特養とグループホームはどう違う?それぞれの特徴や働き方の違いを解説

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転職先として特別養護老人ホームを選ぶかグループホームにしようか迷った場合、自分に合った施設を選ぶには、情報収集をしっかりとしたうえで比較検討することが重要です。

この記事では、特別養護老人ホームとグループホームにはどのような違いがあるのか、それぞれの特徴や仕事内容、給料や待遇の違いを解説します。また、それぞれの施設にどのような人が向いているのかもご紹介しますので参考にしてみてください。

「特養」と「グループホーム」の違い

特別養護老人ホーム(特養)とグループホームでは、どのような違いがあるのでしょうか。特徴や仕事内容などを比べてみましょう。

【特別養護老人ホーム】
特徴:介護度の高い高齢者が多く、看取りまで行う施設もある
仕事内容:常に介護が必要な方へ身体介護を中心にだけでなく日常の生活の支援を行う
収入:平均給与が高く福利厚生も充実している場合が多い
向いている人:体力に自信がありスキルアップやキャリアップを望む人

【グループホーム】
特徴:認知症の診断を受けた要支援2~要介護5の高齢者が入居し、共同生活を行う。最大でも定員18人なので、一人ひとりに寄り添ったケアができる
仕事内容:通常の介護業務以外にも料理や洗濯などを一緒に行う
収入:施設や事業所により異なる
向いている人:見守りや気配りができコミュニケーション能力の高い人

特別養護老人ホーム(特養)とは

通称「特養」と呼ばれている特別養護老人ホームは、公的な介護保険施設のひとつです。主に地方自治体や社会福祉法人が運営しているため、介護職員の平均給与が高いと言われています。まずは特養から詳しく見ていきましょう。

特別養護老人ホームの特徴と入居条件

特養の特徴と入居条件は以下のとおりです。

【特養の特徴】

  • 食事や排泄・入浴などの介助だけではなく、看護師や理学療法士など医療従事者と協力し健康管理や身体機能の維持・回復のサポートも行う
  • 公的施設なので費用が安い
  • 介護度の高い人、単身者など在宅での生活が難しい人は優先的に入所できる
  • 入居期間に制限がなく看取りを行うこともある
  • 重度の認知症の入居者さんも多い

【特養の入居条件】

  • 原則として要介護3以上の認定を受けた65歳以上の高齢者
  • 常に介護が必要で自宅での自力生活が困難

特別養護老人ホームでの介護職の仕事内容

特養では、身体介護以外にも部屋の掃除や洗濯など日常生活のサポートも介護スタッフの仕事です。移乗・入浴介助やおむつ交換など身体介助の業務が多く、終末ケアや看取りを受け入れている施設もあります。そのため介護者の身体的・精神的な負担が大きくなる傾向にあります

特養には従来型とユニット型があります。従来型では仕事がルーティン化されている施設が多く、複数のスタッフが協力し合いながら行います。一方、ユニット型では1ユニットの利用者さんが少なく個別ケアを重視しているため、利用者さん一人ひとりに寄り添ったサービスを提供します。

【最新版】介護職員の平均給与と待遇

特養は公的施設のため民間の介護施設に比べ平均給与が高く、住宅手当や扶養手当など福利厚生や待遇面が充実している施設がほとんどです。厚生労働省の令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果による平成31年度と令和2年度の保有資格別平均給与は以下のとおりです。

保有資格令和2年平成31年度
介護職員初任者研修332,390円315,320円
実務者研修325,230円312,090円
介護福祉士361,890円343,710円
社会福祉士383,970円362,050円
介護支援専門員411,830円391,480円
資格なし301,760円290,570円

出典:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果
    第99表 介護職員の平均給与額等(月給・常勤の者),サービス種類別,保有資格別(処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)

特別養護老人ホームが向いている人

特養で働く場合、勤務体制は従来型・ユニット型のどちらも24時間のため夜勤や早出・遅出があります。平均6通りと他の施設に比べてシフト数が多く、体力に自信がある人が向いています。

また、施設のタイプ別で見てみると、職員のペースで仕事をしたいと考える方は従来型、一人ひとりに合わせ臨機応変に対応したい方であればユニット型が向いていると言えます。

【特養が向いている人】

  • 体力に自信がある人
  • 安定した収入や給料アップを望む人
  • キャリアアップやケアマネジャーを目指す人
  • 介護のスキルを高めたい人
  • 認知症ケアを身につけたい人

グループホームとは

次にグループホームについて詳しく見ていきましょう。グループホームの多くは、認知症高齢者が共同生活する入居型の介護老人福祉施設となります。運営は公益法人や民間企業となり、給与や待遇、勤務体制や仕事内容も事業所により違います。

