勤務間インターバル制度とは?推奨時間や助成金、導入方法を紹介

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勤務間インターバル制度とは?推奨時間や助成金、導入方法を紹介

働き方改革関連法により労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(以下「労働時間等設定改善法」といいます。)が改正されたことで、「勤務間インターバル制度」の導入が企業の努力義務となりました。

勤務間インターバル制度は、翌日の勤務開始までに一定時間以上の休息を確保する制度です。導入はあくまで企業の努力義務になっていますが、従業員の健康状態を維持するためにも導入を検討するのが望ましいでしょう。

そんな勤務間インターバル制度について基本から理解できるよう、制度の概要やメリット・デメリット、助成金などについてわかりやすくまとめました。制度を導入するためのステップや、導入企業の事例も参考にしてみてください。


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勤務間インターバル制度とは

勤務間インターバル制度とは、労働者が前日の勤務終了後から翌日の勤務開始までに、一定の休息時間を確保するための制度です。厚生労働省の助成金である「はたらき方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」では、「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の休息を勤務終了時刻から次の始業時刻までに設けることを助成金支給対象となる取組みの成果目標とされて推奨されています。

勤務間インターバル制度を導入すれば、労働者の健康維持や長時間労働の防止、ワーク・ライフ・バランスを実現させるとともに、企業としても生産性を向上させることが可能です。

勤務間インターバル制度のイメージ図
出典:勤務間インターバル制度をご活用ください|厚生労働省
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2019年から努力義務化

勤務間インターバル制度は「労働時間等設定改善法」の改正により、2019年から制度の導入が努力義務化されました。長時間労働は過労死の危険性が高まるため、国は適切な休息時間を確保できる勤務間インターバル制度の導入をさらに進めたいと考えています。

実際に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」では、過労死をゼロにするための数値目標が見直されました。

  • 労働者数30人以上の企業のうち、令和7年(2025年)までに勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする
  • 労働者数30人以上の企業のうち、 令和7年(2025年)年までに勤務間インターバル制度を導入している企業割合を15%以上とする

なお、勤務間インターバル制度の導入は努力義務のため、導入しないからといって罰則を科されることはありません。ただし、従業員の健康状態への配慮、あるいは企業の生産性を向上させるといった目的のうえでは、導入を検討するのが望ましいでしょう。

2024年4月から9時間のインターバルが義務化になった職種も

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(労働省告示第七号)が2022年12月23日に改正され、2024年4月1日から適用されます。

これにより、物流・運送業のトラック運転手やタクシー運転手について、9時間以上のインターバル時間を設けることが義務化され、11時間以上のインターバル時間を設けることが努力義務となっています。また、医療法の改正により、一定の医師について、9時間又は18時間のインターバルを確保することが義務化されています。

インターバル時間の確保により所定の始業時間を超えた分の対応

インターバル時間を確保することで、所定の始業時間を超えてしまうことが考えられます。その際には、次のような対応が考えられます。

インターバル時間と翌日の所定労働時間が重複する部分を働いたものとみなす

インターバル時間と翌日の所定労働時間のイメージ図
出典:制度の導入・運用に向けて | 働き方・休み方改善ポータルサイト

1つ目は、労働時間と重なる休息時間を、労働しているとみなす方法です。まず、9〜11時間の休息時間を確保するため、終業時刻が遅くなった従業員の始業時間をその分繰り下げます。出社が遅れた分も働いたとみなされるので、従業員は通常の終業時刻どおりに退勤が可能です。

インターバル時間と翌日の所定労働時間が重複したとき、勤怠開始時刻を繰り下げる

インターバル時間と翌日の所定労働時間のイメージ図2
出典:制度の導入・運用に向けて | 働き方・休み方改善ポータルサイト

2つ目は、始業時間を繰り下げる方法です。上記と同じく、インターバル時間を確保したうえで翌日の始業時刻を調整しますが、その分だけ終業時刻も繰り下げられます。

以上のような方法で勤務間インターバルを確保する場合、その旨を踏まえる形で就業規則などの規定を整備することが必要です。就業規則規定の記載方法は下記を参考にしてください。

就業規則規定例|厚生労働省東京労働局

勤務間インターバル制度導入のメリット・デメリット

勤務間インターバル制度の導入は、従業員の健康維持だけでなく、新規採用の確保や定着率の向上にもつながります。さらに、企業の生産性向上にも貢献するでしょう。

一方で、新たにこの制度を導入する場合、制度が定着するまでに時間がかかることがあります。また、適切な環境を整えるためのコストがかかる点もデメリットの一つです。

勤務間インターバル制度に関わる助成金

勤務間インターバル制度には、中小企業向けの助成金制度が用意されています。「働き方改革推進支援助成金 勤務間インターバル導入コース」について簡単にまとめました。

【働き方改革推進支援助成金 勤務間インターバル導入コース】
申請締め切り 2024年11月29日(金)
概要 勤務間インターバル制度を導入した企業に対し、導入にかかった経費の一部を助成する制度
対象となる取り組み 労務管理担当者や労働者に対する研修、制度運用に必要なソフトウェアや機器などの導入・更新、外部専門家のコンサルティングなど
補助率 3/4 ※条件によって上限額あり

