ケアマネジャーが働く場所は、居宅介護支援事業所や特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護など様々であり、いずれにおいてもケアマネジャーは、高齢者介護チームの要として重要な役割を担っています。
基本的に介護サービスは、ケアマネジャーが作成したケアプランに基づいて実施されるので、適切なサービスが提供されているか、利用者さんに些細な変化がないかなど、常に気を配る必要があります。業務量が多いことに加えて責任が重くのしかかり、プレッシャーを感じる人も少なくありません。
この記事では、ケアマネジャーによくある悩みとその解消に役立つ対処法を紹介しますので、是非試してみてください。
目次
ケアマネジャーの仕事範囲が増えた分悩みも増えている
ケアマネジャーは、担当する利用者さんへのサービス調整やケアプランなどの書類作成が主な仕事です。しかし、平成12年の介護保険創設以降、3年ごとの介護保険法改正の度に、資格更新研修の受講時間が増加したり、特定事業所加算取得のために事例検討会や研修会が義務化されたりなど、近年では利用者さんへの対応以外にも様々な業務が課せられています。
そのような中で、担当している利用者さんに、もっと効果的なケアプランを立てたいと思っていても、業務が忙しすぎるあまり対応できな身体状況いが悪化してしまい……と悩むケアマネジャーもいます。
せっかく時間を費やして取得した資格ですから、悩みを抱え込んでやりがいを見失わないようにしたいものです。
ケアマネジャーが抱える悩みにはどんなものがある?
仕事の範囲が広いケアマネジャーにとって、抱える悩みは利用者さんに対するマネジメントだけに限りません。たとえば、ご家族との関係性やサービス事業所との連携、職場での人間関係など様々な悩みをもっているものです。
ケアマネジャーの仕事は利用者さんそれぞれの生活に深くかかわるものであるだけに、悩みが増えてしまうのも当然のことかもしれません。ここでは、ケアマネジャーが抱える悩みについて細かく見ていきましょう。
新人としての悩みどころ
新人ケアマネジャーの場合、経験が浅いがゆえに一つひとつの業務に不安を感じてしまい、誰かの助言を求めたくなることは当然でしょう。とはいうものの、たとえ新人であっても実際に担当する利用者さんが決まると、すぐに自宅を訪問して面接をしたり関係機関との連絡調整をしたりなど、すべて一人で行わなければなりません。
新人のうちは何をするにしても不安で、先輩ケアマネジャーの助言を貰いながら業務を覚えたいと思うかもしれません。しかし、新人といえどもケアマネジャーの資格を持つ以上すぐに一人で業務を任される立場になります。
地域によっては利用者の数に比して担当者数が少なく、そういった現場では先輩ケアマネジャーも忙しくしているため、なかなか助言を求めることもできません。些細なことでも周りに気を使って聞きづらいと悩むのは、新人ケアマネジャーによくあることです。
利用者さん、ご家族との関係性
ケアマネジャーにとって、介護者であるご家族の存在はとても重要です。自宅での介護生活を継続するためには、ご家族に負担がかかりすぎていないかという視点で、サービスを調整することがあります。
しかし、利用者さんが認知症で意思疎通が難しかったり、家族の意見が強すぎたりする場合など、結果として利用者さんが望まないサービスが提供されてしまう場合があります。ケアマネジャーは、利用者さんの意思や人格を尊重した立場に立てないジレンマに陥って悩むことがあるでしょう。
仕事内容や業務量
ケアマネジャーの仕事は、利用者さんやご家族のニーズに対して社会資源をマネジメントし、自立を促すことです。そのためには、面接において情報収集を行い、ニーズを明らかにする必要があります。
そして、ニーズに対して様々な支援方法を提案してケアプランを作成し、定期的に評価・見直しすることが求められています。また、それらの過程や結果を定められた様式で記録しておかなければなりません。
このように、ケアマネジャーは直接利用者さんの相談に応じたり担当者会議を開催したりといった実務のほかに、各種書類の作成といった事務仕事もこなさなければなりません。そのため、仕事内容の幅広さと業務量の多さに悩むことが多いのです。
職場の人間関係
職場の人間関係がうまくいかずに悩んでいる方もいます。一度人間関係が悪化してしまうと修復するのにも時間がかかり、周囲にもあまり良い影響を与えず、職場の雰囲気そのものを悪くしてしまうことにもなります。
