介護施設・事業所での感染症対策と感染者発生時の対応方法

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新型コロナウイルスなどの感染症から職員と利用者を守るためにも、介護施設・事業所では感染症対策を実施することが求められます。実際にどのように対策を進めていくのか、また、感染者が発生したときにはどのような対応ができるのかについて見ていきましょう。

介護施設・事業所における感染症対策の基本指針

社会福祉施設、高齢者施設や介護サービス事業所などでは、新型コロナウイルス感染症などの感染対策について以下の3つのポイントを柱として進める必要があります。

  • 感染源の排除
  • 感染経路の遮断
  • 免疫力の向上

それぞれについて詳しく解説します。

感染源の排除

ウイルスは、目に見えません。どこから感染したのかを特定することは難しいので、徹底的に感染源を排除することが必要です。すでに感染している人の体液や粘膜にもウイルスが存在するので、介護者などが手で触れることで感染が広がる可能性があります。

感染源を排除するためには、汗を除く体液と粘膜面、正常ではない皮膚には直接触れないことを徹底しなくてはいけません。そして、安易に感染源になるものを触ることがないよう手袋を装着し、手洗いとアルコール消毒を徹底することも求められます。

感染経路の遮断

感染経路も目には見えません。ウイルスなどにもよりますが、空気感染や飛沫感染、接触感染などによって感染が広がっていくので、経路を遮断して感染拡大防止に努めることが大切です。

手指を消毒し、ケアをするときには使い捨てできるエプロンなどの防御衣を着用することはもちろん、ケアが終わったときには脱ぎ捨てるなど、徹底した対応をしなければなりません。病原体を持ち込まないだけではなく、持ち出さないことを意識して新型コロナウイルス感染症対策などを進めていきましょう。

免疫力の向上

施設の職員や利用者が免疫力を高めることで、感染しにくい状態にすることができます。たとえば、栄養状態を改善したり、適度な運動、十分な睡眠を心がけることでも、免疫力向上を期待できるでしょう。

予防接種を早く済ませることも抵抗力の向上につながります。特に基礎疾患がある場合は抵抗力が低いと考えられるので、医師に相談した上で、利用者に声をかけて早めの接種を促しましょう。また65歳以上の高齢者はインフルエンザの予防接種は、各自治体の助成を受けられますので、接種の際の注意事項を確認するようにしましょう。

介護現場において今すぐ行うべき8つの感染症対策

感染症にかからないためにも、感染防止対策は早め、早めで講じることが重要です。介護の現場において、今すぐできる以下の8つの対策について見ていきましょう。

  • 職員における手洗い、うがいの徹底
  • 利用者の手指も清潔に保つ
  • 手袋を利用者ごとに替える
  • 食事介助の際も手洗いを徹底
  • 排泄介助は使い捨て手袋とエプロンを使用する
  • 入浴介助は利用者の状態を見極めてから
  • 送迎時はマスク着用
  • 医療処置時も細心の注意を払う

職員における手洗い、うがいの徹底

職員が外部からウイルスなどを持ち込んだり、ほかの場所に運んだりする恐れがあるため、まずは職員が手洗いとうがいを徹底する必要があります。アルコールなどに対するアレルギーがない場合はエタノールを含む消毒液で手を消毒し、目に見える汚れがついているときは液体石鹸を使用して洗い流しましょう

何度も手洗いをすることでウイルスを持ち運ぶリスクを減らせますが、手が荒れてしまう可能性があります。ハンドクリームを個々で準備し、こまめに手に塗って手荒れを予防しましょう。

利用者の手指も清潔に保つ

利用者の手指を清潔に保つことも必要です。手洗いやうがいを呼びかけるだけではなく、積極的に介助して利用者が都度実施できるようにしましょう。

共同でタオルを使うと、タオルを媒介としてウイルスが広がることがあります。実地指導でも確認されますが、引き下げ式ペーパータオルなど、使い捨てできるものを使用して洗った手を拭くようにしましょう。

手袋を利用者ごとに替える

使い捨ての手袋を使い続けることで、感染源を広げる可能性があります。1つのケアに1つの手袋を徹底し、利用者ごとに手袋を使い捨てて衛生的に保つようにしましょう。

また、手袋を脱いだときには手洗いが必要です。指や爪の間も丁寧に洗い、使い捨てのペーパータオルなどでしっかりと水気を取りましょう。手袋のコストもありますが、それ以上に感染症を引き起こすリスクを減らすことが重要です。

食事介助の際も手洗いを徹底

食事を介助するときにも、手洗いが不可欠です。利用者ごとに使い捨て手袋を新しく替え、衛生的に介助するようにしましょう。

また、使用後の食器をすぐに洗うことも大切です。利用者が使用したコップや吸い飲みをすぐに洗い、清潔な状態にしておきましょう。

排泄介助は使い捨て手袋とエプロンを使用する

排泄介助は特に感染リスクが高いため、注意が必要です。使い捨て手袋と使い捨てエプロンを着用し、ほかの利用者に使いまわさないことを徹底しましょう。

おむつを交換する際も、使用済みのおむつはすぐにゴミ袋に入れ、放置した状態にしないようにしましょう。特におむつ交換車など複数の利用者が使用する場所における排泄介助は、衛生状態を保つのが難しくなることがあります。おむつを交換する台やその周りもこまめに除菌し、1ケア1手袋とエプロン着用を徹底して感染源を広げないようにしましょう。

