「介護の仕事もう辞めたい」、「ほかに良い介護の職場はないかな」など、介護現場で働いていると、そのような悩みを持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、今の職場を「辞めてよかった」と思える介護転職の5つのポイントをご紹介します。また、実際に介護職のなかで転職した方の成功談もお伝えします。
目次
介護現場の離職状況
令和2年10月発表の一般職業紹介状況によると、介護職の令和2年9月の有効求人倍率は3.82倍となっており、コロナ渦で低下傾向にはあるものの、全業種の平均が1.03倍であるのに対しその差は3倍以上となっています。
介護現場は依然として人手不足の状況であることが分かります。その原因は何なのか、一体どのような人が離職しているのか改めて確認してみましょう。
介護の離職率はどのくらい?
介護労働安定センターの調査によると、平成30年度の介護職の離職率は15.4%です。産業系の離職率14.9%を0.5ポイント上まわるものの、職業・飲食・サービス業の離職率30.0%と比較すると、介護の離職率はさほど高くないことが分かります。
また、平成28年度の離職率は16.7%、平成29年度は16.2%と、介護の離職率は年々減少傾向にあります。近年の離職率の減少には、人材確保と定着に向けた各事業所の処遇改善策が影響していると考えられるでしょう。
勤続年数どのくらいで離職してるの?
介護職における離職者を勤続年数別で見ると、勤続1年未満が全体の約4割を占めます。勤続3年未満を加えると、その数は全体の約6割以上。勤続年数の短い介護職員ほど、離職率が高いことが分かります。
雇用状況で見ると、勤続年数1年未満で離職する割合がもっとも高いのは、非正規の介護職員です。非正規職員は介護経験の少ないスタッフが多く、現場ではきめ細やかなフォロー体制や研修が求められているといえるでしょう。
介護の仕事を辞めた理由
「仕事を辞めたい」と考える理由は人それぞれ。しかし、転職を考える際には、ほかの介護職員がどのような理由で離職したのかも気になると思います。
介護職の離職理由は、男女、または過去の介護経験の有無によって以下のように異なります。いずれも「介護の仕事自体が嫌になった」わけではないことがポイントです。
男女で異なる離職理由
男性介護士の離職理由の約3割を占めるのが「自分の将来の見込みが立たなかったため」(29.0%)という理由です。介護現場では人材確保と定着促進に向け、キャリアパス制度の導入が推進されていますが、今後さらなる処遇改善や環境づくりが必要だと考えられます。
また、女性介護士の離職理由でもっとも多いのが「結婚・妊娠・出産・育児のため」(24.8%)となっています。そのため、職員のキャリアやスキルに応じた処遇改善がなされ、女性が職場復帰しやすい環境をととのえている職場ほど、転職後も安心して働けるといえるでしょう。
過去の介護職経験の有無で異なる離職理由
介護の離職理由は、性別だけでなく過去の介護経験の有無でも異なります。前職が介護職だった方の離職理由第1位は、「職場の人間関係に問題があったため」(22.7%)。一方、前職が介護職とは関係ない仕事だった方の離職理由第1位は、「妊娠・出産・妊娠・育児のため」(26.4%)となっています。
過去に介護職の経験がない方で「職場の人間関係」を離職理由にあげている割合は、全体の14.6%。介護職の経験のある方と比較するとその差は8.1%と、経験のある方ほど人間関係を重視していることが分かります。介護職はスタッフ間だけでなく、医療や自治体など、他業種との連携が必要な仕事。それだけに、良好な人間関係は大切なポイントとなるでしょう
今の介護現場に転職を決めた理由
介護職へ転職した方は、何を決め手に現在の職場を選んだのでしょうか?平成30年度の調査によると、もっとも高いのは「通勤が便利だから」(37.3%)です。
以下、同じような割合で介護士ならではの理由が続いています。
資格・技能が活かせるから
介護職は初任者研修からはじまり、実務者研修、介護福祉士と資格を取得しながらステップアップできる仕事です。資格があるほど給与も高く、令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果によると、介護士の平均月給は31.5万円を超えています。
働くなかで実践的なスキルも身につくため、介護職を一度辞めたとしても、「資格を活かして介護現場で働きたい」と考える方は一定数いるといえるでしょう。
やりたい職種・仕事内容だから
介護職は、入居型や通所型、訪問介護など多様な働き方ができる仕事です。仕事内容も職場によって異なるため、自分に適した職場を選択できます。
一度介護職を経験した方であれば、自分の目指す介護が実現でき職場をより検討しやすくなるでしょう。
働きがいのある仕事だから
