特養と老健どっちが働きやすい?施設を選ぶ3つのポイント

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

介護の仕事を探して求人サイトなどを見ていると、特別養護老人ホームや老人保健施設といった施設形態を見かけることが多いと思います。

同じ24時間の介護が必要な施設であっても、施設の目的が異なり、働き方も違ってきます。

本記事では、この「特別養護老人ホーム(特養)」と「介護老人保健施設(老健)」の施設の特徴や仕事内容、お給料や働くメリット・デメリット、どんな人が向いているのかを比較し解説します。

入職後のミスマッチを防ぐための自分に合った施設選びのポイントについてもお伝えしますので、転職活動中の方、これから転職活動を始めようという方はぜひ参考にしてください。

「特養」と「老健」の違い

まずは特養と老健の違いを比べてみましょう。

特養老健
特徴介護度が高い方に日常生活での身体介助サービスを提供、看取りまで行っている在宅復帰を目指し医療ケアやリハビリをメインに介護サービスを提供している
利用者さんの条件要介護度3~5で自宅での介護が困難であること原則65歳以上で、要介護1以上であること
収入介護施設のなかでもっとも給与が高い特養に次いで給与が高い
向いている人介護士としての介護時術を磨きたい人、身体介助がメインのため体力がある人たくさんの人とコミュニケーションをとるのが好きで、状況に応じ臨機応変な対応ができる人

特別養護老人ホーム(特養)とは

特養とは公的な入居型の介護老人福祉施設のことで、社会福祉法人や地方自治体が運営しています。入所者さんは原則として要介護3以上の認定を受けた高齢者の方です。家庭の事情なども考慮し、入所判定委員会が点数化したうえで優先順位が高い方から入居します。

特別養護老人ホームの特徴

入居条件は、要介護3~5に認定されていることが原則です。身の回りのことができない、理解力が低下しているなど在宅での生活が困難で、常時介護が必要な高齢者の方が入居しています。

また、特養では終末ケアや看取りを行う点も大きな特徴です。入居費用が比較的安いため入居希望者が多く、地域によっては順番待ちというところもあるようです。

特別養護老人ホームで働く介護職の仕事内容

特養の主な仕事内容は、食事や排泄・入浴の身体介助を中心に、健康管理や生活支援、緊急時の対応などがあります。レクリエーションやイベントを企画して、楽しく生活してもらうのも特養で働く介護職員の仕事のひとつです。

従来型では、大勢のスタッフで大勢の利用者さんをまとめてケアします。一方、ユニット型は1ユニット10人以下の利用者さんを限られたスタッフで担当するため、細やかなケアができる反面、介護スタッフ1人あたりの負担は大きくなります。

介護職員の平均給与

平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、特養で働く介護職員の平均給与は、どの資格でも介護職全体の平均より高くなっています。
常勤の場合の月給は、無資格者でも約29万円、介護福祉士になると約34万円、介護支援専門員は約38万円となっています。

入居者さんの人数別で見てみると、30人以下の施設では平均給与が約32万円であるのに対し、101人以上の施設では約35万円と3万円以上高くなっています。

特別養護老人ホームで働くメリット・デメリット

特養で働くメリット

  • 介護度の高い人が多いため、身体介護や認知症の方のケアなど介護技術の向上につながる
  • 経験を積んだベテラン職員も多く、知識やスキルを自然と習得できる
  • 終末ケアで終の棲家として利用する方も多く、長期的な介護ができる

特養で働くデメリット

  • 介護度の高い利用者さんが多いため、身体的な負担が大きくなる
  • 看取りも行うため、介護経験が少ない人にとっては精神的な負担がある
  • 大規模施設の場合はケアが機械的・画一的になりやすく、ルーティンワークが多い

特別養護老人ホームが向いている人

特養は身体介護がメインとなるため、まず体力に自信があることが基本となります。看取りもあるため、精神的にもタフである人に向いているでしょう。介護技術を身につけたい、認知症ケアを身につけたいという人にもおすすめの職場です。
また、利用者さんの生活を24時間365日支援しますので、長期的に深く関わることができ、じっくりと向き合えるケアを目指す人にも向いています。

介護老人保健施設(老健)とは

老健とは、医療的なケアやリハビリを必要とする高齢者の方が、在宅復帰を目標に入所する介護老人保健施設のことです。医療法人や社会福祉法人が運営していることが多く、医療を提供するため医師の常駐が義務付けられています。

介護老人保健施設の特徴

在宅復帰を目標としているため、3カ月ごとにケアプランを見直し、退所するか継続するかの評価が行われるのが老健の特徴です。

65歳以上の高齢者の方であれば要介護度1から利用できるため、元気な方の利用も比較的多くなります。医療ケアとリハビリがサービスの中心で、週2回以上のリハビリを受けなければなりません。

