高齢者の体調管理~日常生活の把握~

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季節の変わり目は、特に利用者の体調管理に気を配らなければなりません。

介護職員の使命は介護サービスの提供のみでなく、利用者の体調管理も含まれているということを自覚し業務を行ってください。

今回は『高齢者の体調管理~日常生活の把握~』についてご紹介いたします。施設や事業所のサービス向上にご活用いただけたら幸いです。


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日常生活の把握

数値だけではなく「普段と違う」ことが健康状態の重要な判断基準となります。

体温・血圧・脈拍などのバイタルサイン、顔色や全身状態などを総合的に勘案して判断する必要があります。

病歴・服薬の把握

現在までにかかった病気やけがなどの既往歴、現在治療であるかどうかを把握することが必要です。

その上で、現在服用している薬、使用している外用薬、貼用している貼薬、頓用で処方されている薬剤を確認します。

薬剤アレルギーも把握しましょう。お薬手帳をお持ちの方には、手帳を確認させていただくと確実です。

普段のバイタルサインの把握

フェイスシート(利用者の基本情報を記載するもの)作成時、入居時、ご利用開始時において、身長・体重・通院時のバイタルサインなどの情報を聞き取りましょう。

バイタルサインの目安

  • 体温 35.0~36.0℃
  • 血圧 おおむね 最高血圧 140mmHg 最低血圧 90mmHg
  • 脈拍 安静時 60~80回/分

バイタルチェックの方法と注意点

バイタルサインとは

バイタルサインとは、生命兆候、生きていることを示すしるしのことです。狭義では体温、呼吸、脈拍、血圧を指し、広義には意識・精神状態、食欲、排尿・排便、睡眠、神経反射などを含みます。

バイタルチェックの必要性

一般的な正常値や体調に変化があった場合だけに計測するのではなく、利用者の普段の状態(数値)を知っておくことで、異変かどうか判断する客観的な目安になります。

行う上でのポイント

測るだけでなく、記録し、必要に応じて、ご家族や医療機関へ報告することが大切です。 

主なバイタルチェックの方法と注意点

正常値観察方法注意点
体温35℃台(高齢者はやや低めがほとんど)測定部位は腋下(わきの下)が一般的。よく汗を拭いてから体温計をはさむ。痩せていて腋下で測定しにくく正確な値が出ない場合は、口腔、外耳道など他の部位などで測定。電子体温計が一般的だが、測定方法が適切でないと誤差が大きくなる。食後や運動後は体温が上がるので、30分位安静にしてから測定する。微熱でも注意が必要(平熱が36℃としても、36.5℃台は微熱と考えてよい)
呼吸1分間に15~20回安静状態の時に、胸やみぞおちの上下運動の数を1分間数えて呼吸数を測定。布団の上から観察したり、脈拍測定後そのまま胸に手を置き動きを感じ取るなど。呼吸の深さやリズム、音、咳・痰、息苦しさなどもあわせて観察する。呼吸は本人の意思でコントロールできるので、本人に気づかれない状態で測定する。
脈拍1分間に60~90回(高齢者はやや少なめ)ひじの内側に人指し指、中指、薬指の3本を軽く当て、1分間計測する。測定者の脈拍と混同するため親指は使わない。リズムの乱れや強弱などもあわせて観察する。測定者の手は温かくしておく、緊張時、発熱時、運動・入浴後などは脈が速くなるので、安静時に計測する。
血圧最高血圧(収縮期血圧)139mmHg以下、最低血圧(拡張期血圧)89mmHg以下電子血圧計を使用。安静な体位をとり、上腕に血圧計を指が1~2本入る程度のゆるさに巻く。色々な血圧計があるので、取扱説明書を確認してから使用すること。

日常生活の把握のポイント                 

  • 食事の把握(普段の食事内容と摂食量)
  • 嗜好品の把握(どういったものを好むか、摂取量)
  • 生活のリズムの把握(1日、1週間)
  • 運動の把握(普段の運動量)
  • 睡眠の把握(睡眠時間、入眠までの過程、寝起き)

健康管理

環境整備

  • 室内温度は、外気温との差を4℃以内に設定
  • 湿度は、60%を維持できるよう管理
  • 健康管理に必要な器具については、管理責任者および看護師が保管管理
  • 手洗い・うがい・消毒を徹底の働きかけ

一般的な医療ケア

  • 爪切り(爪に異変がないか確認) 
  • 体温測定
  • 血圧測定
  • 外用薬塗布・湿布貼用・目薬の点眼
  • ストーマケア
  • カテーテル類の管理
  • 胃ろうの管理

異変が見られたとき

異変が見られたときは、状況に応じて機能訓練などを中止し、管理者・看護職員・主治医などに報告・相談して対応します。バイタルサインが安定していても、全体に元気がない、顔色が悪い、というような場合はのちに状態が悪化する可能性もあります。

ご家族へも連絡しましょう。特に症状が持病・既往歴に起因すると考えられる場合には、緊急以外の場合でも連絡ノートなどで報告するようにします。

利用者からの訴え(体調が悪い、入浴したくないなど)がある場合には、バイタルサインに異変がなくても、原則として利用者の希望に沿う形で過ごしてもらい、必要時食事メニューの変更などを行います。

生命に関わる発作や事故が起きた場合には、応急処置をすると同時に救急車の手配、主治医・ご家族への連絡を行います。その際は、経過をすぐに報告できるように記録類を準備し対応します。

報連相が重要

利用者の体調管理において必要なのは、日々の細かい報告・連絡・相談です。

「利用者が大丈夫と言ったから、報告が遅れた」という言い訳は、介護のプロとしては通用しません。「大丈夫」と決めつけるのでなく「念のため」の意識を持って行動すると、利用者の体調の悪化も防止できます。施設や事業所の研修、申し送りの際も繰り返し周知徹底を心がけましょう。

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