送迎時には事前準備を適切に行い、日頃から事故が起きないためにもドライバー同士のコミュニケーションとルートの確認、シミュレーションも必要になります。今回は『送迎についてのポイント(事前準備と送迎時の対応)』についてご紹介しますので、皆様の業務の見直しにご活用頂けたら幸いです。
目次
送迎の事前準備
送迎ルート・ご利用者宅の確認
- ※前日までに送迎ルート・ご利用者宅の状況をあらかじめ確認しておく
- ※わかりづらいところがあればそのままにせず、必ず管理者・生活相談員に確認
- ※当日改めて送迎表により送迎時間及び送迎ルートを確認する
【確認のポイント】
- 交通量(渋滞の有無)
- 工事箇所
- 道幅
- 概ねの移動時間(ご利用者宅~ご利用者宅)
- その他危険ポイント
送迎時の乗車・降車場所の確認
※前日までに、個人ファイルご利用者地図の情報を参考に確認しておく
(指定場所がある場合は必ず厳守する事)
車両点検(運行前点検)
※別添運行前点検表に基づき送迎運転職員が実施する(異常箇所は速やかに安 全運転管理者に連絡)
携行品の確認
【社員携行品】
携帯電話・運転免許証・筆記用具・ご利用者名簿(住所・電話番号)など
【車内常備品】
傘・消毒液・ペーパータオル・嘔吐対応物品・マスク・交通事故時聞き取りシート兼報告書
朝礼時の確認
【確認のポイント】
- 当日の体調確認(社員の服薬状況の確認も含む)
- 事故情報の伝達(全員で情報共有し、同じ事故は繰り返さない)
- 当日キャンセル者の確認(キャンセルが出たことによるルート変更の確認等)
- 出発時の声掛け(行ってきます・行ってらっしゃい・気をつけてお願いします等)
- 天候の確認(荒天時の危険予測と注意喚起)
- 当日の送迎運転職員の運転免許証の確認
車両間隔の運行前確認 ~車両間隔1m以上の確保~
- 毎朝各サービス管理者が実施する(管理者不在時は予め代理者を選定しておく)
- 朝礼後、送迎車両に運転職員、添乗職員が乗車する
各サービス管理者が各送迎車両の周囲1mを1周し、運転職員、添乗職員が目視で車両間隔1mを確認する - 目視確認が終了した車両から送迎へ出発する
送迎時の対応
※乗車の前に必ず車両の周りや下を確認し、コロナ禍においては窓を開け換気を行う。
出発時の確認
クリアランスソナー&バックソナーがオンになっているかを確認(送迎車両に標準装備をされている場合)
※クリアランスソナー&バックソナーとは、「障害物検知システム」の事で、障害物に一定の距離まで近づくと警告ブザーが鳴るもの
車輌運行時の安全確認
- 運転職員及び添乗職員は発進時の確認としてシートベルト装着と施錠確認を必ず行う
- スライドドアのチャイルドロックは設定しないが、添乗職員は後部座席に着座することとし、常に安全確認の上ドアの開閉を行う
- パワーウィンドウの操作は必ず視認した後運転席でのみ運転職員が行うこととし、各ウィンドウの操作レバーは常時ロック状態に設定しておく
- 止むを得ず、後進で送迎車を移動する場合は、添乗職員は下車して誘導する(大型車両後進時 誘導方法参照)
お迎え時の対応
【対応のポイント】
- 元気に明るく笑顔で挨拶する(『おはようございます』『行ってきます』等)
- ご家族やヘルパーよりご本人の体調等を確認する
- 持ち物・介護用品(杖など)・内服薬・必要な医療器具(インスリン注射器・血糖値測定器等)を忘れていないか確認する
お送り時の対応
【対応のポイント】
- 元気に明るく笑顔で挨拶する(ありがとうございました。またおねがいいたします等)
- ご本人の事業所での様子、事業所からの連絡事項をお伝えする
- 持ち物・介護用品(杖など)・医療器具等を忘れていないか確認する
乗車中の対応
【対応のポイント】
- 安全運転を最優先とし、急発進・急加速・急ハンドル・急ブレーキなど“急”がつく運転は絶対にしない。「時間がかかって当たり前」と考え、安全運転に徹する
- 車内の温度をはじめとして、運転者本位にならずご利用者への気配りを忘れない
- 適宜声掛けを行う(注:1)
- 運転中は何よりも運転に集中することが大切であるため、状況によってはご利用者に断って会話を中断することも必要(注:2)
- ラジオやカーステレオの利用は必要最小限にする
- 運転中の携帯電話の使用は絶対にしない。通話は必ず安全な場所に車両を停車させてから行う
- 車内温度に注意しながら適宜エアコンを使用したり、窓を開けるなどして新鮮な空気を車内に取り入れる(換気をする)
(注:1)【声掛けのタイミング】(基本的に、添乗職員が主導となり実施。)
- 介助でご利用者の体や車椅子などに触れるとき
