令和3年介護報酬改定では、「自立支援・重度化防止の取組の推進」として、「リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取組の連携・強化」が明記されました。
今回は、「介護現場で必要な口腔ケア【実践】~効果と事前準備~」をご紹介させて頂きますので、皆様のサービスの質の向上にご活用頂ければ幸いです。
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目次
口腔ケアはお口の健康がもたらす効果
下記のサイクルが示すように、口内が清潔であればQOLの向上にもつながります。
逆に、口の中が汚れていると細菌が繁殖し、最悪の場合は「誤嚥性肺炎」を起こし死に至る場合があります。
口腔ケアをすると・・・
①虫歯・歯周病・口臭・誤嚥性肺炎を予防する
②清潔を保持する
③爽快感を得る
④食欲が増進する
⑤唾液分泌を促進し食べものが噛みやすくなる
⑥生活リズムが良くなる
⑦会話することに前向きになる
口腔ケアをしないと・・・
①虫歯が増え誤嚥性肺炎になりやすくなる
②口臭が強い・口臭が気になり人と話すことに後ろ向きになる
③口の中がベトベトし気持ち悪い
④唾液が少なく口が渇く
高齢者の口腔内は大きく分けて3つの特徴があり、それによって様々な障がいが起こってきます。
- 唾液の減少により起こる障がい
咀嚼力の低下、嚥下力の低下、口腔内細菌の増加、義歯の装着困難 - 歯の減少による起こる障がい
咀嚼力の低下、不明瞭な発音、容貌の変化 - 嚥下力の低下により起こる障がい
誤嚥性肺炎・窒息の危険、脱水・低栄養
高齢者の肺炎の原因は「口腔内細菌」がほとんど!
高齢者の肺炎は治っても寝たきりになる例がよくありますが、高齢者の肺炎の「原因菌」のほとんどは「口腔内細菌」です。
つまり、多くの高齢者は自分の口の中の細菌で肺炎を起こしていることになります。
脱水による細菌の繁殖
唾液は口の中を洗い流して清潔に保つ作用(自浄作用)があります。脱水になると口の中の唾液の量が少なくなります。
それにより、口の中が乾燥し自浄作用が弱まることで細菌の繁殖が起こります。さらに脱水では肺の中の痰に粘りが出て、外に吐き出しにくくなります。結果的に、口の中の細菌を増やし、肺では繁殖しやすい条件を作ることになります。
誤嚥性肺炎
食物や水(唾液)が誤って気管に入ることを「誤嚥」といいます。誤嚥をすると、食物や唾液と一緒に細菌も肺に流入し肺炎を引き起こすことがあり、これを「誤嚥性肺炎」といいます。
高齢者の多くが誤嚥性肺炎を起こしていますが、誤嚥性肺炎は命に関わることもあり、嚥下障がいを防ぐための有効な対策が重要です。
通常、唾液がのどに達すると嚥下反射で食道に送られ、誤って気管に入っても「むせ」や「せき」で外に出そうとします。
しかし、反射の鈍くなった高齢者の中には、「むせ」や「せき」が起こらず、本人に何の自覚もないまま、細菌の混じった唾液が気管から肺に入ってしまうことがあります。
肺炎防止のために、最近肺炎にかかったという例をみたら「脱水症の可能性はないか?」「口腔内に異常がないか?」といった可能性を瞬時に思い浮かべましょう。「肺炎再発予防」が重大なニーズとなることを忘れてはいけません。
唾液の重要性と口腔ケアの関係
口の中は菌でいっぱい
口の中には細菌が約300種もあり、抵抗力の低下した高齢者は細菌が増殖し蓄積しやすくなっています。
しかし、口の汚れは唾液の自浄作用によってある程度きれいになります。
唾液には重要な役割がある
【唾液の役割】
- 自浄作用がある
- 細菌で酸性になった口の中を中性に戻す
- 口臭を抑える
- 口の中の食べカスを洗い流す
- 食べものを混ぜて飲み込みやすくする
- 口の動きを滑らかにする
- 歯の表面を再生させる
- 味覚を感じさせて消化を助ける
唾液は口の中がきれいであればより多く分泌することができます。唾液の分泌を促すためにも口腔を清潔にし、口の機能を使うことを目指しましょう。
主に口や喉の渇きを訴える「口腔乾燥症(ドライマウス)」が近年注目をあつめていますが、この原因は義歯の不具合や薬の副作用、精神的ストレスなどが原因であると考えられています。
「老化だから」と諦めることなく、対応策を考えていくことで唾液の分泌を促すことができるのです。
口腔ケアの事前準備
口腔ケアを行う前に、下記のことを実践しましょう。
お口の状態をチェック
次の項目に当てはまるものがないかチェックしましょう。
- 痛み
- 腫れ
- 出血
- 発赤
- 食物
- 口臭
- 舌苔
- 潰瘍(皮膚や粘膜の一部がただれ崩れる)
- 口の中が乾燥している
- 入れ歯に対する不満がある
- 食欲がない
- 発音がはっきりしない
- 食事がうまく出来ない(むせる・飲み込めない)
異変を感じたら、まず歯科医や歯科衛生士に診てもらい、必要なケアや口・舌の運動の方法を指導してもらいましょう。
口腔ケア成功に向けて
口腔ケアのポイントは、身体的な安全と精神的な安楽を確保して実施することです。
お客様・ご家族への説明
- 口腔ケアの意義についてお客様・ご家族に説明し同意を得る
- お客様の生活習慣・健康上の問題点を考慮して、それぞれの状態に応じた方法を選択する
お客様の姿勢
- 起座位で実践する(ベッドに寝たままギャッジアップをした状態ではあごが上がり誤嚥しやすい状態になってしまう)
- 座ってやや前傾姿勢になって頂きましょう
※やむを得ず、側臥位で実践しなければならない場合は麻痺側を上にします(麻痺のある方は口腔内も麻痺しているため、麻痺側を下にしてしまうと、水や唾液を溜めておくことができない)。側臥位で実践することは、あくまでもイレギュラーです。できる限り座位で実践できる方法を医師と相談をしましょう。
雰囲気作り
- 常に声を掛け反応を見ながら、楽しい雰囲気作りを心掛ける
- 声掛けはタイミングが重要。本人が口を開けている最中に言葉でやり取りすることは、誤嚥の原因にもなるので避ける
- 返答方法はあらかじめ、合図を決めておく(例:「はい」ならば右手をあげてもらうなど)
口腔ケアを諦めない
むせや嚥下障がいの原因には、脳卒中後遺症や、神経系の疾患(末期のパーキンソン病など)に起因する麻痺によるものと、咀嚼を含む口と舌の動きが悪くなったものがありますが、口と舌の動きが悪くなった場合のケースが多いと言われています。
むせや嚥下障がいを防ぐためにも、口腔ケアをきちんと行い、口や舌の動きを活性化させましょう。
また、むせや嚥下障がいが起こってしまっても、諦めずに歯科医師などと連携し、入れ歯や歯茎の治療・口と舌の運動(口腔リハビリ)を行うよう、周知徹底してください。