「入浴や食事などの直接的な支援を求めない」、「一般的なデイサービスには通いづらいが、介護保険の対象で機能訓練を受けたい」といった方がよく利用するのがリハビリ特化型デイサービスです。
その役割や概要について、正しく理解しているという人は多くないかもしれません。そこで本記事では、リハビリ特化型デイサービスの特徴やデイサービス、デイケアとの違い、利用する方の特徴、働くメリットなどについて解説します。
目次
リハビリ特化型デイサービス(リハビリデイサービス)とは?
リハビリ特化型デイサービスとは、機能訓練指導員が中心となって、身体機能の維持や回復のための訓練を提供する施設です。一般的なデイサービスと比べて機能訓練に重点を置いているため、食事や入浴、レクリエーションなどを実施しない施設がほとんどです。
多くの施設では午前と午後の半日単位で利用者さんが入れ替わるのも特徴のひとつです。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士なども在籍し、リハビリ専門スタッフの指導のもと、利用者さんそれぞれに適した個別のプランが用意されます。
フィットネスクラブやジムのような最新鋭の機材を揃えたり、リラクゼーション要素を取り入れたり、施設ごとに独自のサービスを打ち出しています。
リハビリ特化型デイサービスの特徴
リハビリ特化型デイサービスを働く側から見た場合の3つの特徴について紹介します。
リハビリを中心とした短時間型のデイサービス
リハビリ特化型デイサービスとは、リハビリや機能訓練を中心としているため、1回のあたりの利用時間は3時~4時間程度です。送迎やバイタルチェックなどは一般的なデイサービスと同様ですが、午前と午後の2部制を採用している施設が多く、リハビリや機能訓練の介助経験が長い方にとっては、身体的な負担を減らしながら介護の仕事に就くことができます。
介護度の低い利用者さんが多く、身体介護は少なめ
リハビリ特化型デイサービスを利用する方は、通常のデイサービス利用者とは異なり、以下のような目的をもっています。
- 身体的な介護を必要とせず、介護予防に取り組みたい
- 運動をしたいけど一般のフィットネスクラブは不安
- 退院後したが、専門的なリハビリを受けたい
そのため、介護度が低い利用者さんが多く、他の施設と比べて職員の身体的な負担は少ないと言えるでしょう。
リハビリ中心で、入浴や食事は行わない場合が多い
リハビリ特化型デイサービスでは、専用マシンを利用したリハビリや機能訓練の補助、準備体操、ストレッチなどの運動指導を行います。また利用者さんの送迎やバイタルチェック、休憩時のドリンク提供、摂取水分のチェックなども業務として挙げられます。
一般的なデイサービスで提供される食事や入浴、レクリエーションなどは行われない場合がほとんどです。
リハビリ特化型デイサービスとデイサービス、デイケアの違いとは?
リハビリ特化型デイサービスとデイサービス、デイケアの違いを明確に理解するのは難しいかもしれません。そこで、サービスごとの違いについて解説します。
サービス内容の違い
デイサービスは食事や入浴、機能訓練、レクリエーションなど利用者さんの日常生活におけるケアやご家族の補助が主なサービスとなります。一方、身体機能の向上を目的とした支援を主なサービスとしているのがリハビリ特化型デイサービスです。
デイケアとリハビリ特化型デイサービスのサービス内容は似ています。明確に違うのは、デイケアのリハビリは医師の指導のもとで行われるということです。
実施主体の違い
実施主体についても違いがあります。リハビリ型デイサービスや通常のデイサービスは、株式会社や合同会社、社会福祉法人などが実施主体です。一方のデイケアは、主に医療法人などになります。
人員基準の違い
リハビリ特化型デイサービスとデイサービス、デイケアの人員基準の違いについても見ておきましょう。
リハビリ特化型デイサービス | デイサービス | デイケア | |
主なサービス内容 | 機能訓練、身体の機能改善、リハビリ | 食事、入浴、機能訓練、レクリエーション等 | 食事、入浴、リハビリ |
運営主体 | 株式会社、合同会社、社会福祉法人、地方自治体、社会福祉法人、NPO法人など | 株式会社、合同会社、社会福祉法人、地方自治体、社会福祉法人、NPO法人など | 主に医療法人 |
目的 | 機能訓練や身体機能の維持・改善 | 日常生活における心身機能の維持・改善 | 退院後の在宅復帰や心身の機能の維持・回復 |
