複数回の転職経験者の多くは、履歴書や面接で「この人、転職多いな」と思われてしまわないか不安を感じているのではないでしょうか。しかし、企業が見ているのは転職回数よりも転職理由です。
この記事では、介護の転職に悩む方のために、転職回数が多くても「採用したい」と思われる志望動機の伝え方や、自己PRの方法を詳しく解説します。面接で転職回数について聞かれた際の回答例もご紹介しますのでぜひ参考にしてください。
目次
転職回数が多いことはデメリット?介護職の採用実態
「終身雇用」という概念も薄れ、転職は当たり前の時代になりつつあります。特に介護業界では転職回数について他のよりも寛容な業界ですが、それでも5回以上の転職ともなれば、やはり「転職回数が多い」といった印象を持たれることが多いでしょう。
実際に転職回数が多い応募者に対し、採用担当者はどのようなイメージを抱いているのでしょうか。
また、転職回数が多くても企業から求められるのはどういった人材なのでしょうか。
転職回数が多い人への採用担当者のイメージ
転職回数が多い応募者を企業は以下のように見ている傾向があります。
- 仕事や人間関係、職場の環境などに不平不満が多く、転職の原因が自分ではなく外部にあると考えているのでは?
- 自分のやり方や意見に強いこだわりを持っているため、職場で良い人間関係が構築できないのでは?
- 施設や事業所に利益をもたらす前に、また辞めてしまうのでは?
転職回数が多くても求められる人材とは
「やっぱり転職回数が多いと不利だよね」と思われたかもしれませんが、採用する企業側は転職回数よりも、転職理由や動機が明確で、履歴書や面接できちんと説明できるかどうかが重要だと考えています。
転職を重ねるたびに新たな経験を積んでスキルアップし、将来のキャリアビジョンに一貫性がある人ならば、企業から「欲しい」と思ってもらえる人材だということです。
短期間で転職を繰り返してきた場合は要注意!転職を繰り返さないために
転職回数が多くてもそれほど気にすることはありませんが、短期間での転職を繰り返している方は要注意です。
就職して3ヶ月、半年で「実際に働いてみたら合わなかった」と辞めてしまうのは、厳しい言い方になりますが「就職先となる施設や事業所の情報収集を怠った」「安易に就職を決めているのではないか」といったマイナスイメージを持たれます。
転職を繰り返さないためには、希望する企業の下調べを入念におこない、仕事内容や待遇など、自分の優先順位にマッチした職場を選ぶことが大切です。
転職回数が多い場合の志望動機や自己PRの伝え方
では、転職回数が多い場合の志望動機や自己PRの書き方・伝え方について、具体的に見ていきましょう。
ポイント1.キャリアビジョンの一貫性
まずは「無計画に転職を繰り返している」という印象を与えないことが大切です。「なるほど。そういう理由で退職したなら無理もない」と思ってもらうために、キャリアビジョンが一貫していることを伝えましょう。
たとえば、「介護のスペシャリストを目指しているため、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、デイサービスなど様々な施設で経験を積んできました」というような思いを伝えることで、転職回数の多さも納得してもらえるはずです。
ポイント2.これまでの経験・スキルを活かせる
次に「こんな経験やスキルを持っているなら活躍してくれそうだな」と思ってもらうことも大切です。
応募する会社の求める人材とマッチしていれば、転職回数が多くても採用される可能性は十分にあります。希望する施設や事業所で、自分がどのように貢献できるか、具体的に伝えられるよう整理しておきましょう。
ポイント3.「長く働きたい」という意志
転職回数が多い求職者が敬遠されがちなのは、「せっかく仕事を覚えても、またすぐに辞めるのでは?」という懸念を持たれやすいからです。だからこそ、履歴書や面接では「長く働きたい」という意志をしっかりと伝えましょう。
ポイント4.勤務先への不満や悪口
どのような理由があったとしても、勤務していた会社の不満や愚痴は避けましょう。「会社のせい、相手のせいにする人だな」という印象を与えかねません。何か問題があって辞めた場合は、自分の見通しの甘さや至らぬ点、反省の気持ちを伝えたほうが評価される可能性が高くなります。
面接で転職回数が多い理由を聞かれたときの回答例
志望動機や自己PRのポイントを理解したところで、実際に面接で転職理由を聞かれた際、どう答えたらいいかの具体的な回答例を3つのパターンでご紹介します。
面接官は転職理由を質問することで、自社で活躍してくれるのか、すぐに辞めてしまわないか、仕事に対してどのように考えているのかを確認しています。転職回数が多いからと卑屈になったり、ごまかしたり、嘘をついたりする必要はありません。
同業種・同職種での転職が多い場合の回答例
同業・同職種での転職が多い場合は、キャリアビジョンの一貫性をアピールしましょう。複数の職場を経験し、介護の現場でどのようにキャリアアップしたかを、ひとつのストーリーとしてポジティブに伝えるとよいです。
[box05 title=”回答例”]「私は祖父母の介護をきっかけに介護職に興味を持ち、未経験でデイサービスの事業所に入職しました。その後、ケアマネジャーの方と接する機会があり、ケアマネジャーを目指すようになりました。
介護職としてケアマネジャーを目指す上でも、様々な現場で介護スキルを磨く必要があると考え、訪問介護事業所や特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの幅広い施設で経験を積み、介護福祉士の資格も取得いたしました。
