個別機能訓練加算とは、利用者に対して個別に機能訓練を計画し、実施する介護施設・事業所が算定できる加算です。令和6(2024)年度介護報酬改定ではデイサービス(通所介護)の個別機能訓練加算に、算定要件や単位数などの変更点がありました。
この記事ではデイサービスの個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロ、(Ⅱ)について、概要を基本の考え方からわかりやすく解説します。算定の流れや必要な書類、実際の機能訓練指導員の配置基準などについてまとめています。
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目次
2024年度介護報酬改定対応!デイサービスの個別機能訓練加算の算定要件・単位数
社会保障審議会介護給付分科会の「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」などの資料をもとに、デイサービス(通所介護)における個別機能訓練加算の算定要件と単位数などの基本情報をまとめました。介護報酬改定で変更のあった部分は赤字で記載しています。なお、地域密着型通所介護も同様の算定要件・単位数です。
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ | 個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ | |
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機能訓練指導員の配置 |
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単位数 | 56単位/日 | 76単位/日 |
共通の算定要件 |
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個別機能訓練加算(Ⅱ) | |
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単位数 | 20単位/月 |
算定要件 |
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2024年度介護報酬改定の変更点
変更があったのは、(Ⅰ)ロの算定要件と単位数のみです。単位数は76単位に引き下げられ、その分、機能訓練指導員の配置要件が緩和されました。これまで追加で配置する機能訓練指導員はサービス提供時間帯を通じての配置が必要でしたが、今後は配置時間の定めがなくなります。機能訓練指導員らが施設・事業所内でより効率的に業務を行うための変更点です。
上記のように、配置時間の定めがなくなることで、機能訓練指導員は配置時間以外は介護職や看護師の業務に従事したり、別の事業所で働いたりなど柔軟な対応が可能になります。ただし配置時間は、個別機能訓練の計画作成において主体的に利用者に関われる時間や、機能訓練を評価・測定するのに十分な時間を確保することが必要です。
令和5年に行われた財務省の財政制度分科会では、今後の介護報酬改定における主な改革の方向性が提言されており、そのうちのひとつに「担い手の確保」が挙げられました。介護現場の担い手を増やすには、職員の処遇改善など働きやすい環境づくりが重要と考えられています。そのために介護施設・事業所の収益増につながる加算の取得は重要であり、今後も制度の複雑さが解消され、取得を促す改訂が行われる可能性が高いと予想されます。
(Ⅰ)イ・ロ、(Ⅱ)の違い
デイサービスにおける個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロの違いは、機能訓練指導員の配置要件です。イは専従で1人以上の機能訓練指導員を配置(人員配置基準上の機能訓練指導員で構わない)する必要があります。一方、ロではイの要件に加え、さらに1人以上の機能訓練指導員を配置しなければなりません。
個別機能訓練加算(Ⅱ)では、(Ⅰ)の要件に満たしたうえでLIFEを活用することが要件です。最低3ヶ月に1回、LIFEに利用者ごとの基本情報を入力し、計画の見直しなどの際にLIFEのフィードバックを活用することが求められます。
なお、上記(Ⅰ)と(Ⅱ)は併算可です。
デイサービスの個別機能訓練加算Q&A
厚生労働省の資料から、デイサービスの個別機能訓練加算に関するQ&Aを抜粋して紹介します。
Q.機能訓練指導員2人配置のうち1人が休みの場合は?
機能訓練指導員を2人配置するところ、休みなどの理由で1人しか配置できない場合は、個別機能訓練加算(Ⅰ)ロではなく、(Ⅰ)イを算定します。このように営業日ごとの算定が可能です。
ただし本来2人の配置が1人に減ることで、営業日ごとのサービスの質に偏りが出る可能性があります。介護施設・事業所側は、事前に利用者に説明、かつ同意を得ることが必要です。
Q.配置すべき機能訓練指導員は病院や診療所などとの連携により確保することは可能?
