高齢者施設のひとつに有料老人ホームがあります。看護師は、有料老人ホームにおいてどのような仕事を担当するのでしょうか。
仕事内容や向いている人の特徴、有料老人ホームで働くやりがい、給料について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
有料老人ホームとは多様な種類のある民間施設
有料老人ホームとは高齢者が入所する施設で、基本的には民間企業が運営しています。「介護付き」「住宅型」「健康型」と3つの類型があり、大きく分けると「自立して生活できる方向け」「介護が必要な方向け」と2つのタイプとなり、フロアや棟を別にして両方を運営しているところもあります。施設によって受け入れ基準が異なるので、事前に確認しておきましょう。
ユニットケアや24時間看護など、それぞれの特徴を打ち出している有料老人ホームも少なくありません。24時間看護対応としている施設の看護師は原則として夜勤が求められるため、夜勤を希望しない人は夜勤なしの働き方が可能なのかも確認してください。
なお、有料老人ホームの中でも特定施設入居者生活介護に認定された「介護付き有料老人ホーム」のみ看護師の人員配置基準が定められ、要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人の配置が要件となっています。
一方「住宅型有料老人ホーム」では、そこのスタッフが介護サービスを提供するのではなく、入居者が個別に契約した訪問介護などの在宅サービス事業所から介護サービスが提供されるしくみとなっています。そのため住宅型有料老人ホームの看護師は、そこと契約している訪問看護ステーションなどの在宅サービスに勤務することになります。
有料老人ホームにおける看護師の仕事内容
有料老人ホームでは、介護付きかそれ以外かによって看護師の仕事内容や立場が異なります。ここでは介護付き有料老人ホームでの看護師の仕事を紹介します。介護付き有料老人ホームでも「自立の方が多い」「重介護度の方が多い」「医療依存度の高い方が多い」などの入居者の特徴によって、求められる看護師の役割は違ってきます。
健康管理
有料老人ホームにおける入居者さんの健康管理を行います。毎朝、体温や血圧、顔色などを確認して入居者さんに変化がないかをチェックします。持病や医療行為の有無、認知症の有無などで観察するチェック項目が変わってきます。お元気な方については、介護予防の観点からの健康チェックも必要となるでしょう。
医療行為
生活において医療行為を必要とする方に適切な処置を行います。インシュリン注射、褥瘡の処置、胃ろうや腸ろう、鼻腔などの経管栄養、痰の吸引、在宅酸素、人工肛門(ストーマ)・尿カテーテル、中心静脈栄養(IVH)、人工呼吸器などがありますが、受け入れている医療行為は看護師の配置などで施設によって違いがあります。
病院への同行、急変時の対応
入居者さんの状態が急変したときは、応急処置を行って医療機関と連携をとることも看護師の重要な役割です。たとえば、痰が詰まったときなどは気管内吸引等の医療行為を実施することがあります。
また、入院や外来受診が必要な場合はご家族と一緒か、あるいはご家族の代わりに看護師が病院へ同行することもあります。
服薬管理
服薬が必要な入居者さんに対しては、服薬管理も行います。服薬のタイミングや量を間違えないように慎重に配薬・与薬を行います。
また、入居者さんの状態によっては、かかりつけ医に薬剤に関する報告をすることもあります。特に初めて服した薬については、その後の体調変化などから効果や副作用について正確に報告することが大切です。入居者さんの状態を細かく観察することで、最適な薬剤が処方されるようにサポートしましょう。
食事や入浴などの生活の介護
介護付きの有料老人ホームでは、介護職員と協力して入居者さんの日常生活における介護を行います。嚥下障害のある入居者さんについては、介護士ではなく看護師が誤嚥防止を心掛けつつ食事の介助を行う場合もあります。
レクリエーション
有料老人ホームではそのほかの介護施設と同様に、定期的にレクリエーションを実施しています。レクリエーションの際には多くの入居者さんが集まるため、看護師も参加して入居者さんたちが楽しめるようにサポートします。
ほかのスタッフとの連携
有料老人ホームで働くスタッフは、看護師や准看護師だけではありません。介護職員や理学療法士などのスタッフや、入居者さんのかかりつけ医やご家族などの施設関係者以外も関わります。
看護師は日々入居者さんの健康観察を行っているため、最も入居者さんの健康状態を把握しているスタッフです。看護職員はもとより、ほかのスタッフとも情報を共有して利用者さんが生活しやすいように工夫していきます。
利用者さんのご家族とのコミュニケーション
看護師は、離れて暮らす利用者さんのご家族に利用者さんの健康状態について詳しい説明をする場合もあります。看護師が忙しそうで話しかけづらいと感じているご家族もいるので、ご家族の思いを深くくみ取って適切かつ積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。
看取り
介護付き有料老人ホームは「終の棲家(すみか)」として入居する方が多く、死亡による契約終了が過半数を超えています。そのうち最期を居室で迎える方は54.1%、病院等で迎える方は42.1%という統計があり、特に人員配置の手厚い施設ほど看取り率が高い傾向にあります。看取り加算を取り、看取りに力を入れている施設では、看護師は医師と連携して、多職種のスタッフ・入居者さん・ご家族を巻き込んだチームで看取り計画を作り、陣頭指揮を取って入居さんの最期に寄り添う役割があります。
有料老人ホームで働く看護師のやりがいとは?