入浴介助は利用者の状態を見極めてから

入浴介助は、利用者の状態を見極めてから実行しましょう。利用者に皮膚疾患があるときなどは医師に相談し、場合によっては入浴を中止し、清拭に切り替えましょう。

また、感染者の入浴介助を行う際は、ほかの利用者の最後に行うことも大切です。感染しているかどうかに関わらず、感染のリスクがあるときには浴室清掃を徹底しましょう。

送迎時はマスク着用

送迎に関わるすべての職員は、マスク着用を徹底します。また送迎の際は、車の窓を開けて換気するようにしましょう。

車内の手すりやシートをこまめに消毒することも大切です。利用者ごとに消毒すると時間がかかるので、普段よりも余裕を持ったスケジュールで送迎を行いましょう。

医療処置時も細心の注意を払う

医療処置の際にも感染対策が不可欠です。処置を行う看護職員は、飛沫感染や接触感染に注意しましょう。ケアごとに使い捨て手袋を替えること、器具を衛生的に保つことなどで感染リスクを下げることができます。

利用者に感染症が疑われるときの対応手順

利用者に発熱や発疹などの症状が表れ、感染症が疑われるときは次の手順で対応します。

  • 提携医や看護職員、かかりつけ医に報告
  • 介護施設や事業所の責任者に報告
  • 感染拡大の帽子
  • 行政への報告

提携医や看護職員、かかりつけ医に報告

入居者や利用者に感染の疑いがあるときは、施設の提携医や看護職員に報告します。夜間などの看護職員不在時には、利用者の主治医に報告しましょう。

介護施設や事業所の責任者に報告

提携医や介護職員が適切に利用者の状況を把握した後、関係者に事務連絡を行うとともに施設責任者に報告します。日頃から入居者や利用者の体調の変化が分かる記録を作成しておくと、早めに異変に気付くことができます

感染拡大の防止

感染拡大を防止するために、感染者が触れた可能性がある場所や感染者の周辺を消毒し、ゾーニング(感染場所を分ける)を実施しましょう。また感染者を隔離し、非感染者と接触しないように注意します。

行政への報告

同一感染症の感染者が10名以上あるいは半数以上出た介護保険事業者は、行政に報告することが厚生労働省によって義務付けられています。報告先は自治体の介護保険主管部局と保健所です。感染者が10名あるいは半数に満たない場合でも、今後感染が広がると施設責任者が判断したときは逐次報告しましょう。

感染者発生後も介護施設は原則として業務継続

介護サービスは利用者の生活において欠かせないものです。そのため、感染者が発生した後も原則として業務を継続します。万が一のときにも業務継続できるよう、平素から次の2点を実施しておきましょう。

  • 感染者が発生したときを想定してシミュレーション
  • 介護職員を確保する

感染者が発生したときを想定してシミュレーション

平素から感染者が発生したときを想定し、消毒や隔離などの手順をシミュレーションしておきます。手順を記載して職員に周知するだけではなく、実際に行動させてみることで感染発生時にもスムーズに動けるようになるでしょう。また、業務の優先順位を決めておくことも必要です。

介護職員を確保する

職員から感染者が発生することもあるため、介護職員が不足する可能性があります。また、平常時よりも消毒などの業務も増えると予想されるので、人手が足りなくなる恐れがあるでしょう。

緊急時であっても業務が継続できるように、介護職員を確保しておくことが必要です。都道府県などに応援を要請する場合に備えて、関係機関の連絡先を控えておき、スムーズに連絡を取れるようにしておきましょう。

職員のメンタルヘルスケアを実施しよう

介護の仕事は決して楽なものではありません。人手不足の事業所も多く、職員は大きな負担を抱えています。通常の業務だけでも大変な負担にもかかわらず、感染症対策まで行うとなると、職員にはさらに大きな負担がかかることになるでしょう。

職員のメンタルヘルスをケアするためにも、事業者はストレスチェックを定期的に行うなど、メンタルヘルスの問題に職員自身が早く気付けるようにサポートします。また、産業医などと協力し、職員のメンタルヘルスを良好に保つための仕組みを施設・事業所内で構築しましょう

産業医との協力が難しい場合には、施設・事業所外の医療機関や専門家と連携し、メンタルヘルスに問題を抱えたときにすぐに対応できる仕組みを構築します。大切な職員が心身ともに健康な状態で働くためにも、事業者が積極的にメンタルヘルスケアに対して取り組むことが大切です。

介護施設が一体となって感染症対策に取り組もう

新型コロナウイルスなどの感染症から職員や利用者を守るためにも、介護施設・事業所が一体となって感染症対策に取り組むことが大切です。職員だけに負担を強いないように、事業者自身が積極的に取り組むことが求められます。

また、感染者が発生したときにスムーズに対応できるよう、平素からシミュレーションしておくことも必要です。行動に優先順位を決め、すべての職員が主体的に行動できるようにしておきましょう。

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