訪問看護ステーションや診療所などとの連携では、個別機能訓練加算の機能訓練指導員の配置要件を満たすことができません。個別機能訓練加算の算定要件は、算定する介護施設・事業所で機能訓練指導員を配置することを定めているためです。必ず、事業所内の人員が機能訓練指導員を担いましょう。
機能訓練指導員として配置できるのは、看護師や言語聴覚士、柔道整復師などの資格持つ人材です。併せて機能訓練指導員が在籍する事業所で6ヶ月以上勤務し、実務経験があればはり師やきゅう師も従事することができます。
個別機能訓練加算の算定に必要な書類
主に以下の書類が必要です。各都道府県や自治体により提出書類が異なる場合もあるため、事前に確認しましょう。
- 介護給付費算定に係る体制等に関する届出書
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表
- 従業者の勤務の体制及び勤務形態一覧表
- 資格証の写し/研修修了書の写し
資格証の写しなどは、配置する機能訓練指導員の資格をチェックするためのものです。これらの書類は、算定を開始したい月の15日までに提出しましょう。
そのほか個別機能訓練計画書は作成後、3ヶ月に1回の頻度で提出が必要です。様式は厚生労働省のホームページをご確認ください。
個別機能訓練加算の流れ
管轄の都道府県または自治体へ必要な書類を提出したら、算定要件に従い、個別機能訓練を実施します。実施の流れを以下で詳しく解説します。
①ケアマネジャー・利用者などへ事前説明
個別機能訓練加算を算定する際は、ケアプランへの位置付けが重要です。そのため、必ず事前にケアマネジャーの同意を得て、ケアプランへの位置づけを行ってもらったうえで、利用者とその家族に個別機能訓練加算の必要性について説明してください。
②居宅へ訪問し、情報収集
利用者の心身の状態やニーズ、利用者宅の状況を知るために、自宅訪問し調査を行います。その際、厚生労働省の「興味・関心チェックシート」や「生活機能チェックシート」を活用します。
興味・関心チェックシートは利用者のニーズを把握するために用いる書類です。生活機能チェックシートにはADL・IADLなどの項目があり、日常生活動作のチェックと、その課題を抽出するために用います。ADLの評価にはバーセルインデックスの評価基準が役に立ちます。
③利用者ごとに計画を作成
訪問調査の結果をもとに、利用者ごとに個別の機能訓練計画を作成します。必ず看護師や准看護師、介護職員などの多職種が集まるケアカンファレンスで内容を確認することが必要です。個別機能訓練計画書の書き方は以下の記事も参考にしてください。
その後、利用者とそのご家族へ計画書の内容について説明し、同意を得る必要があります。併せてケアマネジャーへも個別機能訓練計画書の共有を行ってください。
④機能訓練を実施
個別の機能訓練は、週1回以上を目安に実施します。個人ごとに1対1で対応することも可能ですが、目標設定が似通っている5人程度の利用者に対し、グループで機能訓練を実施しても構いません。
⑤機能訓練の評価・見直し
3ヶ月に1回の頻度で、看護師や准看護師、介護職員などの多職種が集まるケアカンファレンスを実施し、機能訓練の結果などを共有したうえで、評価・見直しを行ってください。同様の頻度で利用者宅を訪れ、機能訓練の進捗状況の共有や、日常生活動作の確認などを行う必要もあります。
なお、個別機能訓練加算(Ⅱ)においてはLIFEの活用が必須のため、フィードバックされた情報を確認し、機能訓練の評価と計画の見直しを行います。
個別機能訓練などの一体的計画書の見直しについて
令和6(2024)年度の介護報酬改定で、個別の機能訓練を含む一体的計画書の見直しが行われました。個別機能訓練やリハビリテーション、口腔、栄養管理などをより一体的に進めるための改定です。
具体的には項目の整理や、LIFEへの情報提出を見据えた様式に改訂されています。厚生労働省のホームページには以下の様式がアップされているので、あわせてご確認ください。
個別機能訓練加算を算定して利用者の自立支援を促進
令和6(2024)年度介護報酬改定で、デイサービスの個別機能訓練加算において、算定要件と単位数の変更が行われました。機能訓練指導員の配置要件が緩和され、以前より算定しやすい加算となっています。
個別機能訓練加算は、利用者の自宅での生活改善につながる取り組みです。機能訓練やリハビリを重視する経営体制は、利用者のニーズを満たし、顧客獲得にも良い影響を与えます。結果、収益の増収につながるため、この機会にぜひ算定を検討してみてください。