介護サービスにおける高齢者の食事のポイントと調理の工夫

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介護サービスにおける高齢者の食事のポイントと調理の工夫

年齢とともに、咀嚼や嚥下、消化機能は衰えるものです。食べづらい経験が続くと、食事そのものが苦痛になり、食欲の減退につながります。そこで望ましいのは、美味しいことはもちろん「やわらかく、噛みやすく、飲み込みやすい食事」です。

味付けについては、甘味や塩味の感じ方が次第に鈍くなることから、高齢者は濃い味付けを好むという傾向があります。

好みのまま摂取してしまうと、塩分の取りすぎから高血圧を招いてしまうため薄味に慣れて頂く工夫も大切です。

今回は、介護サービスにおける食事のポイントと調理の工夫についてご紹介します。お客様が生活する上でお食事は楽しみの一つですので、食を通して、お客様の生活の意欲を引き出して頂ければ幸いです。


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食べ物の摂取、消化に関する高齢者の体の変化

食べ物の摂取、消化に関する高齢者の体の変化
口の中の変化内臓機能などの変化
・噛む力が弱くなる
・唾液の分泌が減る
・食べ物が飲み込みにくくなる
・気管に入りやすくなる
・味覚が衰えて塩味や甘味を感じにくくなる
・のどの渇きが感じにくくなる
 (脱水を起こしやすくなる)
・胃液の分泌が減って消化機能が低下する
・膵液の分泌が減って、脂肪の消化吸収が低下
・胃腸のぜん動運動が弱くなり、便秘下痢を起こしやすくなる

高齢者の栄養摂取

高齢者の栄養摂取

主食、主菜、副菜のバランスを意識する

農林水産省では、「活動量の少ない成人女性の場合は、1400~2000kcal、男性は2000~2400kcal程度が目安」と推奨されています。

しかしながら、カロリーだけを考えすぎるのではなく、まずお年寄りが好きなものを考え、その上で栄養バランスを基本に美味しく食べやすい食事を提供するようにしましょう。

栄養のバランスが良い食事になっているか確認したい場合は、下記に記載した3つのグループが揃っているかを照らし合わせると良いでしょう。また、下記以外にも乳製品や果物を追加するとさらに良くなります。

主食・・・ご飯、パン、イモ類など
炭水化物を多く含み、体を動かすエネルギー源となる

主菜・・・肉類、魚類、大豆製品など
たんぱく質を多く含み体を作る、もとになる

副菜・・・野菜類、海藻類、きのこ類
ビタミン、ミネラルを多く含み、体の機能を高める潤滑油となる

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カルシウム、食物繊維、亜鉛摂取を積極的に

特に高齢者の場合は骨を丈夫にするカルシウム(乳製品に豊富)、腸の活動を促す食物繊維(根菜、海藻、きのこなどに豊富)は積極的に摂取しましょう。

また、ミネラルの亜鉛は味覚の衰えを防ぐ働きがあり、貝類、肉類、豆類に豊富に含まれています。

甘味、塩味の感じ方を正常に保って、濃い味付けへの嗜好を強くしない為に亜鉛も意識的に摂取しましょう。

食事に喜びをもたらす四季折々の行事食

四季折々の旬の食材をふんだんに使った食事を提供すると食事の時間が華やぎます。高齢者は楽しみ・喜びといった感情の度合いが薄れる傾向にあります。食事による演出で生活にメリハリをつけ感情を呼び覚ましましょう。

調理の工夫

調理の工夫

高齢者の苦手な食材を知っておく

小さく刻んでも、糖度が少なく、口の中でかけらがバラバラとバラけるものは高齢者にとって食べにくいものです。食べ物を飲み込む動きがなかなかできず、気管に入ってむせたりする原因にもなります。

たとえばたくあんの場合はみじん切りより千切りや薄切りが良く、それを最初からご飯に混ぜておけば尚良いでしょう。

このように、刻んでからハンバーグに混ぜたり、和え物にするなど、口の中での粘着性が増す工夫をすれば食べやすくなります。こんにゃくは、施設や事業所ではおでんの材料に使われることが多いですが、のどに詰まらせる事例もみられますので、注意が必要です。

●食べづらさを感じる食品
①かまぼこ
②こんにゃく
③たくあん
④タケノコ
⑤炒めたひき肉   など

下ごしらえの工夫

●野菜を食べやすくするコツ


①小さく刻む
口の中で持て余すことのない大きさに刻む。薄切りは5mm以下。

②切り方にひと工夫
葉物野菜は縦の繊維を断ち切るように包丁を入れる。そのほか大根に隠し包丁を入れる。ごぼうはささがき、ナスはトラむきにして格子に切れ込みを入れるなどする

③皮をむく
大根、ジャガイモなど、皮が固い野菜は厚めに皮をむくと短時間でやわらかくなる。トマトは湯むきし、ピーマンは焼いて皮むきする。

④煮る・ゆでるが基本
煮崩れない程度にやわらかいことが食べやすさの第一条件。食材にもよるが舌と上あごでつぶせるぐらいのやわらかさが目安。

⑤炒めものは要注意
炒めものは野菜の歯ごたえがかなり残るので、噛む力の衰えた人には不向き。「炒め煮」にした方が良い。

⑥和え物にする
練りごまや豆腐など粘着力のあるもので和えると、口の中で食べものがまとまっていて飲み込みやすい。


●魚を食べやすくするコツ


①一番好まれるのはシンプルな焼き魚、煮魚
魚の味をそのまま楽しめるが脂肪分の少ないものだと身がパサつくこともある。

②照り焼きにしたり、煮汁にとろみをつける
醤油をつけて照り焼きにしたり、煮汁に水溶き片栗粉を足してとろみをつけると良い。

③ホイル焼きやあんかけにする
好みにもよるが、ホイル焼きは魚を蒸して焼くので身がしっかり仕上がる。野菜などを具にしたあんをかけても食べやすい。

④小骨に注意
料理を食べにくくしたり、のどに引っかかるなどのトラブルを起こす可能性のある骨はなるべく取り除く。

⑤刺身は食べやすく、調理も手間いらず
マグロ、ホタテ、甘えびはそのままでも食べやすい。イカ、鯛は包丁を細かくいれ、一口大に切る。


●肉を食べやすくするコツ


①薄切りの肉を使う
厚い肉を叩いてのばすより、しゃぶしゃぶ用など薄い肉を使う方が食べやすく なる。

②火はさっと通す程度に
火を通しすぎると、肉が固く締まって噛み切りにくくなる。焼いたり、炒めたりする時は加熱を手早くすること。
※分厚い肉は逆にじっくりと煮込み、やわらかく仕上げること。

③片栗粉で旨みたっぷりと
薄い肉でも片栗粉を全体にはたいておけば、旨みが逃げない。

④トンカツは薄切り肉を重ねる
薄切り肉を重ねたトンカツなら噛み切りやすい。揚がったらすぐに出し汁につけると、衣が適度にしっとりして、口の中が痛くなることもない。


まとめ

まとめ

人は、健康に生活したいと願っています。健康を保つためには、食べ物をバランスよくとる必要があります。

そして食事は、日常生活上において楽しみのひとつであり、食べ物をおいしく楽しく食べていただくことは、生き生きとした生活の原動力となります。そのためには、調理の工夫や味の一元化も必要です。

定期的に食事のアンケートを取り、お客様の満足度を上げる食の質の改善に心がけて下さい。

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