有料老人ホームには基本的に急性期の方がいないので、一人ひとりゆっくりと時間をかけて関わることができます。病院看護師の仕事では患者さんの生活のごく一部にしか関われないため、看護を十分に行えないというジレンマを感じることがありますが、有料老人ホームならば患者さんの生活全体に関わる看護が可能です。
また、看護師は自分一人だけということも少なくないので、責任を持った自主的な看護を実施できる点もやりがいにつながるでしょう。看護師判断で行える行為の幅が広いので、主体的な看護を実施したい人にも適した職場といえます。
有料老人ホームに向いている看護師の特徴
職場によって求められる看護師像が異なります。ぜひ満たしておきたい3つの特徴を紹介します。
コミュニケーションスキルの高い人
医療や看護を行うよりも、入居者さんとのコミュニケーションの時間が長いことが有料老人ホームにおける仕事の特徴です。特に自立した方が多い有料老人ホームの入居者さんは健康的な生活を楽しんでいるので、看護師にも生活をともに楽しむためのスタッフ的な役割が求められます。
また、入居金や月額費用が高い有料老人ホームには富裕層の方や社会的立場の高い方が入居していますので、それに合わせたコミュニケーションやおもてなしの視点も必要となります。そのため、いろいろな背景を持つ高齢者の方とコミュニケーションを取ることが得意な人や好きな人に適した職場といえるでしょう。
チームケアに関心が高い人
有料老人ホームでは、介護職員やリハビリ専門職などの看護師以外のスタッフや施設外の医師とも連携して入居者さんのサポートを行います。チームケアに関心が高い人の転職先としても検討できます。
落ち着きのある人
有料老人ホームでは基本的に急性期の方がいないため、時間に追われることなく看護や介護を実施できます。時間をかけて入居者さんと関わっていきたい方にも適した職場です。
看護師がせかせかした態度で看護を実施していると、入居者さんはイライラしてしまうかもしれません。入居者さんが心穏やかに暮らすためにも、落ち着きのある看護師がスタッフとして望ましいといえます。
有料老人ホームで働く看護師の給料はどのくらい?
有料老人ホームにおける看護師の給料は、夜勤の有無によって大きく変わります。24時間看護を実施している施設で夜勤ありで働く場合には、450~550万円程度の年収になるでしょう。一方、夜勤なしの場合は350~500万円程度です。また、看護師経験の長さが基本給に反映されることもあるので、事前にチェックしておきましょう。
常勤看護師ではなく、パートや派遣看護師として働くことが可能な有料老人ホームもあります。家事や育児との両立を考えている人は、自分に合った働き方ができる施設を選びましょう。
経験を活かして有料老人ホームで働くのも選択肢の一つ!
高齢者とじっくりと向き合いたい人にとって、有料老人ホームは適した転職先のひとつです。自身の適性とも照らし合わせて、自分に合う転職先がどうか吟味してみましょう。
また、在宅で療養している高齢者の看護を希望する人には、訪問看護師として働くこともできます。訪問看護ステーションによって働き方が異なるので、事前に確認しておきましょう。