介護の仕事に不満を持って辞める方が少ないことからも、介護職へ転職する方は仕事に魅力を感じていることが分かります。高齢者に寄り添って生活や自立を支援する介護職は、ほかの仕事にはない大きなやりがいがあるといえるでしょう。
一方、賃金や福利厚生、子育て支援などを理由に職場を決めた方は、それぞれ全体の10%以下です。離職理由を生み出すこれらの要素は、今後事業所で改善が必要な課題だと考えられます。
「辞めてよかった」というための転職ポイント
大きな決心をして辞めるからには「辞めてよかった」といえる転職をしたいですよね。新たな職場で活躍するためにも、転職時には以下のポイントをチェックしておきましょう。
ポイント1.相談窓口を設けている職場
介護労働安定センターの令和元年の調査によると、相談窓口がない事業所ほど労働条件に関する悩みが多いという結果が出ています。つまり、職員の悩みに耳を傾けている事業所ほど、処遇や環境の改善につながっているのです。
なかでも、「仕事内容のわりに賃金が低い」、「精神的にきつい」と答えた職員の割合は、相談窓口がある事業所にくらべ、相談窓口がない事業所は10%以上増加。同じような理由で転職を考えているのであれば、相談窓口を設けている職場を検討しましょう。
ポイント2.ライフスタイルに合った職場
利用者さんに切れ目ない介護サービスを提供する介護職は、土日休みが少ない職場でもあります。家事や子育てとの両立を希望する方にとっては、不規則な勤務スタイルが負担になることもあるでしょう。安定した収入がほしいという方にとっては、夜勤のある入居型の施設が合っている場合もあります。
平日勤務が良ければ、土日は閉所している通所施設。短時間勤務が希望であれば訪問介護事業所など、自分のライフスタイルに合った職場を選ぶことが仕事を長続きさせるポイントです。
ポイント3.キャリアアップが期待できる職場
長期的に働くことを考えるのであれば、キャリアアップを期待できる職場を選ぶのがおすすめです。キャリアアップ支援制度を取り入れている職場であれば、資格取得のための研修や費用の補助を期待できます。
また、一定の要件を満たすことで介護報酬が加算される「処遇改善加算」を取り入れている事業所であることもポイント。求人で細かい情報まで分かりづらいというときには、ハローワークの担当者や転職エージェントにしっかり確認しておきましょう。
「辞めてよかった」介護の転職体験談
転職を考える際、実際に転職に成功した方の体験談は心強いもの。自分の状況と照らし合わせながら、それぞれの体験談を参考にしてみましょう。
「出産を機に老健を退職。デイ勤務で仕事と育児を両立」
「介護福祉士を取得してから8年間、介護老人保健施設に勤務しました。夜勤は大変でしたが仕事内容は楽しく、転職は考えていませんでした。
仕事を変えた方がいいかな?と思ったのは妊娠が分かってからです。夜勤ははずしてもらい、できることを続けてはいましたが、出産後同じように働くのは少し難しいかなと考え始めました。子どもが1歳になったのを機に、現在はデイケアに勤務しています。
収入は老健時代にくらべ減少しましたが、子育てと両立できるのは大きなメリットです。将来的に子育てが落ち着いたころには、また入所勤務に戻ってもいいかなと思っています」(26歳女性・介護福祉士)
「夜勤のある特養に転職。収入アップ」
「私はデイケアから介護職をはじめ、働きながら介護福祉士の資格を取得しました。経験を重ねてリーダー的役割も担うようになったのですが、年収は安心できない部分もありました。
現在の入居施設へ転職を決めたのは、収入面がアップすることが一番の理由です。また、身体介助が多くなるため、介護スキルを磨けるのではという期待もありました。
実際には慣れない業務が多く、介護はこんなにも幅広い仕事だったのかと改めて感じています。通所勤務で得たコミュニケーションスキルが活きる面も多く、やりがいを持って働いています」(31歳男性・介護福祉士)
「資格を活かして復職。訪問介護員として活躍」
「30代の頃に介護福祉士資格を取得しました。有料老人ホームにしばらく勤務したのですが、当時の私には身体的な負担が大きく退職。
その後、介護業界からは遠のいていました。求人を見て始めた現在の訪問介護員は、今の自分にとても合っていると思います。掃除や調理には家事スキルを活用できますし、利用者さんや家族の方とお話していると、今までの人生経験が活きる場面があると多々感じるからです。
自分の生活スタイルに合わせて勤務時間を選べるのもうれしいですね。今後もできる限り長く続けていきたいと思っています」(46歳女性・介護福祉士)
自分に合った職場で新たに活躍しよう
「仕事を辞めたい」と考え、職場環境を変えることは、どんな仕事であっても不安がつきものです。しかし、介護職は有効求人倍率が高く、経験者であるほど優遇されやすい職種でもあります。
今後より一層ニーズが高まる介護職は、長く働いてこそ給与アップも期待できる仕事です。「辞めてよかった」と思える理想の職場を見つけましょう。