外国人雇用前・雇用後の手続

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外国人雇用前・雇用後の手続

外国人が日本に来て、働き、帰国するまでの間には、会社が行わなければならない手続や外国人本人が行わなければならない手続があり、合わせると非常に多くの手続が存在します。

これらの手続は、入管法に関する入管業務もあれば、雇用保険等の社会保険に関するもの、年末調整のように税務に関するもの等、性質においても幅が広いものです。特に日本人の雇入れの場合と異なる手続を行わなければならない場合があります。

以下では、海外にいる求職者が日本の求人者にて働くことを想定して、主に日本人を雇い入れる場合と異なり、外国人を雇い入れる場合に必要となる法定手続について見ていきたいと思います。


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内定から雇入れまで

(1)内定

日本では、高度人材に限らず、技能実習生であっても特定技能外国人であっても「就活」の慣行に基づき1人1人を面接し、内定を出すことが多いと思います。

内定が決まった場合について内定通知書を出す場合もありますし、出さない場合もあります。高度人材については日本の新卒採用の実務と同様に内定通知書を出す場合が多く、技能実習生及び特定技能外国人について内定通知書を作成せずに参考様式として定められた雇用契約書及び雇用条件書を作成することが多いように思います。

内定通知書を作成する場合は、例えば、在留資格が許可されずに訪日できなかった場合の取り扱いをどうするかなど、内定解消事由として想定しているものがあれば、内定通知書の中で定めておくのが望ましいといえます。

(2)在留資格認定証交付申請

続いて、入国のために、在留資格認定証明書交付申請を行います。

在留資格認定証明書は、入管法7条の2第1項に基づき申請するものであり、当該外国人が入管法7条1項2号という上陸審査の条件を定めた条文に適合していることを証明するための文書です。

在留資格認定証明書は、当該外国人を受け入れようとしている機関(会社)の職員が代理人となって申請が可能です(入管法7条の2第2項)。そのため、多くの場合は、内定を出している会社の職員の方(人事部の職員の方が多いように思います)を代理人として申請することが多いように思います。

(3)査証(ビザ)の取得

在留資格認定証明書が交付されたら、当該在留資格認定証明書を外国人に送付し、当該在留資格認定証明書と必要書類を持参して、在外の日本大使館等に赴き査証の申請を行います。

(4)訪日・在留カードの交付

査証が発給されたら、査証付のパスポート及び在留資格認定証明書を持参の上、成田空港等で入国します。

空港にもよりますが、入国の際に、在留カードが発行されます(入管法19条の3)。空港で発行を受けられない場合には住所を届出た後に郵送されることになります。

(5)転入届

高度人材、技能実習生及び特定技能外国人のようにいわゆる中長期在留者と呼ばれる外国人が日本に新規に入国した場合、住居を定めてから14日以内に市区町村に対して転入届を提出する必要があります(住基法30条の46)。在留カードがすでに手元にある場合には、在留カードを持参して在留カードの裏面に住所を記載してもらいます。これにより、入管法上義務付けられている住所地の届出についても行ったことになります(入管法19条の7第3項)。

転入届出を出し住民登録手続が完了すると、後日、個人番号(マイナンバー)通知書が郵送されてきます。会社で社会保険に加入する際に使用しますので、外国人には無くさないようにという依頼をしておくのが望ましいように思います。

(6)雇入れ

続いて、雇入れ手続を行います。原則として、雇入れ手続については日本人と同様で、各社会保険の加入手続等を進めることになります。

但し、外国人の雇入れの場合、労働施策総合推進法28条1項に基づく雇用状況の届出があります。労働施策総合推進法28条1項は、外国人を雇い入れたすべての事業者に外国人の氏名、在留資格等を厚生労働大臣に届け出ることを義務付けています。

手続としては、中長期在留者の方を雇い入れた場合には、在留カードの原本により届出事項を確認し(労働施策総合推進法施行規則11条1項1号)、雇用保険の資格取得届により必要な事項を記載して行います(同10条2項)。

就業時

(1)在留期間の更新

就業中に在留期間の満期が近づいてきた場合、在留期間の更新許可申請を行います。在留資格認定証明書の交付申請の場合、雇用する企業を管轄する地方入管で行うことになりますが、更新時は外国人の住所を管轄する入管で行うことになります。

更新申請の時期としては在留期間満期の3か月前には準備を開始し、2か月前には申請を完了するような余裕をもったスケジュールを組むことが重要です。

(2)年末調整

外国人の中には、給与を出身国の親族に仕送りとして送金している場合があります。当該送金について、給与等に関し、非居住者である親族に係る扶養控除等を行う場合には、外国人から親族関係書類及び送金関係書類(これらの書類が外国語で作成されている場合には、その和訳文を含みます。)を徴収・提示を受けることをしなければなりません。

(3)配置転換、転籍出向

配置転換や転籍、出向を行う場合、そもそも配置転換や出向ができるか、特に外国人については在留資格該当性があるかについて注意を要します。

配置転換後の仕事内容が在留資格に合致しているかという仕事の内容について注意を要するのは当然として、「高度専門職1号」や「特定技能1号、2号」、「特定活動」のように働く法人が指定される在留資格の場合、在留資格変更許可をせずに転籍、出向をさせてしまうと、グループ内の会社であっても不法就労活動となってしまいます。これらの在留資格で出向を行う場合には、在留資格変更許可を行う必要があります。

また、技能実習の場合、原則として働く法人を変更することはできず、一定の理由があり変更する場合には技能実習計画の認定を再度行う必要があります。

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離職時

(1)雇用状況の届出

離職時は、雇入時と同様に労働施策総合推進法28条による雇用状況の届出が必要となります。雇入時と同様に、雇用保険の手続と一緒に行うことになります。

(2)所属機関等に関する手続

会社の義務ではなく、外国人側の義務ですが、離職した場合、入管法19条16に基づき一定事項を入管に届け出る必要があります。会社が負う義務ではありませんが、外国人に手続を案内し、履行を促すのが望ましいといえます。

帰国時

(1)厚生年金保険の脱退一時金

外国人が帰国する際、要件を満たす場合には厚生年金保険の脱退一時金を申請することが可能です(厚生年金保険法附則29条)。申請が可能な方は、以下の要件を満たす方です。

  • 日本国籍を有していない
  • 公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でない
  • 厚生年金保険(共済組合等を含む)の加入期間の合計が6月以上ある
  • 老齢年金の受給資格期間(10年間)を満たしていない
  • 障害厚生年金(障害手当金を含む)などの年金を受ける権利を有したことがない
  • 日本国内に住所を有していない
  • 最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない

(2)退職所得の選択課税による還付のための申告

脱退一時金は、住所を失った後に支払われるため、支払いの時点では非居住者に該当するのが一般的です。そして、非居住者の方が支給を受ける厚生年金保険の脱退一時金は、その支給の際に、20.42%の税金が源泉徴収されます。

この源泉徴収部分については「退職所得の選択課税による還付のための申告」を行うことで還付を受けることができる場合が多いです。

まとめ

これまで見たとおり、外国人の内定、就労、帰国の一連の流れの中では、多くの手続が存在します。日本人の場合と異なる手続も多くあり、慣れない手続も多いかもしれません。

一つ一つ手続の漏れがないように余裕をもって準備して行うのが望ましいでしょう。

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