管理者の役割とは、介護保険法の『尊厳の保持』や『自立支援』に基づいた、改善・予防の意識を正しく職員に伝えていく使命があります。
今回は管理者の役割においての利用者との関係作りについてご紹介しますので、ご活用頂ければ幸いです。
利用者について(1)
- 利用開始時・終了時の対応
- 普段の暮らしを知る
⇒一人ひとりの状況・変化の把握
⇒介護計画書と提供されているサービスの把握
⇒当たり前に行っていることの意味を考えてみる - 身体拘束、虐待、プライバシー
⇒明確な方針、話し合い、現状の把握
◎管理者としての留意点
利用者のご対応を管理者が全面的に行うということはありませんが、それぞれの状況や変化があった時にタイムリーに報告・連絡・相談できる環境で、常に「知っている」という状況が作れているかを確認することがリスクマネジメントにおいても重要です。
①利用開始及び利用終了時の対応
- 利用開始前後の「利用者」「ご家族」「職員」の不安や心配の確認と、軽減に向けた取り組みを考えることができる環境作りに務めましょう。
②利用者一人ひとりの普段の暮らしの様子や状態の変化を知る
- 状況に応じた相談や変化があった時に報告する環境・関係を作りましょう。
- 介護計画書の内容やそれに応じた支援が遂行されているのかを把握する必要があります。
- 現在、行われていること(例えば、買い物や料理作りなど)の意味や目的を職員が理解しているのかの確認。
③身体拘束・虐待防止,プライバシー・個人情報保護を遵守する環境を作る
この部分は管理者が中心となり、強い意志を持って進めていく必要があります。
例えば、
○職員全員が「身体拘束・虐待・プライバシーとは何か」「事業所としてどのような行為が、それに該当する可能性があるのか」を具体的に理解ができている環境かが必要となる。
○「自分の事業所は大丈夫だろう」ではなく、「もしかしたら」「もしその状況となったら」と考え、取り組みを進めていく意識が必要となる。
◎取り組みの仕方
①事業所の明確な方針を作り、方向性を示しましょう。
→事業所としてどのような姿勢で取り組んでいくのか等、明確な方針を事業所全体で考え、マニュアル化する。
その際、「それぞれの事業所の理念や方針」と関連付けて話をすること、具体的な行為について話し合うことが大切です。
作成、改訂したマニュアルを活用する。
→新人職員研修や勉強会などで活用する。
②「日頃の支援の状況」や「事故やトラブルが起きる可能性がある場面」を把握しましょう。
→申し送りや会議等を活用して、定期的に現状を確認する。
事例検討等を行うことで、マニュアルの見直しや新たな事項の追加を行う。
→職員の中で「身体拘束・虐待」等、コンプライアンスやリスクマネジメントで必要な担当等を決め、その職員が中心となって、事業所内の現状を確認する、話し合いの機会を持つ。
それに併せて「倫理(職業倫理・ケアにおける倫理)」「尊厳」について考える機会を作りましょう。
「もし倫理に反することを行ってしまったらどうなるのか」という職員への処罰などについても、就業規則を示しながら共有しましょう。
◎課題
○職員一人ひとりの意識が1年を通してコンプライアンスやリスクマネジメントの意識を継続できる環境を事業所として、どのように整備して 行くのか?
③事業所として「職場内」だけでなく「地域」とは何かを考える必要があります。
皆さんの事業所の「地域」とは何か? 皆さんの事業所で話し合ったことがありますか?
◆事業所が所在する場所も「地域」
利用者が住み慣れた場所も「地域」です。
「どんな特性の地域に事業所があるのか」を知ること
「どんな地域に利用者が暮しているか、その地域に何があるのか」を知ることが大切です。
◆地域とは何かを職員間で話し合う場を作ることや地域への取り組みについて、方向性を明確にすることで、利用者の活動の幅や職員の学び、考える幅が広がります。
→地域において利用者に必要なことだけでなく、事業所としての使命を考える機会になる
利用者について(2)
- 日々の健康管理
- 個々に応じた医療等の提供
- 入院、退院の支援
- 重度化、ターミナルケア
⇒方針の明確化と共有
⇒職員の理解と知識・技術向上
⇒柔軟な勤務体制
⇒利用者の「思い」を知る、ご家族の「思いを知る
その違いを知り 「思い」や「気持ち」は変化するので、マメな確認を行いましょう。
高齢者の暮らしを支える為には医療との連携が不可欠になります。
①日常生活の中での医療、個々に応じた医療等の提供、入退院の支援
→心身の変化や気になる状態があった場合には、小さなことでも管理者まで報告・相談・連絡する体制作り。
②事業所として重度化やターミナルケアについて考えていくことが重要になります。
- 方針や事業所として出来ること・出来ないこと、取り組むにあたっての課題を明確し、それを管理者・職員等、支えるチーム皆で共有しましょう。
- 利用者やご家族の不安や辛さを支える職員の専門職としての知識や技術向上と重度化やターミナルについての知識の向上や利用者の心身状態に応じた柔軟な勤務体制も求められます。
- 利用者の主治医との日頃からの連携など、医療機関や医療従事者と連携・共有し、環境を整える。
⇒事業所の方針や取り組みの理解につながり、日頃からの関係性がポイント。 - ターミナルケアありきではなく、そこまでの過程が大切になります。
- 日頃からの「その人らしさ」を意識したケアにより、利用者の希望を取り組みにつなげ、取り組みの延長が、ターミナルケアへの取り組みにつながります。
⇒人それぞれで最後をどのように迎えたいのかという考え方や思いは違います。
⇒それによって整えていく環境にも違いが出てくるのは当然です。
⇒大切なのは,利用者に意思表示が出来るうちに今後のことについて確認しておくということです。利用者に告知されていない場合もありますが、ご家族からその「思い」も確認しておく必要があります。
⇒利用者とご家族の「思い」が違う場合もあります。利用者やご家族、職員、関係機関の方と話し合いを重ね、時間をかけてその環境を作って行くことが大切になります。
⇒更に、その気持ちや思いは、その時々の状況によって変化する場合が あることも理解します。
まとめ
私は祖父母と父の看取りをしましたが、父は病院で誤診をされ、肺腺癌の発見が遅れ亡くなりました。亡くなった日は仙台のケアマネジャーの研修会で「専門職として利用者やご家族に後悔を残さないプランを立てて頂きたい。」と皆さんにお話しし、その日は私の後悔を残さない仕事をする!新たな誓いの日となりました。沢山の利用者がおられるとつい個々の利用者に応じた思いを大切にするケアを忘れがちになるかと思いますが、利用者もご家族も私たちに幸福感のある人生を託しておられることを忘れずに、その場面、場面を大切にケアに努めて頂きたいと思います。