介護老人保健施設で働く介護職の仕事内容

老健では医療ケアやリハビリがメインのため、医師や看護師、理学療法士なども勤務しています。その中で介護職の仕事は利用者さんの状態に合わせた、食事や入浴、排泄などの身体介助や生活援助を行うことです。

老健は病院と老人ホームの中間的な存在となり、介護がメインの特養に比べると要介護度が低い方も多く、身体的な負担は少ない傾向にあります。夜勤では多くの施設で看護師が配置されているので、緊急時には支持を仰ぐことができます。

介護職員の平均給与

老健で働く介護職員の平均月給は、特養より低いものの他の介護施設に比べると高くなっています。夜勤手当がつくかつかないかの差による違いが大きいようですが、無資格の場合は約27万円、介護福祉士であれば約33万円、介護支援専門員は約37万円となっています。

入居者人数別では、60人以下の老健の平均給与が約31万円、101人以上では約33万円となっています。

介護老人保健施設で働くメリット・デメリット

老健で働くメリット

  • 医療ケアやリハビリなどの専門知識や技術を学べる
  • 在宅復帰が目標なので、利用者さんがリハビリやケアで良くなっていく姿を間近で見ることができる
  • 特養に比べ介護度の低い利用者さんが多いため、身体的な負担は比較的軽い
  • 夜勤の際も医師や看護職員が常駐しているため、緊急時でも安心できる

老健で働くデメリット

  • 医療法人が運営者であるケースが多いため、施設によっては医師や看護師など医療職の発言権が強い
  • 3ケ月で退所する利用者さんが多く、入れ替わりが激しいため人によっては負担になることもある

介護老人保健施設が向いている人

老健は利用者さんの入れ替わりが多いため、多くの人とコミュニケーションをとるのが好きで、状況に応じた判断ができ、自発的に行動できる人が向いています。

また、医学・看護やリハビリの知識と技術を学び、介護士としてのスキルアップを目指す人にもおすすめの職場です。老健は介護士だけでなく、医師や看護師、理学療法士など医療従事者と一緒に働くため、他職種の人の考え方や視点を受け入れられない人には難しい職場でもあります。

自分に合う施設を選ぶ3つのポイント 

メリット・デメリット、特徴などそれぞれに違いがあり、特養と老健のどちらが働きやすいのか迷ってしまった方もいるのではないでしょうか。そこで、自分にとって合う施設を選ぶポイントを3つご紹介します。

自分が何を重視して転職するのか、転職の「軸」を考える

1つ目のポイントは、転職の「軸」を考えるということです。安易に転職先を決めてしまい後悔する人は少なくありません。そうならないために大切なのが、自分が何を重視して転職するのか、「軸」となるものをしっかりと考えることです。

特養と老健を比較する場合、大きな軸は「医療ケアやリハビリなどの専門知識や技術を学びたいか」それとも、「身体介護や認知症のスキルを高めたいか」この2つになるでしょう。

その上で、これまでどのような仕事をしてきたかを思い起こし、すべての職務経歴を書き出してみます。そこから自分の強みや弱み、仕事に対する価値観を明確にしていきます。この作業を行うことで自分がどのような介護職員なのかを知ることができ、3年後、5年後に自分がどうなっていたいのかを考えることで、どちらを選択すべきかが自ずと見えてきます。

しっかり情報収集し、比較検討する

2つ目のポイントは、情報収集をしっかりと行い比較検討するということです。

老健では医療職との連携が密になりますが、施設によっては医療職の発言権が強かったり、利用者さんの生活そのものではなく、病気や怪我の治療に重きを置いていたりする場合もあります。介護職として、ご自身の希望する働き方や考え方とズレがないか、事前に確認しておくと良いでしょう。

その他にも、利用者さんや職員の人数も働きやすいかどうかの違いに影響します。
施設のホームページや求人情報だけでなく、SNSや口コミサイト、身近な人からの評判など、良い面も悪い面も把握しておくことが重要です。そのうえで、給料面や福利厚生などの待遇、スキルアップへのサポートの有無、職員構成や配置、夜勤体制、職場の雰囲気などを比較検討しましょう。

求人票では分からないことは直接確認する

3つ目のポイントは、求人票では分からないことは直接確認するということです。通常、どの施設でも希望すれば見学することができます。実際に介護現場を見ることで、職場の人間関係やどのような利用者さんがいるのかも分かります。

また、「一人一人と向き合いながら介護スキルを高めたいと考えて特養を選んだのに、実際はあまりの忙しさに、流れ作業でケアを行うだけだった」、「老健で医療と介護の連携について学びたいと考えていたのに、介護職は指示されたことだけやっておけばいいという現場だった」など、自分の思っていた環境ではなかったという場合もあります。

気になる点や不安なことがあれば曖昧にせず、ミスマッチを防ぐためにも入職前に尋ねておきましょう。業務内容や雇用条件が事前に聞いていたのと違うという事態を避けるためにも、内定が決まったら「労働条件通知書」をもらっておくことをおすすめします。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加