個別機能訓練加算の算定に必要な個別機能訓練計画書。はじめて個別機能訓練計画書を作成する方に向けて、最新の情報をわかりやすくまとめました。厚生労働省の資料を参考に、作成方法の手順や記載項目について解説していきます。
また、個別機能訓練計画書で大事となる長期目標や短期目標、プログラム内容の設定方法についても実例を交えて紹介します。実際の記入例を確認したい方もぜひ参考にしてみてください。
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目次
個別機能訓練計画書とは?
個別機能訓練計画書とは、個別機能訓練加算、生活機能向上連携加算を取得するにあたって必要となる計画書のことです。基本的に機能訓練指導員がメインとなって作成します。なお、通所介護の場合は、通所介護計画書に含めることで算定が可能です。
関連記事リンク:通所介護計画書の基本・書き方と記入例を紹介
個別機能訓練計画書では利用者の希望や身体の状況、ご家族の意向などを踏まえて、利用者ごとに機能訓練の目標を定めます。本人やその家族に対する説明資料として活用できるほか、訓練を行うスタッフ間での目標のすり合わせにも役立つ書類です。
また、平成27年度の介護報酬改定において、個別機能訓練計画書を作成する際に「ご自宅への居宅訪問」が必須となりました。そのため実際に訪問して、課題や問題点、利用者が自宅でどのように過ごしているかなどを把握し、目標に反映させる必要があります。
個別機能訓練加算の目的や加算ⅠとⅡの違い
個別機能訓練加算は利用者ごとに機能訓練の目標を定め、実施する事業所が算定できます。身体機能と生活の質の向上を図ることが主な目的となります。算定するには、機能訓練指導員の配置や個別機能訓練計画書の作成などが必要です。さらに3ヶ月に1回の機能訓練を実施し、その都度、計画の評価と見直しを行わなければなりません。
個別機能訓練加算は加算Ⅰのイおよびロ、加算Ⅱの3種類があります。主な要件と単位は以下で簡単にまとめました。
加算Ⅰ(イ) | 加算Ⅰ(ロ) | 加算Ⅱ | |
---|---|---|---|
単位数 | 56単位/日 | 85単位/日 | 20単位/月 |
算定要件 |
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個別機能訓練計画書に記載する項目
令和3年度介護報酬改定により、個別機能訓練計画書は重複する記載項目が整理され、新たな様式が公表されました。具体的に記載する項目は以下のとおりとなります。
- 作成日や計画作成者
- 利用者の氏名と生年月日
- 要介護度
- 日常生活自立度
- Ⅰ 利用者の基本情報
- Ⅱ 個別機能訓練の目標・個別機能訓練項目の設定
- Ⅲ 個別機能訓練実施後の対応
ここではそれぞれ画像で分けて記載例を解説していきます。
Ⅰ 利用者の基本情報
まず個別機能訓練計画書の上部から「Ⅰ 利用者の基本情報」までの記入例を紹介します。
上部には、計画書の作成者や作成日、利用者の氏名、日常生活自立度などを記入します。初回作成日は、1回目の利用日より前の日付を書いてください。個別機能訓練加算では3ヶ月に1回の訓練実施が要件となっているので、計画書の更新時は前回作成日から3ヶ月以内の日付を記入することがポイントです。
次に「Ⅰ 利用者の基本情報」の欄では以下の情報が必要となります。
- 本人および家族の希望
- 社会参加の状況
- 居宅の環境
- 健康状態・経過(病名や治療経過、合併疾患、機能訓練時の留意事項など)
令和3年度に追加された項目は「利用者本人の社会参加の状況」「居宅の環境(環境因子)」「治療経過」の3項目です。計画書の作成には、利用者の居宅訪問が必須となりますので、ご自宅へ訪問して直接ヒアリングをしたり、生活環境を目で確認を行うことなどして書類を作成してください。健康状態・経過については、ケアマネジャーが作成したケアプランをもとに記入していきます。
Ⅱ 個別機能訓練の目標・個別機能訓練項目の設定
「Ⅱ 個別機能訓練の目標・個別機能訓練項目の設定」は個別機能訓練計画書で特に大切な項目となります。
記入する項目は以下のとおりです。
- 短期目標
- 長期目標
- 個別機能訓練項目
- 利用者本人・家族等がサービス利用時間以外に実施すること
短期目標とは、長期目標を達成するために必要な目標です。そのため長期目標よりハードルを低く設定し、3ヶ月間で達成できそうな目標を立てるとよいでしょう。
個別機能訓練項目には、短期目標を達成するために必要なプログラム内容を具体的に記入します。何のためにその訓練をするのかを明確にするため、目的も詳しく入れましょう。そのほか留意点や頻度、時間、実施者の情報も必要です。
目標の立て方やプログラム内容の作り方については、記事後半で詳しく説明します。
Ⅲ 個別機能訓練実施後の対応
最後に「Ⅲ 個別機能訓練実施後の対応」に関する記入例を紹介します。
以下、2つの項目について記入します。
- 個別機能訓練の実施による変化
