「ハローワークで介護の資格を取れるって本当?」という疑問を持っていませんか?結論からいうと、ハローワークで介護の資格を取得することは可能です。しかも、費用は一切かかりません。
この記事では、これから介護の仕事をしたいと考えている人や、すでに介護の仕事をしていてこれからキャリアアップを考えている人に向けて、ハローワークで介護資格の講座を受ける際の内容や費用、受講までの流れを解説します。
目次
無料で受けられるハローワークの介護資格講座とは
施設では「介護士さん」と呼ばれる介護の仕事ですが、必ず資格が必要というわけではありません。とはいえ、資格を得る過程で必要なスキルを身につけておくと、転職においてとても有利に働きます。
ハローワークでは、介護資格を無料で取得できる機会を提供しています。それは、失業保険の受給者を対象にした「公共職業訓練」と、受給資格のない方を対象にした「求職者支援訓練」の2つの制度です。
どちらも無料で受講することができます。それぞれの特徴を以下に解説します。
公共職業訓練で介護資格を取得する
公共職業訓練は、失業保険を受給できる求職者で、主にフルタイム勤務やパートタイムでも週20時間以上勤務している方を対象としています。退職理由が「自己都合」であれば過去2年間で1年以上の被保険者期間があること、「会社都合」であれば、過去1年間で半年以上の被保険者期間があることが条件です。
所要の訓練を受けることによって、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修(介護職員実務者研修とも言います)、介護福祉士の資格を得ることができます。
求職者支援訓練で介護資格を取得する
求職者支援訓練は、失業保険を受給できない求職者で、主に短期派遣や正社員として働いていたものの30日以内で辞めてしまった方や、週20時間に満たないパートタイムなど非正規雇用で働いていた方が対象となります。ほかに、再就職できずに失業保険の支給が終了した方、就職が決まらないまま学校を卒業した方も対象です。
基本的には、介護職員初任者研修だけを受講できます。また、働けない期間の生活を保障するために、支給条件を満たせば月額10万円の職業訓練給付金を受けられます。
公共職業訓練 | 求職者支援訓練 | |
対象 | ハローワークの求職者主に雇用保険受給者・次の両方に当てはまる雇用条件で働いていた方 ・所定労働時間が週20時間以上の方・就労希望期間が30日以上の方 | ハローワークの求職者 主に雇用保険を受給できない方 ・パートタイムなど非正規雇用で働いていた方・個人事業主(フリーランス)・就職が決まらないまま学校を卒業した方 等 |
訓練期間 | 3ヶ月〜2年 | 2ヶ月〜6ヶ月 |
コース | 介護福祉士の資格取得のための訓練、介護職員初任者研修、実務者研修などの職業訓練を無料で受講できます | 介護職員初任者研修、実務者研修などを含む職業訓練を無料で受講できます |
手当 | ・失業手当・受講手当(1日500円×最大40日分)・通所手当(実費、上限あり)・寄宿手当(月額10,700円) | ・職業訓練受講手当・通所手当(実費、上限あり)・寄宿手当 |
それぞれ支給要件を満たす必要があります。詳細は厚生労働省のサイトをご確認ください
ハローワークで介護資格を取得するメリットとデメリット
ハローワークを活用して介護資格を取得しようと思い立ったら、あとになって後悔しないためにもメリットとデメリットを事前にチェックしておきましょう。
介護資格をハローワークで取得するメリット
ローワークの職業訓練を活用する最大のメリットは、「費用」にあるといえるでしょう。受講料が一切かからず、手当や給付金などをもらえたりする可能性があることは十分なメリットです。
受講料がほぼ無料で受けられる
民間のスクールで講座を受ける場合、初任者研修で約8万円、実務者研修を加えると約15万~20万円の費用がかかります。さらに、介護福祉士を目指すことになると、資格を取得するまでに2年間で200万円以上の費用がかかることになります。
ハローワークの職業訓練を活用すればこれらの費用がかからず、必要なのはテキストにかかる実費だけです。ほとんど経費を必要とすることなく資格を取得できるのは、大きなメリットといえるでしょう。
受講手当が支給される
公共職業訓練の場合、無料で資格が取得できる点に加え1日500円(最大40日分)の受講手当が支給されます。その他にも必要に応じて通所手等が支給される場合もあり、経済的な不安を軽減できるのはメリットの一つだと言えるでしょう。
月額10万の給付金を受け取ることができる
失業保険の受給資格がない人を対象として、本人の収入や世帯収入、資産などの一定要件を満たせば、職業訓練受講給付金の10万円が月額で支給されます。支給要件は以下のとおりです。
- 本人の収入が月8万円以下である
- 世帯収入が月25万円以下である
- 貯金や株など世帯の金融資産が300万円以下である
- すべての訓練実施日に出席している(やむを得ない事情があった場合は8割以上の出席)
- 前回の受給から6年以上経過していること
条件は非常に厳しいものですが、給付を受けることができれば資格取得までの出費を大きく抑えることができます。
雇用保険受給期間の延長・前倒しが可能である
雇用保険の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間で、給付日数は年齢や雇用保険被保険者期間、退職理由によって90日~360日と幅があります。職業訓練に通った場合は決められた給付日数を延長することが可能です。
