介護現場における身体拘束の禁止(原因除去の工夫とフロー)

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介護現場における身体拘束の禁止(原因除去の工夫とフロー)

介護現場において虐待や身体拘束のような不適切ケアを行わないためには、日頃からケアの基礎知識を得て、例えば昼間に眠りがちな方は夜に落ち着かなくなることがありますので、日中の活動量を増やして頂くケアに務めるなどの配慮も必要になります。今回は『身体拘束の禁止(原因除去の工夫とフロー)』についてご紹介をさせて頂きます。皆様の適切なケアの徹底にお役に立てれば幸いです。

身体拘束をする前にすべきこと

身体拘束をする前にすべきこと

サービスを適切なタイミングで提供し、身体拘束「0」を実現しましょう。そのためにはお客様にとって本当に必要なサービスが提供されているかどうか?確認することが必要です。
初回のアセスメントをしっかり行い、本人状況や要望に合わせたケアプランを作ることも大切です。アセスメントは一度したら終わりではなく本人の状況の変化に合わせ、必要なときに行いましょう。

①アセスメント

②ケアプラン作成

③サービス提供の同意

④サービス提供

⑤再度アセスメント

⑥新たなケアプラン作成

身体拘束を誘発する原因除去の工夫

身体拘束を誘発する原因除去の工夫

徘徊時の対応(Y字拘束帯・車いすテーブルを使用する前に)

  • 一緒に歩いたり、疲れる前にお茶に誘う
  • 転倒しても骨折やけがをしないような環境を整える
  • スキンシップを図る等、他に注意をひくものや事を準備する
  • 夜間の見守り・お部屋への訪問回数をふやす
  • バランス感覚の向上や筋力アップのための段階的なリハビリプログラムを組む
  • 体にあった車いすやいすを使用する(クッション等をあて、痛みを防ぐ)
  • 日中はホールや食堂で過ごしてもらい見守りと介助スタッフを必要な場所に配置する

ベッドからの転落・転倒防止(ベッドを柵で囲まずに)

ベッドの高さを調節し、低くする(低床ベッドをレンタルにて使用する)

  • ベッド脇に転んでも骨折を防ぐように床マットを敷く
  • スキンシップを図ったり、見守りや声かけをふやす
  • 畳マットを敷き、その上にお布団を準備し休んでいただく
  • 立位・歩行補助をするために離床センサーを設置する(ベッドから出ないようにするためのセンサーではない。)
  • 昼夜逆転を防ぐために日中に運動や話しかけをふやす
  • プライバシーに気をつけた上で見守りがしやすい位置にベッドを配置する(ご家族の許可必要)

経管栄養や点滴のチューブを抜かないように、皮膚をかきむしらないように、おむつを外さないように(ミトンや手をひも等でしばらずに)

  • 口から食べられるよう嚥下訓練を行っていく
  • 食物を食べやすいようとろみをつけたり、柔らかく煮るなど、飲み込みがしやすい工夫を行う
  • 管やルートが利用者から見えないように工夫をする(布で隠したり、テープの位置をかえたり等)
  • 皮膚を常に清潔にし、内服薬やぬり薬の使用などによりかゆみを取り除く(入浴後は保湿クリームを用いる)
  • おむつに頼らない排泄を目指す(尿取パットのみにする)
  • おむつ以外での排泄が難しい場合には排泄パターンの分析を行い、排泄パターンに合わせたおむつ交換を行う
  • アクティビティへの参加や見学をうながし、気分転換を図る。
今すぐ使える「スピーチロック言い換え表」
「ちょっと待っててください」と職員側は軽い気持ちで伝えますが、利用者は「いつまで?」「なぜ?」「動いちゃダメ?」という気持ちが湧いてきます。本資料では、こういったスピーチロックとなる言葉の言い換えやスピーチロックを防ぐクッション言葉をまとめています。