- 個別機能訓練実施における課題とその要因
上記は個別機能訓練を実施したうえで、その効果や今後の課題について記入します。そのため初回作成時には記入が不要となります。
実施した結果を踏まえ、目標や訓練項目の見直しが必要な場合は、個別機能訓練計画書の更新を行ってください。
個別機能訓練計画書を作成する手順
個別機能訓練計画書は以下の手順に沿って運用していきましょう。
① | ニーズ把握・情報収集 | 機能訓練員が利用者の自宅へ訪問し、生活環境や身体の状態を確認。加えてケアマネジャーから健康状態や、本人と家族の意向などをヒアリングして、ニーズを把握する。 厚生労働省が公表している「興味・関心チェックシート」や「居宅訪問チェックシート」などを参考に進める。 |
---|---|---|
② | アセスメント・評価 | ①で把握した情報をもとに、管理者や看護職員、介護職員など多職種で協働して課題を分析し、評価を行う。 |
③ | 個別機能訓練計画書の作成 | 居宅サービス計画や通所介護計画などとの連動も意識しながら、プランを立て、計画書を作成する。 |
④ | 利用者とその家族に説明し、同意を得る | 個別機能訓練計画書を用いながら、わかりやすく説明し、同意を得る。最後に計画書のコピーを渡す。 |
⑤ | 個別機能訓練の実施 | 計画書に沿った訓練を実施。 |
⑥ | 評価をおこなったうえで、目標の見直し | 個別機能訓練の目標や訓練項目の変更を行った場合は、個別機能訓練計画書の再作成や更新を行う。 必ずスタッフが最新の情報を確認できるような状態にすること。 |
上記、①~⑥までの手順を3ヶ月ごとに1回以上取り組んでください。
目標設定やプログラム内容の作成方法【記入例あり】
個別機能訓練の目標と訓練項目は、以下の順番で考え、設定します。
- 長期目標
- 短期目標
- プログラム内容
それぞれの内容を決める際にポイントについて、以下で詳しく解説していきます。
長期目標
長期目標は利用者がどのように生活したいか、家族が利用者にどのように生活してほしいかという希望に合わせて設定されます。以下、3つの項目に関する内容を含めながら設定することが望ましいです。
① | 心身機能 | 体の働きや精神の働きに関すること |
---|---|---|
② | 活動 | ADL・家事・職業能力や、屋外歩行といった生活行為全般に関すること |
③ | 参加 | 家庭や社会で果たす役割に関すること |
上記を踏まえ、ただ「座る」「立つ」などのような単純な行為ではなく、生活に関する行為や、社会関係を維持するための地域における活動など、具体的な目標を設定をすることが好ましいと考えられています。以下の例を参考にしてください。
- 1人でトイレに行く
- 1人で自宅の風呂に入る
- 料理を作る
- 商店街やスーパーに買い物に行く
- インターネットを使って手続きをする
- 孫とメールのやり取りをする
- 買い物リストを作る
- 商店街へ行く
- リストに書いた品物をカゴに入れる
- レジで会計をする
- 袋に品物を入れる
- 自宅まで帰り、品物をしまう
短期目標
短期目標は、長期目標を達成するために必要な段階的な目標です。そのため長期目標の達成に必要な行為を細分化したうえで、短期目標を決めていきます。
たとえば、「商店街に買い物に行く」が長期目標の場合、細分化すると短期目標になり得る行為は以下になります。
- 買い物リストを作る
- 商店街へ行く
- リストに書いた品物をカゴに入れる
- レジで会計をする
- 袋に品物を入れる
- 自宅まで帰り、品物をしまう
プログラム内容
プログラム内容を決めるには、短期目標から利用者が困難な行為、または不安や支障がある行為を整理し、どんな訓練が必要かを考えます。
もし歩行に困難がある場合で以前行っていた「商店街まで買い物に行けるようになりたい」という本人のニーズがある場合には、商店街までの距離を歩けるような訓練を設定します。たとえば筋力を向上させる訓練や、杖を使った移動の訓練などです。場合によっては電動車いすを使った移動手段からそのための訓練内容も考えられるでしょう。
「1人で自宅の風呂に入れるようになる」が長期目標なら、「1人で服を脱ぐ」「体を洗う」などが短期目標になり得ます。機能訓練としてはズボンの着脱訓練や、洗体動作の訓練などが考えられるでしょう。
個別機能訓練計画書は目標設定とプログラム内容が重要
個別機能訓練計画書の作成には、実際に利用者宅を訪問をしたうえでのアセスメントや、目標・プログラム内容の設定が必要になります。個別機能訓練の目的は、利用者の身体機能や生活の質の向上、または維持です。そのため目標の設定と、プログラムの内容が非常に重要となってきます。
利用者に合った目標と訓練を設定するためにも、最初に利用者のニーズや身体の状態を把握することが大切です。個別機能訓練加算の算定を目指したい事業者は、この記事で解説した手順を参考に、利用者のニーズに合った個別機能訓練計画書を作成してみてください。