また、介護業界は女性が多く活躍している職場であるため、意見の強い人に流されて自分の意見がいえなかったり、自分の言動から誤解を生じて周りの職員に悪く思われたりすることに悩む場合もあるのです。
居宅以外のケアマネジャーにも悩みはある
ケアマネジャーは居宅介護支援事業所だけではなく、施設ケアマネや小規模多機能型居宅介護、地域包括支援センターなどでも活動しています。それぞれの事業所でケアマネジャーはどんなことに悩んでいるのかを紹介します。
小規模多機能型居宅介護の計画作成担当者の悩み
小規模多機能型居宅介護に配置されるケアマネジャーは、計画作成担当者という名称で働いています。主な業務内容は、利用登録している20名から30名の利用者さん一人ひとりのサービス計画を立てることです。
計画作成以外の時間は業務に支障がない範囲でほかの職種を兼務している場合が多く、24時間のシフト体制で介護職員として早出や遅出に対応し、夜勤などの業務を行う場合もあります。
そういった介護業務の合間にケアマネジャーとしての計画作成業務を行わなければならず、実際その時間がとりにくいという点に悩んでいる方が多くいます。
地域包括支援センターのケアマネジャーの悩み
地域包括支援センターに配置されるケアマネジャーは、要支援の認定を受けた人へのケアプラン作成に携わっています。居宅介護支援事業所の場合には一人のケアマネジャーが担当する利用者さんの数を標準35名とされているのに対して、地域包括支援センターでは担当件数の設定がありません。
ケアマネジャーによっては、担当する利用者さんが50名を超えている方もいます。また、主任ケアマネジャーの研修を修了すると、地域におけるケアマネジャーのアドバイザーとしての役割も求められるため、担当する利用者さんへの支援に加え、ケアマネジャーに対するサポート業務に負担を感じて悩むことがあります。
あらゆる悩みに効く4つの対処法
これまで紹介した悩みによく効く対処法を4つ紹介します。明日からでも実践できる方法もあるので、是非参考にしてください。
研修を受講し知識を増やす
悩んでいる原因が自分の知識不足にある場合には、研修を受講して知識を増やすことが解決策になります。たとえば、医療の知識が乏しいために疾患へのマネジメントが不十分だと感じるならば、医療ケアに関する研修を受講することで不足する知識を補うことができます。
病気特有のアプローチや薬の特徴を踏まえることでケアプランがさらに充実するため、研修を受講することは知識不足の悩みへの特効薬といえるでしょう。
SNSやインターネットで情報収集する
インターネット上には、ケアマネジャー同士の意見交換サイトや様々な情報提供サイトがあります。介護保険に関する最新情報や運営基準、ケアプランの記載例や困った事例への体験談など幅広い情報を収集することができます。分からないことを人に聞く方法もありますが、インターネットを活用してご自身で調べることも重要です。
職能団体に所属する
ケアマネジャーが属する職能団体は、日本介護支援専門員協会や都道府県、市区町村単位の会組織など様々あります。会員が集まる機会も設けられているので、ケアマネジャー同士の交友関係が広がり、業務や人間関係の悩みなどを気軽に相談できるきっかけにもなります。
なお、組織によっては会費が必要な場合があるので、一度ご自身で調べてみることをおすすめします。
転職を考える
あらゆる対処法を実践しても今の悩みを解決できないときは、職場を変えるというのも一つの選択肢です。職場が変わることによって、今まで悩んでいたことが一掃される場合もあります。
なお、近年はインターネット上にエージェントによる就職支援のサイトや求人サイトが多数存在します。これらを活用すれば、自分の条件にあった職場を効率よく見つけることもできるでしょう。
ケアマネジャーは相談援助のプロ!ときには仲間の相談者にもなれる
悩みは一人で抱え込まないようにすることが大事です。また、些細なことでも日頃から尋ねあえる仲間をもつために、コミュニケーションを図っておくことも有効な手段です。
同じケアマネジャー同士なら、あなたの悩みに対しても寄り添って対応してくれるかもしれません。今回の記事を参考にして、自分が悩んだときにはすぐに対処できるよう備えておくことが大切です。
そして仲間が悩んでいるときには、耳を傾け対処法をアドバイスできるようにして、相互に助け合える関係を構築しておくと良いでしょう。