仰臥位から起き上がりの介助は、仰向けに寝ている利用者に、横向きに寝返りを打ってもらうための介助です。この介助はオムツ交換の際などに使用します。また、端座位から移動の介助は、人が立ち上がるときの動作などでも必要になります。
今回は『介護現場で活かす!仰臥位から起き上がりと端座位からの移動』についてご紹介します。皆さんのケアの質の向上にご活用頂ければ幸いです。
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目次
仰臥位から起き上がり
自然な動き
寝返りを打つときの、自然な動きは以下の3点です。
- 膝を立て、移動する方向に顔を向けます。
- 膝を移動する方向に倒します。
- 移動する方向に腕を持ってきます。
重心の動き
仰臥位から側臥位になるときの、自然な動きを思い出してください。
これは、重心を側臥位の重心に近づけるために行います。このときに重心を移動しやすくするために膝を立てています。これにより、人間の体で1番重いお尻を動かしやすくしているのです。
危険予測
重心の動きから予測される危険性は、以下の2点です。
- 側臥位になったとき、下になる腕を巻き込み、腕を痛めてしまう危険性
- 膝を倒して腕を移動する方向に持っていく動作のとき、腕を移動させる時間がかかりすぎると体がねじれて腰を痛める危険性
介助の手順
- 側臥位になるときには、顔・膝・腕をタイミングよく介助しましょう。重心を移動しやすくするために、利用者にも協力してもらい顔を移動する方向に向けます。そして、腕を巻き込まないよう体の上で両腕を組んでもらいましょう。
- 膝を立て、利用者の膝・臀部・肩の順に手を添え、ゆっくりと膝を倒します。
- 最後に身体のねじれを作りすぎないよう膝、肩という順番に倒していきます。
自然な動きでは、腕を向く方向に持っていくという動きでしたが、介助が必要な方には、肩を支えると移動しやすくなります。
端座位で奥から手前へ
自然な動き・重心の動き
人は、座っている状態から手を使わず前方に移動するとき、臀部を交互に上げながら少しずつ前に移動します。このとき、傾いている側に重心が移動しているので、反対側は軽くなり、お尻が浮いている状態になります。
よって、軽くなったお尻を前方に進めるだけで移動することができます。
危険予測
重心の動きが理解できると、どちら側に転倒する可能性があるか予測することができます。つまり、転倒する危険性がある方を支えればよいのです。また、自立支援を実践するためにも「お尻を少し手前にずらしてもらえますか?」などの声かけを行いながら自然な動きを思い出し、利用者自身にも協力してもらいましょう。
介助の手順
(1)介助者は、足を大きく開いて腰を落とし、安定した姿勢をとります。
(2)利用者の上半身をしっかり支えながら横に傾けます。傾く方向に転倒する危険があるため、介助者は前に立ち傾く方に一歩足を踏み出して腰を落とし、腕全体で支えられるような体勢を整えましょう。傾く方向へ声かけを行い、誘導します。
(3)利用者が臀部を動かすことができない場合は、軽くなった臀部を介助者が奥から手前へ引きます。
(4)反対側も同様に、傾くほうに一歩足を踏み出した基本姿勢を取ります。
(5)上半身を支えながら横に傾けてもらい、傾いていた方と反対側の臀部を奥から手前へ引きます。
(6)利用者の上半身をまっすぐにし、安定した座位を取れたら介助終了です。
端座位から立位へ
自然な動き
人は立ち上がるときに、「かかとを引く」「前屈みになる」といった2つの動作をしています。このどちらが欠けても、人は決して立ち上がることはできません。
重心の動き
端座位から立位までの重心の動きは以下の通りです。
- 端座位から立位への移動の際に、重心が後方から前方に移動します。
- 前屈みになることで、座っているときの重心が立ったときの重心に近づきます。
- かかとを引いて、重心の移動幅を少なくします。足がついている位置に立ち上がるので、かかとが前にあると、それだけ重心をたくさん移動させなければなりません。
危険予測
重心の動きから予測される危険性は以下の2点です。
- 立ち上がるときに重心が前に行き過ぎると、支持基底面から外れて前のめりになり、前方に転倒する危険性があります。
- 立ち上がる途中でバランスを崩して重心が後方に移動すると、後方に転倒する危険性があります。
介助の手順
(1)必ず、事前に動作の説明をして了解をもらいましょう。「かかとを引いてもらえますか」「私に寄りかかりっておじぎをするように立ち上がってもらえますか」などの声掛けを忘れないようにしましょう。
(2)このとき、端座位の状態で利用者の足を少し開いておくと、立位を取ったときに安定します。
(3)
- 介助者は膝を曲げて重心を低くし、基本姿勢を取ります。
- 上半身を前に倒して利用者と近付き過ぎると、利用者が前屈みになるという自然な動きを邪魔してしまいます。
また、介助者自身が腰を痛める危険があります。
(4)介助者がしっかりと足を開いて腰を落とすことで、利用者の体が自然に前屈みになります。
(5)しっかりと前屈みになってもらったら、そのまま介助者は足を伸ばして立ち上がります。
(6)利用者が立ち上がりましたが、このままでは介助者へもたれかかるような姿勢になってしまい、不安定な立位になってしまいます。
(7)利用者に安定した立位を取ってもらうために、立位を取ったときは利用者の腰を手前にいる介助者側に少し引くと、骨盤の上にきちんと上半身が乗り、立位が安定します。
介助は「自然な動き」を利用しよう
直線的に移動させる介助は、利用者の自然な動きを無視した介助となってしまいます。利用者を、短い距離で無理やり立ち上がらせようと、介助者自身が前屈みになって、直線的に上の方へ力いっぱい持ち上げることはやめましょう。
人は自然に立ちあがるとき、頭が前から後ろへ弧を描くように移動します。介助者はがに股となり、上半身を前後にスライドできるような柔軟な姿勢で、利用者の頭が弧を描くような移動介助を行い、利用者の安心・安全のケアに常に努めましょう。