあと、自身の役割や訪問の目的について説明しましょう。お菓子やお茶を勧められた際には、基本的に丁重にお断りします。断る際にも失礼にならないように、言葉選びにも気をつけてください。また短時間で完了できるように、事前に情報収集を行い、確認も兼ねてアセスメントを実施するようにしてください。
利用者の具体的な情報を得る
利用者に意向や心身状況に沿ったケアプランを作成するために、本人やそのご家族の要望を正しく理解、把握するようこころがけましょう。そのためには、不安やお困りごとや願いを引き出すことが必要です。ポイントは、収集した情報をもとに具体的な質問を行うことです。
「はい」や「いいえ」で答えられる質問だけでなく、「○○について、今どのような不安がありますか?」など具体的な回答が得られる問いかけを意識してみてください。
ここで利用者やそのご家族の要望を引き出すことで、質の高い適切なサービスへとつながっていきます。
アセスメントシートを活用する
アセスメントシートとは、アセスメントの内容をまとめるための帳票です。ひとつの帳票で、利用者の生活環境や心身状況などをひと通り把握できるため、ほかのスタッフとの情報共有やカンファレンスにも活用されます。利用者一人一人の介護方針や目標設定にも活用できるツールです。
詳しい書き方や様式については、次の章で説明していきます。
アセスメントシートの様式と書き方
アセスメントシートの様式は、主に以下の7種類があります。それぞれ様式に違いがあるので、利用者の状況に合わせて使いやすいものを選択しましょう。また、項目を満たせば、事業所で独自に作成することも可能です。
様式名 | 特長 |
---|---|
包括的自立支援プログラム | 要介護認定にかかわる「認定調査票」と連動しており、特に老人福祉施設での使用率が高い |
居宅サービス計画ガイドライン | エンパワメント支援が含まれており、居宅介護支援事業所で比較的多く使用されている |
MDS-HC方式 | 施設介護と居宅介護のどちらでも使用できるため、在宅と施設の両方でサービスを受けている利用者に適している |
R4 | ケアマネジメントシステム「R4」に対応しており、介護老人保健施設でよく使われている |
ケアマネジメント実践記録方式 | 分析項目が細かいため、アセスメントに時間を要するが、利用者のニーズをより詳しく把握できる |
日本介護福祉会方式 | 衣食住や、体・心の健康・家族関係・社会関係など7領域で分析。利用者の価値観や意欲などをより把握しやすい様式になっている |
日本訪問介護振興財団版方式 | アセスメントの内容を複数回記入できるので、経緯がわかりやすいのがメリット |
なかでも介護現場で多く使われている包括的自立支援プログラムのアセスメントシートについて、ここでは詳しく書き方を解説していきます。
包括的自立支援プログラムのアセスメントシートには、以下の7つのケアに関するチェック表があります。
1.食事、水分摂取等に関するケア | 食事の内容や介助の内容など |
---|---|
2.排泄に関するケア | 排せつ頻度や量、排せつ用具、おむつ交換について |
3.入浴、清拭等に関するケア | 洗髪や洗身の介助内容、使用用具などについて |
4.洗面、口腔清潔、整容、更衣に関するケア | 洗面や口腔衛生、耳掃除などの介助内容について |
5.基本動作介助、リハビリテーション等に関するケア | ベッドや車いすの移乗、言語療法、リハビリの内容について |
6.医療、健康に関するケア | 服薬介助や在宅酸素・吸引などのケアについて |
7.心理 ・社会面等に関するケア | 問題行動への対応やクラブ・レク活動中の援助、洗濯・買い物などの家事援助について |
チェック項目ごとに、提供しているケア内容に「○」を記入していきます。ご家族が行っているケアに関しては「家族」の欄に「○」を記入すると、ご家族の関わりを含め、現状行っているケアの全体像が把握できるようになります。
それぞれのチェック表には「健康上や生活上における課題」について記入する欄があります。課題に対し、適切に分析を行い、具体的なケア内容を記述してください。
最後に「予定」の欄に、これから行うケア内容をチェックしたら完了です。
正しいアセスメントで利用者に寄り添ったサービスを
アセスメントは、利用者ごとの介護サービスを提供するために欠かせない業務のひとつです。ケアマネジャーや生活相談員、サービス提供責任者は、アセスメントをしっかり行うことで、利用者やそのご家族の現状や要望を正しく把握でき、質の高いサービスの提供へとつなげることができます。
また、アセスメントシートは複数の様式がありますが、ケアマネジャーのアセスメントのために標準項目が23項目が定められています。介護計画を立てる際にも、ADLのみでなくIADLも含まれたものや加算取得の計画書の様式も異なりますので、その内容を理解することも非常に重要です。この記事を参考に事業者の状況や利用者に合ったアセスメントシートを選択し、利用者ごとに適切なケアプランや介護計画を立て、心身の状況や思いに沿ったケアが提供できる体制を整えてください。