将来はケアマネジャーとして独立し、認知症高齢者の方が快適な生活を送るための力になりたいと考えております。そのため、認知症ケアに力を入れていらっしゃる御社で、これまでの経験で得た介護スキルを活かしながら認知症ケアについて実践で学びたいと考え応募しました。」[/box05]
事業所の倒産など、やむを得ない理由で転職を重ねた場合の回答例
勤務先の施設や事業所が倒産した場合や、結婚や出産、家族の介護などやむを得ない理由で転職を重ねてきた場合、それらの問題が解決したため、今後は長く働きたいことを伝えましょう。
[box05 title=”回答例”]「大学卒業後はホテルのフロントとして勤務していましたが、よりお客様の生活に寄り添ったサービスを提供したいと考え、有料老人ホームへ転職し、3年間勤務しました。
その後、夫の転勤に伴い転職し、有料老人ホームに勤務していましたが、転職から1年で倒産してしまいました。
翌年に改めて特別養護老人ホームへ転職し、約2年勤務しましたが、今度は義母の介護が必要となり、不本意ではありましたが退職せざるを得なくなりました。
今回、夫の兄夫婦が義母を引き取ることとなり、時間的にも体力的にも余裕ができたため、これまでの経験とスキルを活かし、御社で長く働かせていただきたく応募いたしました。」[/box05]
働条件や人間関係など、ネガティブな転職理由だった場合の回答例
労働条件や職場の人間関係などネガディブな理由で転職を重ねた場合、他責思考だと思われないことが大切です。原因が自分にもあることを認めた上で、ポジティブなイメージに置き換えてアピールしましょう。
[box05 title=”回答例”] 「介護業界に入る前は飲食店に勤務していました。ご高齢のお客様とも触れ合う機会が多く、介護が必要な高齢者の方のお役に立ちたいと考え、介護業界に飛び込みました。
1社目の特別養護老人ホームでは、自身の未熟さゆえに先輩社員に年配の方が多かった職場に馴染めず退職しました。
2社目のデイサービスでは、そのことを教訓にし、人間関係では問題はなかったのですが、より介護度の高い利用者さんをサポートし、介護スキルを高めたいと考え、改めて特別養護老人ホームへ転職し、現在は2年目になります。
キャリアアップのためにも、今後は介護スキルを活かしながら接遇スキルを磨きたいと考え、接遇に力を入れている御社の求人に応募いたしました。」 [/box05]
志望動機と自己PRの例文
次に、これまでの職務経験を強みに変えた志望動機と自己PRの例文をご紹介します。以下の例文を参考に、「この人を採用したい!」と思われるような履歴書を作成しましょう。
[box04 title=”例文1″] 「これまで様々な施設で数多くの入居者様やそのご家族の思いに触れたことで、私たち介護職員に何が求められているかを肌で感じることができました。
いくつもの職場で経験を積んだからこそ、寄り添う介護ができるようになったことが自身の強みだと感じております。
一人ひとりに向き合い、個性を大事にしている貴施設でなら、これまでの経験とスキルを活かし、より利用者様に寄り添った介護ができると考え、応募いたしました。」 [/box04]
[box04 title=”例文2″] 「私はレクリエーションやイベントの企画を考えることが得意です。利用者様が楽しみながら身体と頭を使うことができるレクリエーションは、これまで勤務したどの施設でも高い評価をいただきました。
貴施設が利用者様に楽しく過ごしてもらえるようイベントを充実させていると知り、ぜひこちらで働きたいと思ったのが志望動機です。利用者様のQOLを高めることができるよう、これまで介護の現場で培ってきたスキルと経験を発揮し、貴施設に貢献していきたいと思います。」 [/box04]
[box04 title=”例文2″] 「志望動機はこれまで異業種で培ってきた経験が活かせると感じたからです。ホテルでの接客業ではおもてなしの心と高いコミュニケーションスキルを身につけ、製造業ではチームワークの大切さと体力を培いました。介護の現場でも、おもてなしの心だけでなく体力や協調性、コミュニケーション力などこれまでの経験で身につけたスキルが活かせると思い、『地域密着型のケア』を掲げる貴施設にて介護の職を極めていきたいと考えております。」 [/box04]
志望動機を伝える際のもっとも重要ポイント
志望動機と自己PRの例文を3パターンご紹介しましたが、志望動機を伝える際にもっとも重要なポイントは「これまでの転職で何を得たのか」です。
施設長や採用担当者・面接官は、あなたが複数の職場でどのような経験を積み、どのようなスキルを身につけたのかを知ることで、それらの経験やスキルがどう活かせるのかを判断します。つまり、どのように優れたスキルや経験があったとしても、企業が求める人材とマッチしていなければ採用されないということです。
自分が得た経験やスキルを、どのように生かせるのかという点をアピールしましょう。
他の事業所ではなく、なぜそこを選んだのかという点を具体的に伝えることも重要です。「企業理念に共感して」では漠然としてしまい、「どうせ他でも同じことを言っているんだろう」と思われる可能性もあります。
また、今回ご紹介したような例文をそのまま使うのではなく、きちんと自分の言葉に置き換えることも大切です。応募書類を書く際には、ポイントを整理してから記入するようにしましょう。
まとめ
転職回数が多い場合の志望動機や自己PRの伝え方について解説しました。
5回、6回と転職していたとしても、伝え方によりマイナス要素をプラスに変えることができますので安心してください。むしろ、これまでなぜ転職を繰り返してきたのか、今後長く勤めるためには自分にとって何が重要なのかを考えることが大切です。
その点がしっかりと整理されていれば、自然と履歴書や職務経歴書にも前向きな言葉が出てくるはずです。ぜひ、希望の施設や事業所に転職できるようがんばってください。