グループホームの特徴と入居条件

グループホームの特徴と入居条件は以下のとおりです。

【グループホームの特徴】

  • 1ユニット5~9人、最大18人の少人数のケア環境
  • 食事や排泄・入浴などの介助以外にも、部屋の掃除や洗濯など日常生活のサポートも行う
  • 外出や買い物、園芸など利用者さんとスタッフが一緒に楽しめる時間が多い
  • 施設によっては看取りを行うこともある
  • 介護保険では地域密着型サービスに位置付け

【グループホームの入居条件】

  • 原則として要支援2以上の認定を受け認知症と診断を受けた高齢者
  • 施設のある市町村に住民票がある

グループホームでの介護職の仕事内容

グループホームでは、利用者さんが生活の主体者として暮らせるよう、日常生活の中で本人ができないことをサポートするのが仕事です。そのため、一緒に料理や洗濯などもします。

また、散歩は身体機能訓練、レクリエーションは介護・認知症予防として重要な仕事のひとつです。最近では認知症患者の看取りケアまで行う事業所も増えてきています。

有料老人ホームや他の老人ホームと比べて少人数のため、一人ひとりに寄り添った介護サービスを提供する分、ひとりの介護スタッフが受け持つ仕事の領域は幅広く、利用者さんに合わせた臨機応変な対応が求められます。

介護職員の平均給与と待遇

グループホームは民間企業でも運営できるため、事業所によって給与や待遇が大きく異なります。厚生労働省の令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果による平成31年度と令和2年度の保有資格別平均給与は以下のとおりです。

保有資格令和2年平成31年度
介護職員初任者研修277,150円263,800円
実務者研修278,920円264,990円
介護福祉士303,800円289,310円
社会福祉士335,120円312,470円
介護支援専門員349,740円329,330円
資格なし256,420円247,030円

出典:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果
    第99表 介護職員の平均給与額等(月給・常勤の者),サービス種類別,保有資格別(処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)

グループホームが向いている人

グループホームも勤務体制は特養と同じく夜勤や早出・遅出がありますが、シフト数は特養より少なく平均4.5通りとなります。また、夜勤人員配置基準では、1ユニット1名以上の介護スタッフ配置が原則です。

【グループホームが向いている人】

  • コミュニケーションをとるのが好きな人
  • 観察力が高く見守りや気配りができる人
  • 認知症ケアを身につけたい人
  • 幅広い介護業務に携わりたい人
  • 医学的なケアやリハビリの知識を学びたい人
  • 料理や掃除などの家事が好きな人

なお、特養もグループホームもシフト数が多く不規則な勤務体制が苦手な人であれば、「夜勤専従」という働き方もあります

自分に合う施設を選ぶ3つのポイント

介護職の転職で重要なのは自分に合った施設選びです。お給料が高いからと特養を選んでも、実際に働いてみると違うと感じることがあるかもしれません。ここでは、自分に合った施設選びのポイントをご紹介します。

自分が何を重視して転職するのか、転職の「軸」を考える

まずは自分が何を重視して転職するのか、転職の「軸」を決めることが重要です。そのためには「キャリアの棚卸」と「自己分析」をしっかりと行う必要があります。

自分の強みと弱み、仕事に対する価値観や介護観、3年後・5年後にどのようになっていたいのかが明確になれば、自分に合った施設のイメージが見えてくるでしょう。また、自己分析ができていれば、履歴書や面接でも自己アピールが正しくできるようになるはずです。

しっかり情報収集し、比較検討する

自分に合った施設を見つけるためには、しっかりと情報収集したうえで比較検討をすることが大切です。情報収集ではSNSや口コミサイト、周りの人の評判なども参考にすると良いでしょう。

どのような介護サービスを提供しているのか、入居者数や職員数、常に求人募集をしていないかなどもチェックします。とくに以下の項目を洗い出し、しっかりと比較検討すると入社後のミスマッチを減らすことができます。

  • 給料の額、諸手当、サービス残業の有無
  • 福利厚生や年次休暇の日数、具体的な勤務体制、残業時間数
  • 研修会参加やスキルアップへのサポートなどの人材育成体制
  • 職員の構成や夜勤体制、職場の雰囲気などの働きやすさ

求人票では分からないことは直接確認する

インターネットの普及により情報は集めやすくなっていますが、やはりそれだけでは分からないこともあります。求人票の情報だけでは見えない部分は直接確認することが大切です。施設により理念も介護のポイントも異なります。

何か疑問に感じることがあれば、直接質問して確認しましょう。また施設見学を希望すればに応じてくれる施設もあります。施設を見学させてもらう際は以下のような点を確認しましょう。

  • 対応してくれた職員の雰囲気や態度
  • 入居者さんの表情や身のまわり
  • 施設の雰囲気
  • 掃除や整理整頓が行き届いているか
  • 介護スタッフの配置人数や勤続年数

まとめ

特養とグループホームの違いについてご紹介しました。介護職員にとって、特養もグループホームも24時間体制で利用者さんをサポートするという非常にやりがいのある仕事です。

転職してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、事前の情報収集をしっかりと行い、それぞれの特徴を知って転職先を選びましょう。

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