介護者へのストレスマネジメントの考え方

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介護者へのストレスマネジメントの考え方

令和3年介護報酬改定より、全サービスにおいて「介護サービス事業者の適切なハラスメント対策を強化する観点から、全ての介護サービス事業者に、男女雇用機会均等法等におけるハラスメント対策に関する事業者の責務を踏まえつつ、ハラスメント対策を求めることとする」として、『ハラスメントの強化』も明示されました。

三菱総合研究所の調査レポート(2020年度老健事業)でも、「契約時に利用者・家族へハラスメントに関する説明をしていますか?」の質問に対し、ほとんどのサービスで「していない」が最も多くなっていました。居宅介護支援で56.9%にのぼったほか、特養では48.3%、小規模多機能では47.5%、訪問介護では45.7%を占めていました。また特定施設では必ず説明しているところが多い結果でした。

このようなストレスが悪影響を及ぼし、高齢者虐待につながるかもしれません。
『介護者へのストレスマネジメントの考え方』についてご紹介します。
皆さんの施設・事業所の運営改善にご活用頂ければ幸いです。

ストレスのない状態とある状態を知る

ストレスのない状態とある状態を知る

「ストレス」という言葉は「生きる」という言葉の同義語に近い言葉なので、「生きる」上でストレスにどう対処するかを知れば、負担なく生活が出来ます。

下の図の状態のようにストレスがある場合は、ボールの場に例えると丸いままです。
この状況では、自らの喜怒哀楽の感情コントロールが出来ます。

ストレスのない状態

しかしながらストレスがかかった状態は、丸いボールは圧力がかかり、いびつな形になり、
自らの感情コントロールも難しくなります。

ストレスのかかった状態

stresscare.comより引用

ストレスとは

  • 物質に外圧が加わり歪んだ状態になると、元の状態に戻ろうと反発する力が生まれ、歪みに反発する状態をストレスと呼びます。
  • 「ストレス」の言葉は医療や心理学の領域で使われるより以前から、工学の領域で使われていました。

* 物質(鋼)に反発力を上回る力を加え続ければ、鋼は中央部から2つに折れてしまうように、ストレスにより心身に負担がかかり、他者に影響を及ぼす恐れもあります。

ハンス・セリエのストレス学説とは

  • 生体が様々な刺激にさらされ続けると,やがて人間は疾病状態に陥ってしまう(鋼が外圧に耐え切れず折れるように)
  • 人間の諸器官が刺激に抵抗しようとする生体内部の状態=「ストレス状態」
    外的刺激=「ストレッサー」4.ラザルスのストレス理論とは
  • ストレス反応の個人差・・・同一のストレッサーを経験しても、個人によってストレッサーの受け止め方やストレス解消法が異なる
  • ストレス発生過程において、認知的評価(潜在的なストレッサーに対する個人の主観的な評価)とコーピング(ストレッサーに対する対処行動)が重要な概念
  • 認知的評価やコーピングは個人差がある

コーピングとは

コーピング=認知的評価に基づくストレッサーに対する対応方法や対処行動
*認知的評価
1次評価・・・無関係、無害(肯定的)ストレスフル(害、脅威、挑戦)
2次評価・・・コーピングの選択 
再評価

ストレッサー(ストレスを感じる事柄)を知る

  • 心理的・情動的刺激
  • 人間関係、仕事関係、不安、不快、生活事件
    (隣人とのもめ事、失恋、受験、緊張事等)等
  • 物理的刺激
    寒冷、騒音、放射線、自然災害、生活環境等
  • 科学的刺激
    酸素欠乏、薬物、ビタミン、毒物等
  • 生物学的刺激
    感染、出血、炎症、疼痛等身体的状態等

ストレスはなくならない

ストレスはなくならないので、どう向き合い、ストレスを解消していくのかを考える
ことが重要です。

ストレス・・・生物が外的や内的の刺激に適応していく過程そのものを概念化したもの
受け止め方や受け止める人や状況によって、反応が違い「快」にも「不快」にもなる。
自分自身のストレッサーやストレス反応の種類や強さを知る事が大切。
・・・嫌な事、好きな事、楽しい事、幸せを感じる事、支えになってくれる人や物

些細なストレスも注意が必要

些細なストレスも積み重なると大きなストレスに変貌し脅威に感じる可能性があります。
些細なストレスも感じ解消し溜めないようにするような職員への日頃の声がけも必要です。

  • 睡眠中もストレスはある(夢、寝返り……)
  • 「悲しみ」も「喜び」もその刺激に適応していく時の反応とプロセスは同様のものを示す(昇進、結婚、転勤、新居……)

ストレスの影響と時間

ストレスの影響は、短期間、長期間で異なりますが、短期間で解消できたものも、
それが蓄積されれば、長期間に渡り心身に影響を及ぼします。

  • 短期的・・・不安、怒り、抑うつ等情動的変化及び心拍数増加等生理的変化
  • 長期的
    認知・行動的変化・・・自信喪失、思考力低下、無気力、引きこもり等
    身体的変化・・・・自律神経系・内分泌系・免疫系機能低下等
    社会的機能低下・・・社会的不適応状態に陥る
    生活の質の低下、社会生活への障害等

ストレスと快・不快を知り、不快のストレスを回避しましょう

快ストレスは、生活において前向きな良い影響を及ぼしますが、不快ストレスは、生活において後ろ向きな悪影響を及ぼします。

下記の例も踏まえながら、職員には不快ストレスを感じないような生活・業務指導も必要です。ストレスマネジメントのご参考にされて下さい。

快ストレス・・・生体的に有益なストレス

自分を奮い立たせたり、勇気づけたり、元気にするような刺激とその状態
目標、夢、スポーツ、良い人間関係

不快ストレス・・・生体的に不利益なストレス

自分の体や心が苦しくなったり、嫌な気分になったり、やる気をなくしたりするような刺激とその状態
過労、悪い人間関係、不安、心配

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