たとえば、職業訓練の修了までに200日間かかる場合、90日間の給付日数を200日まで伸ばすことが可能です。また、通常では給付までに3ヶ月の制限期間がありますが、公共職業訓練を利用すると入校日から受給できるなど、前倒しして雇用保険を受け取ることができるのも大きなメリットです。
就職斡旋を受けることができる
ハローワークは、就職支援として職業を紹介する役割を担っています。その人にあった介護事業所を探し、履歴書や職務経歴書の添削や求人票の見方などのアドバイスもしてくれるため、介護業界が初めてという方にとって心強い味方といえるでしょう。
ハローワークで取得するデメリット
ハローワークでの資格取得はメリットばかりのように感じますが、もちろんデメリットもあります。
受講ができない可能性がある
地域によっては応募者があまりに少なくて希望する講座が開講されない場合があります。一方で、実務者研修など人気のあるコースは定員の何倍もの応募者数があり、募集の選考に漏れてしまうケースもあります。
受講者の選考には、面接と筆記試験が行われます。筆記試験では一般常識と中学生レベルの問題が出題され、面接では資格を取りたい理由や就職への熱意が問われるでしょう。
軽い気持ちで受けずに、きちんと準備をしてから挑戦することをおすすめします。
受講できるまで時間がかかる
ハローワークの介護資格取得講座は、地域によって年間の開催予定日と回数にバラツキがあるため、いつでも受講できるとは限りません。民間スクールでは最短1ヶ月で取れる資格も、ハローワークでは「申し込み」から「選考」、そして「開講日」に至るまで時間がかかります。
選考試験を受けるためには準備期間も必要です。それなりに手間と時間がかかることを覚えておきましょう。
テキストや講師によって当たり外れがある
知識や実務経験がともに豊富な講師に当たれば、通うのも苦ではなくなるでしょう。利益を重視する民間のスクールでは、人気を集めるために「質のよい講義」やわかりやすさを追求したテキスト作りにも力が入っています。
もちろん、ハローワークにもいい講師はたくさんいますし、テキストもシンプルです。ただし、なかには教えるのが下手な講師やテキストをそのまま読むだけの講師もいるため、民間のスクールに比べれば当たり外れが大きいといえます。
ハローワーク講座で介護資格を取得するまでの流れ
ここでは、ハローワークの講座を受講するまでの一連の流れについて解説します。
ハローワークで相談する
まずは最寄りのハローワークに行き、訓練の概要説明を受けましょう。応募の方法や日程などしっかり確認したうえで自分がどの訓練を受けられるのか、どのような手続きを踏めばよいのかを聞いておくことが大切です。
住んでいる地域の自治体に希望するコースがないときは、ほかの自治体をあたってみましょう。応募を受け付けている期間は限られているので、受けたいと思ったときは早めに行動することをおすすめします。
ハローワークで求職の申し込みを行う
一連の流れを理解して希望のコースを決めたら、申込用紙に必要事項を記入し、添付書類と一緒に窓口に提出します。職業訓練給付金を受給したい場合には、このときに申し出ておくとよいでしょう。
給付を受けるには別の申請が必要なので、その確認も忘れないようにしてください。
面接、筆記試験などの選考を受ける
前述したとおり、選考試験は面接と筆記試験に分かれています。筆記試験は訓練に対する適性を判定するテストであるため、それほど難しいものではありません。
合格のかぎを握るのは面接であり、特に重要視されるのが受講動機や就業への意欲です。ハローワークとしては就業させることが目的なので、「資格を取りたい」だけでは「働きたいという熱意と意欲」が伝わらず、選考試験に落ちてしまう可能性すらあります。
介護の仕事に就きたい気持ちをアピールできるように、しっかりと準備しておきましょう。
合格者向けの説明会に出席し「受講の斡旋」を受ける
選考試験に合格すると、合格通知書とともに受講に必要な書類一式が届きます。後日、合格者向け説明会があるので、そこで書類を提出します。
説明を受けたのちに受講指示書か受講推薦書のどちらかを受け取り、これで受講までの一連の手続きは終了です。
ハローワークでの介護資格取得をおすすめする人
利便性や快適性の面からいえば、民間スクールで受講するほうが選考試験もなく、資格取得までにかかる時間を短縮できるのでよいと考える人もいるでしょう。では、ハローワークの講座はどんな人におすすめなのでしょうか。
以下に整理してみました。
失業保険がもらえる人
受講に一切の費用がかからないことに加え、通常3ヶ月の給付制限のある失業保険を入校日から受け取れるのが大きなメリットであることは前述したとおりです。現在、雇用保険を受給しており、時間に余裕があるという人にはおすすめといえるでしょう。
給付金がもらえる人
失業保険を受給できない方の場合、訓練を受講している間の生活支援が必要になることもあるでしょう。支給条件は厳しいものの、職業訓練受講給付金の受給対象になれば毎月10万円の給付を受けられるので、基本的な生活を維持しながら資格を取って求職したいという方にはおすすめです。
ハローワークで介護資格を取れば初心者でも就職に有利
ハローワークでは、無料で介護資格を取得することができます。特に介護職未経験者の場合、就労の前に介護に関する基本的な知識や技能を身につけられるのは非常にありがたいことでしょう。
介護業界は深刻な人材不足に陥っており、資格を持っていなくても就職はできますが、新人や未経験者の育成が行えない事業所も多いがゆえに採用しづらい背景があります。
未経験者であっても介護資格さえ取得していれば、何もない人よりは求職において有利に働くのは間違いありません。ハローワークの制度を利用して、お得に介護の資格を取得してください。
参考:厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」