- 車両の移動や乗降の準備のためご利用者のそばから離れるとき
- 車内への乗降介助を行うときやご利用者を乗せて乗降装置を操作するとき
- 車椅子固定装置でご利用者の車椅子を固定するとき
- 車両の発進・停止・後退時
- 駐車場の出入り口や段差、踏み切り、未舗装の路面などの通過で車両が揺れる場合
- 急坂などを上り下りする際(特に下り坂)
【声掛けの注意点】
- ご利用者が理解しやすいようにはっきりと、わかりやすく、 簡潔に
- 必要なときに必要最小限の内容で適度に行う
- ご利用者の同意と確認を得る姿勢を持つ
(注:2)【送迎中のご利用者との会話の注意点】
- 会話をする際はご利用者の様子を見ながら一方的に話したりすることのないよう注意する
- 会話でご利用者を不快にさせないよう注意する
・相手の話を途中でさえぎらない
・相手を一方的に批判したり、また、無視したりしない
・語気を強めたり、声を高めたりしない
・相手の話に対し、否定的なしぐさや相手を見下すようなしぐさはしない - 丁寧な言葉遣いを心がける
- ご利用者の私的な事柄にむやみに立ち入らない
乗降介助
- ※周囲の安全確認の後、乗車する側のドアを開ける。(ドアは大きく開けて中に入りやすくする)
- ※ドアの開閉について細心の注意を払う。(手や足を挟まないように配慮)
- ※ご利用者の乗降がし易いように、手すりや手を添える場所を的確に指示をする。
- ※車両の大きさにより、車高や入口の高さが違うので、スッテップや踏み台を使用し、乗降し易いように配慮する。また、乗降時に、頭や足を入口にぶつけない様に見守りをする。(転倒や怪我の防止に努める。)
- ※ご利用者をせかさない。
【麻痺がある方への対応のポイント】
- 麻痺側に立って介助する
- 乗車する際は健側から乗っていただくようにし、患側がステップ等に引っかからないように十分注意しながら介助する
- 降車する際は患側から降ろすようにし、ひざ折れ等に十分注意しながら介助する
- ご利用者によっては介助方法が異なる場合もあるため、事前確認を徹底すること
【リフト型車両への乗降介助のポイント】
- 乗降装置の可動域は余裕を持って確保する(できるだけ平坦な場所を選ぶ)
- 乗降装置の操作と乗車の際には周囲やご利用者の安全確認を行う
- 乗降装置の準備中、ご利用者を安全な場所で待機させる
- プラットフォームの外に車椅子の車輪がそれないよう注意する
- 車両に乗り込む際、天井にご利用者の頭をぶつけないよう注意する
- それぞれの操作マニュアルに基づき固定装置で車椅子をしっかりと固定する(固定の際には事前にご利用者に声掛けしてから行う)
- シートベルトを忘れず締める
※チャイルドシート固定機能付きシートベルトはシートベルトを最後まで全部引き出すとロック機能が作動し、巻き取り方向にしか動かなくなり、緩まなくなる。
→この状態になるとシートベルトを外すことが出来なくなり、ベルトを切らなければならなくなるので十分注意する
※事故を防ぐ為、シートベルトにテープなどでマーキングを行い、限界まで引っ張り出さない。(クリップなどを取り付けてしまうと改造扱いとなり、事故の際保険対象外となってしまう為、マーキングを行い、チャイルドシート固定機構のついた席にはご利用者を選んで座って頂くなど運用でカバーする。)
送迎時間に遅延した際の対応
それぞれご利用者一人一人の送迎時間が決まっております。当日の交通事情やご利用者様の事情により想定より10分以上の遅延が想定される場合は速やかに対処をする
- 現状の把握と新たな送迎時間の想定の検討をする
- 事業所(管理者または待機者)に状況の報告をする
- 事業所より、ご家族に遅延による謝罪と新たな送迎到着時間を伝える
(連絡をしない・連絡が遅れるということは、信用問題に関わる) - 添乗職員より、再度遅延の謝罪をしてから乗降介助等を行う
※ヘルパー対応のご利用者に関しては、時間が指定されているので、遅延の無いような車両の手配を行い、遅延の際は、速やかにケアマネジャーに報告し、対処する
まとめ
送迎時には、交通ルールを守ると同時にご利用者にも気を配る必要があります。特に送迎中のお手洗いの心配をされるご利用者もおられるので、事前に送迎時のコンビニ等のトイレの確認も必要になります。また送迎時に何気なくドライバーが話した世間話から、後でクレームになったこともあります。ご自宅到着前にはシートベルトを外される方も多いので、到着前には「皆さまご到着時までシートベルトのご協力をお願い致します!」のお声がけも行い、安全・安心体制で送迎をされて下さい。