助成金に関する詳細は、厚生労働省のページを参考にしてください。

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)|厚生労働省

勤務間インターバル制度の導入・運営方法

勤務間インターバル制度は労使間でしっかり話し合いをしたうえで、検討・設計・運用・見直しの4つのフェーズに沿って導入していきます。各フェーズにおける具体的な対応を以下にまとめました。

フェーズ1 制度導入を検討する
– 自社の現状を把握し、導入目的を明確にする(例:長時間労働の防止、健康経営の実現)
– 企業全体として取り組む姿勢を従業員に発信し、制度の定着を促す
フェーズ2 制度を設計する
– ルール設定や制度内容の設計を行う(例:制度の対象、インターバル時間、イレギュラー時の対応、申請手続きの有無・方法)
– 労働時間の管理方法の見直しや就業規則の改定を行う
フェーズ3 制度を導入・運用する
– 社内外(従業員や顧客、取引先など)へ周知し、運用を開始する
– 業務状況に応じた仕事量の調整など、制度を活用しやすい環境づくりを行う
フェーズ4 制度内容・運用方法を見直す
– 導入後に効果検証を行い、必要に応じて制度内容や運用方法を見直す

フェーズ3の社内外への周知について、従業員に対しては通知だけでなく説明会の場を設けるなどの対応も検討してください。顧客や取引先に対しても、制度導入に当たって配慮してほしい点などを説明します。

特に顧客や取引先は、制度の導入に不安を感じる可能性があります。その場合には、以下の点を参考にしながら対策しましょう。

  • サービスの質の低下に不安を感じる方に対しては、制度の導入が従業員の健康を確保することができるようになり、サービスの維持・向上につながると説明。また、勤務時間の関係で異なる担当者となった場合でも同等以上のサービスを提供できるよう教育訓練を実施し、不安感を取り除く。
  • 新規の取引先に対しては、事前に企業方針としてインターバル時間確保に取り組んでいること、短納期発注や頻繁な発注変更を行わない配慮が労働時間等設定改善法で規定されていることを伝えておく

また、フェーズ4の見直しを行う際には、従業員や労働組合に対してアンケートやヒアリング調査を行うと、実態が把握しやすくなります。

詳しくは、以下よりダウンロードできる資料を参考にしてみてください。

勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル|働き方・休み方改善ポータルサイト

介護事業所における導入事例を紹介

続いて、シフトの調整や勤怠管理システムの利用など、さまざまな工夫で勤務間インターバル制度を導入した中小企業の事例を3つ紹介します。厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」には、こうした事例がいくつも紹介されているので、制度導入を目指している事業所は参考にしてみてください。

事例1)シフトの組み方を工夫してインターバル時間を確保

東京都のある社会福祉法人では、「遅番→日勤→早番」のように逆行するシフトを組まないようルールを徹底しています。この仕組みにより、約15時間はインターバル時間が確保できるようになりました。

入居者の緊急対応などでインターバル時間が取れない従業員がいた場合は、シフトを柔軟に組み替えて対応しています。就業環境を整えたことで採用活動にもよい影響が出ているようです。

事例2)業務効率化を図り、残業させない体制を強化

沖縄県のある医療法人では、業務の削減と効率化によって残業を減らし、インターバル時間の確保につなげています。たとえば備品倉庫のマッピングを行い、補充の作業を効率化したり、水に溶けやすいとろみ調整食品で時間を削減したりなどの工夫を行なっています。

さらに出勤後は全員がその日のシフトを確認し、どの職員がどの時間帯に勤務しているか把握する、退勤時間になったらリーダーが声かけをするなどして残業する従業員が出ないようお互いに声をかけ合う体制を作りました。

事例3)勤怠管理システムを使って効率よく管理

香川県のある民間運営会社では、業務効率化を図ることで対応。具体的には、勤怠管理システムを使って労働時間を管理し、各種申請を行えるようにしています。今まで紙で管理していた業務の手間が減り、作業時間の短縮につながりました。

さらに、インターバル時間が確保できていない従業員に通知を送るアラート機能も活用。確実にインターバル時間を確保できる体制を整えています。

生産性向上にもつながる勤務間インターバル制度の導入を検討しましょう

勤務間インターバル制度を導入することで、従業員の健康維持や長時間労働の防止などにつながります。その結果、従業員の確保や定着、あるいは企業の生産性向上といった効果も期待できるでしょう。ただし、制度の定着には時間がかかるほか、環境づくりなどにコストが発生する場合もあります。

介護事業所で勤務間インターバル制度を導入しているケースは少なくありません。働きやすい職場づくりや企業成長に向けて、本記事の内容を参考に勤務間インターバル制度を検討してみてください。

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