緊急やむを得ない場合

緊急やむを得ない場合

身体拘束は下記の3要件をみたし、かつ、それらの要件の確認等の手続きがきわめて慎重に実施されているケースに限って認められます。

切迫性

利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い。
身体拘束の悪影響 < 生命・身体の危険

非代替性

身体拘束その他の行動制限を行う以外にかわりの介護方法がない。
※他に代替方法がないことを複数のスタッフで確認する必要あり

一時性

身体拘束その他の行動制限が一時的なものである。
本人の状態におうじ必要とされるもっとも短い拘束時間を想定する必要あり

◎1つでも欠けたら虐待にあたります。
また必要手続きを踏んでいない身体拘束も虐待にあたります。

身体拘束の際の義務業務・フロー

身体拘束の際の義務業務・フロー

身体拘束に関する記録が義務付けられています。

①緊急やむをえず身体拘束等を行う場合には、その時の様子・時間、利用者の心身の状況、緊急やむをえなかった理由の記録をしなければなりません。

②日々心身の状態をみまもり、拘束の中止や代替方法の再検討を行いましょう。またそのたびに記録に残しましょう。情報はケアスタッフ、施設全体、家族もしくは関係者の間で情報をつねに共有しましょう。

記録は施設において保存し、行政担当部局の指導監査が行われる際に提示できるようにしておきます。

身体拘束の実施フロー

身体拘束の実施フロー

身体拘束に関する検討カンファレンス記録

1週間ごとに心身状態等の観察をした結果を記載し、3要件にあてはまるかどうかについて必ず確認・再度検討を行いましょう。またカンファレンスも多職種で開催し、そのカンファレンスを実施した記録も介護支援経過記録と再検討記録に入力しましょう。
身体拘束の期間が1か月を超える時点で再度カンファレンスを実施し説明書同意書を作成し・ご家族の同意を再度得るようにしてください。
※3要件に当てはまらない場合は身体拘束を中止します。

緊急やむを得ない身体拘束に関する説明書同意書

入居者(利用者)本人や家族に対しての説明
ご利用者本人やご家族に対して、書式1「緊急やむを得ない身体拘束に関する説明書及び同意書」を用い、

  1. 個別の状況による拘束の必要な理由が3要件に該当するのか
  2. 身体拘束の方法(もっとも制限が少ない)
  3. 拘束の時間帯と拘束時間(もっとも短い)
  4. 拘束の期間(説明書同意書は最長でも一か月の有効期間)を明記しできる限り詳細に説明し、十分な理解を得るよう努めます。

⇒拘束が続くことないように身体拘束の排除方法を必ず検討してください。

緊急やむを得ない身体拘束に関する経過観察・再検討記録

身体拘束廃止・虐待防止委員会にて『身体拘束に関する検討カンファレンス記録』をもとに本当に身体拘束が3要件に当てはまるのかどうか、話し合いましょう。また記録に残しましょう。

※このカンファレンスを行うことなく、身体拘束を行うことは虐待となります。必ずカンファレンスを実施し、ケア記録とともにカンファレンス記録も残しましょう。

3要件に当てはまらない場合は身体拘束は禁止です。

平成31年2月 佐世保市長寿社会課「養介護施設従事者等向け 高齢者虐待防止・対応マニュアル」より

身体拘束の3要件に関するポイント

身体拘束の3要件に関するポイント

入居・サービス利用前に、施設や事業所としての身体拘束に対する考え方や取組みをご利用者やご家族に説明しましょう。
身体拘束をおこなう前には「緊急やむを得ない身体拘束に関する説明書及び同意書」を用いて、ご家族に説明をしましょう。ご家族から同意と署名が必要です。
身体拘束の方法・時間については、最も制限の少ない方法で、最も短い拘束時間を設定しましょう。
「3要件にあてはまらない」状態の場合は身体拘束はできません。

まとめ

まとめ

不適切なケアはいつか虐待へエスカレートすることがあります。不適切なケアの時点で自分や各施設や事業所で虐待の芽をつみましょう。
身体拘束に関する検討記録に「ご家族が希望したから身体拘束をします」という記載がありました。3要件に当てはまらない身体拘束は「虐待」です。ご家族にも3要件と身体拘束の関係性についてきちんとご説明し理解をえるようにしましょう。
また飲み込みやすいようにごはんにお味噌汁をかけたという報告書もありました。不適切なケアです。栄養士等と相談をしながら、きちんとご本人様の嚥下能力に応じたおかゆを準備してもらう等、適切なケアを努めましょう。
不適切なケアをしない努力が、虐待の芽をつむことにつながります。

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