同じケアマネジャーの資格を保有しているのに、転職に成功する人と失敗する人がいます。転職活動を行った結果、好条件で満足のいく働き方が出来る人とそうではない人とでは、一体何が違うのでしょうか。この記事では、ケアマネジャー(ケアマネージャー)が転職する際の失敗の特徴や成功のポイントについて解説します。
目次
ケアマネが転職を考える4つの理由
ケアマネが転職しようと考える理由は様々あります。ここでは、ケアマネが転職を考える4つの理由について紹介します。
今の職場は給与が安い
令和2年度介護従事者処遇状況等調査によれば、ケアマネの給与を月給で見ると平均額で357,850円でした。これは看護職員とリハビリ職員に次いで3番目に高く、介護福祉系のなかでも高い水準にあります。
一般的にはどこの事業所でも給与規定が定められており、基本給の金額や手当が決められています。求職者を募集しているところは給与情報を公開しているため、転職者は今もらっている給与水準が高いのか低いのかを容易に判断出来るのです。
同じ仕事量で今勤めている職場よりも給与が高ければ、転職して心機一転頑張ろうという方も少なくありません。
ケアマネの仕事に専念出来ない
介護士からケアマネの資格を取得した方のなかには、経験や能力の高い方が多くいます。そのため、人手が足りないという理由から即戦力として期待され、介護業務を兼務することになり、ケアマネとして入職したのにケアマネジャー業務に専念出来ず、どちらが本当の業務なのかわからなくなってしまうことがあるのです。
せっかく資格を取得したのにケアマネの資格を十分に活かせない職場であれば、転職を考えるきっかけになります。
人間関係が大変
介護のコーディネーターであるケアマネは利用者さんを中心にご家族や介護職員、サービス業者、かかりつけ医など多くの方と関わりを持ち、それぞれの橋渡しとして役割を担います。そのため、多くの関係者のなかで板挟み状態になって苦しい思いをすることもあるでしょう。
厚生労働省の調査においてケアマネの業務負担で最も多く挙げられたのは、「医療機関や主治医との連携・調整」であり、医療のなかでも医師との連携が苦手というケアマネは多くいます。文章やメールでのやり取りだけでなく、医師と顔を合わせること、人間関係を作り必要な情報をやりとりすることが負担となり転職を考えるきっかけとなっているようです。
一人で抱える仕事の責任が重い
先輩や同僚のいない一人の職場だと、仕事の悩みや心配事を共有する機会が極めて少ないでしょう。ケアマネは利用者さんの生活を左右する重要な役割を担うため、自分が作ったケアプランに自信が持てず、プレッシャーを感じることがあります。重要な責任を一人で背負うことに負担に感じ、頭を悩ませている方は少なくありません。
複数のケアマネがいる職場であれば責任も分散でき、急な退職があったとしても利用者さんに大きな迷惑をかけることもありません。複数のケアマネがいる職場に移りたいと思って転職を考える方も多いでしょう。
転職に失敗してしまうケアマネの3つの特徴
「転職に失敗したくない」とは誰しもが思うことです。失敗しないためには何に気をつけるとよいのでしょうか。ここでは、転職に失敗してしまうケアマネの特徴を紹介します。
お金を重視しすぎる
破格の給与で募集している事業所もあります。ついついお金重視で選んでしまうと、過酷な営業ノルマを求められたり、ほかの業務も担当させられたりするなど、想像以上に負担が大きい場合があります。介護報酬は上限が決まっているはずなのに、給与が極めて高いのには何か理由があります。
お金を優先したばかりに転職後は激務に追われ、ネガティブな感情がわきやすくなることがあります。
情報収集が少なすぎる
給与とキャリアアップを考え、介護職から努力して念願のケアマネ資格を取得したのに、ケアマネとして転職したところ、以前よりも給与が下がってしまったというケースは多くあります。
介護福祉系の中でも看護職に続いて基本給が高いケアマネですが、夜勤の多い介護職と比べると、夜勤手当がつかないぶんだけ手取りが下がってしまうことがあります。給与が完全に期待外れであったことに気づき、転職に失敗したと感じる人は少なくありません。
自分がどのように働きたいのかわからない
自分にピッタリの職場で、ストレスを最低限に抑えて働けるのが理想的です。せっかく職場を変えたのにあまり状況が変わらないのであれば、転職した意味が薄れてしまいます。
自分がどのような仕事をしたいのか、またどのような業務にやりがいを感じているのかがわからないまま転職してしまうと、転職後に「こんなはずじゃなかった」と後悔をしてしまうこともあるでしょう。
ケアマネの転職先でどんな働き方があるのか
同じケアマネでも、転職先によって働き方が異なります。ここでは、代表的な転職先の働き方について紹介します。
居宅ケアマネとして働く
居宅ケアマネは、自宅での介護を必要とする利用者さんを担当します。利用者さんの自宅を訪問し、適切かつ快適に介護サービスを利用出来るようにマネジメントします。
病院や通所サービスに併設される居宅介護支援事業所の場合は複数のケアマネと一緒に働くことになりますが、独立開業して少人数で運営している居宅介護支援事業所もあります。
受け持ち件数は35件程度の場合が多いでしょう。利用者さんのご自宅へ訪問して対応する居宅ケアマネには、外部関係者との連絡調整業務が非常に多く、地域資源に関する知識やネットワークをフル活用しながら、自己の裁量によって業務をこなしていかなければなりません。
特定事業所加算を取得している事業所や主任介護支援専門員が在籍している事業所であれば、研修機会も整っているのでスキルアップを望めるでしょう。
施設ケアマネとして働く
施設ケアマネは介護施設に勤務し、施設に入所する利用者さんのケアプランを作成します。
最大で100名程度の利用者さんを受け持ち、施設の介護職員や看護職員、作業療法士、相談員などと連携して業務にあたります。
施設内の枠組みでケアプランを作成するため、外部調整が少なく、ご自宅への訪問がほとんどない点が居宅ケアマネと大きく異なる点です。
利用者さんの心身の状態や生活の様子を間近で見ることができ、情報収集や連携を図りやすいのが特徴です。現場職員として生活相談員や介護職員などを兼務することが多く、夜勤に入ることもあります。
住宅系入所施設で働く
グループホームやサービス付き有料老人ホームなどで働くケアマネは、入所者の状態を身近で確認しながらケアプランの作成業務を行います。それ以外にも相談業務や家族対応、施設ケアマネと同じように介護職員を兼務する場合があります。
介護業界の別業種で働く
ケアマネの資格を活かして別の業種で働くことも出来ます。例えば認定調査員になると、介護を必要とする人が新規申請や区分変更を申請する際に、要介護認定の1次判定に必要な情報の収集や調査を行うことが出来ます。ケアマネの現場経験を活かしつつ、居宅ケアマネや施設ケアマネとはまた違った角度で介護に携わることができます。
また介護保険制度の知識が豊富なケアマネは、研修の講師や介護福祉系の学校教員としても活躍出来るでしょう。あるいは福祉用具販売員として働くことも選択肢のひとつです。ケアマネの現場経験を活かしつつ商品の提案やアドバイスが出来れば非常に重宝されます。
ケアマネ未経験の転職と注意点
介護の現場には、多くの場合即戦力となる人材が求められます。また、実務経験を問われる場合がほとんどで、特に規模の小さい事業所ではその傾向が顕著に見られるでしょう。しかし、比較的規模が大きくて主任ケアマネが在籍しているような事業所では、教育指導のシステムがしっかりと整っている場合があります。
未経験で働く場合には、こういった事業所の指導体制などを十分に確認することが重要です。未経験者の転職はハードルが高めですが、ポイントをおさえてケアマネジャー求人のリサーチを行えば、きっと自分に合った職場が見つかることでしょう。
ケアマネの転職における成功ポイント
転職を成功させるためには、どのような点を意識するとよいのでしょうか。ここでは、転職成功のポイントについて紹介します。
キャリアの棚卸と自己分析をしておく
面接や面談において条件を提示されたり、何か確認されたりした場合に備えて、自分の希望条件の優先順位や容認出来る範囲を定めておくと交渉もスムーズに進むでしょう。
転職後に「こんなはずじゃなかった」といった状況を迎えてしまわないように、面接前にはキャリアの棚卸や自己分析をしっかりと行っておきましょう。
しっかりとした情報収集を行う
自分に合った働き方を実現するためには、情報収集がとても重要になります。きちんと情報を収集しておかないまま希望からかけ離れた職場に入職してしまうと、入職後にギャップを感じてすぐに退職ということにもなりかねません。
ケアマネを募集している事業所のウェブサイトや求人情報、さらには口コミやSNS、ブログ記事などから多くの情報を収集することが出来ます。はじめから1社に決めてしまうのではなく、様々な事業所を比較して検討することが大切です。すでに希望の事業所があったとしても、参考のために多くの情報を集めることをおすすめします。
自分の市場価値を高めておく
多くの事業所は、好待遇を売りにして優秀なケアマネを募集しています。したがって「資格やスキル」「経験や実績」など市場価値が高ければ、現在よりも高いポジションや良い条件で働ける可能性が広がります。日頃から自分の市場価値を高める努力をしていれば、いざ転職しようと考えたときにも非常に役立つでしょう。
2021年以降、介護支援事業所の管理者は主任ケアマネにしか出来なくなります。主任ケアマネを取得すれば一定の評価を得られるため、転職の際には良い条件で採用してもらえるかもしれません。
ケアマネ転職は自己分析と情報収集が成功のポイント!
条件は問題ないのに社風になじめなかったり、給与などの待遇はいいものの希望する働き方からかけ離れていたりでは、せっかく転職を果たしたのに意味のないものになってしまいます。
「こんなはずじゃなかったのに…」という事態を避けるためには、今回ご紹介した転職における失敗を踏まえたうえで、成功するためには「自己分析」と「情報収集」が特に重要であることが分かったと思います。成功するためのポイントをしっかりとおさえて理想の職場を見つけてください。