医師の指示 | 不要 | 不要 | 必要 |
人員基準 | 【管理者】 常勤で1名以上 【生活相談員】 サービス提供時間に応じて専従で1以上 ※資格要件は自治体によって異なる 【介護職員】 利用者の数が15人まで 1以上 イ 利用者の数が15人を超す場合 アの数に利用者の数が1増すごとに0.2を加えた数以 上 【機能訓練指導員】 常勤で1名以上 (看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のどちらかの資格が必要) 【看護職員(看護師・准看護師)】 単位ごとに専従で1名以上 | 【医師】 専任の常勤医師1名以上 【従事者 (理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士又は看護師、准看護師若しくは介護職員)】 単位ごとの利用者さん10人に1以上 【理学療法士、作業療法士、言語聴覚士】 利用者数100人に対して1名以上 |
リハビリ特化型デイサービスを利用する人の特徴
どのような方がリハビリ特化型デイサービスを利用しているのかも気になるところでしょう。そこで、リハビリ特化型デイサービスを利用する方の特徴について紹介します。
対象は要介護1~5の認定を受けた方。条件によって要支援、自立の方も
リハビリ特化型デイサービスを利用できるのは、「要介護1~5」の認定を受けた方です。そのサービスが各市町村が提供する介護予防通所介護相当サービスに該当していれば、要支援1または2の認定を受けている方も利用できます。また、介護保険を使わない自費であれば、要介護や要支援と認定されていない自立の方でも利用できます。
40歳以上64歳以下の方(第2号被保険者)については、初老期認知症や脳血管疾患などの加齢に伴って生じる特定疾病(16種類)により要介護または要支援状態になった方が、リハビリ型デイサービスを利用できます。
介護サービスに抵抗があり介護保険を使っていない方
介護度が低く比較的お元気な方には、介護サービスを利用することに抵抗がある方がいらっしゃいます。デイサービスで行われていることが「幼稚園みたいで嫌だ」と拒否される方もいます。リハビリ型デイサービスはそのような方に受け入れられ、一般的なデイサービスをあまり利用されない方々が多く利用しています。
また、外装や内装などにこだわったおしゃれな施設が多いです。これは、介護を受けるという受動的な姿勢ではなく、リハビリ意欲を喚起して能動的に行動させることを企図しているためです。結果的に、一般的なデイサービスに比べて男性が多いことも特徴のひとつとして挙げられます。
リハビリ特化型デイサービスにおける1日の流れ
通常のデイサービスにおける利用時間は、1回につき約7~8時間程度になります。一方、リハビリ特化型デイサービスでは約半分の3時間程度です。ここでは、1日の流れと仕事内容を紹介します。
介護士の役割と仕事内容
【一日の主な流れ】
- 自宅までお迎え
- 施設到着後、健康チェック(血圧・体温・脈拍など)
- 準備体操
- マシントレーニング
- 休憩
- 個別機能訓練
- 終了前に健康チェック(血圧・体温・脈拍の測定)
- 自宅まで送り
おおよそ、上記のような流れとなります。
介護士は、利用者さん一人ひとりに合わせた運動プログラムを提供する中で、リハビリ・機能訓練の補助や見守り、ストレッチや健康体操などの運動指導を行います。また、利用者さんの送迎や施設到着時の健康チェック、水分摂取量の管理、おやつの提供なども大切な仕事となります。
休憩中には日々の出来事について談笑するなど、リラックスして楽しんでいただく環境づくりも介護士の仕事です。
リハビリ特化型デイサービスで働くメリット
リハビリ特化型デイサービスで介護の仕事に就くうえでの4つのメリットについて紹介します。
身体介護が少ない
リハビリテーションを主な目的としているため、比較的介護度の低い利用者さんが多い傾向にあります。移乗などの身体介護が少なく、体力的な負担を少なくしたい方には大きなメリットといえるでしょう。
利用者さんが回復する姿を見られる
リハビリ特化型デイサービスには、介護度が低くてリハビリに意欲的な利用者さんが多い傾向にあります。身体機能やADLが日に日に改善されていくケースも少なくありません。
利用者さんの身体状況が改善し、日常生活における自立度が向上する姿を間近で見られるのも、介護職としての大きなやりがいへと繋がることでしょう。
リハビリ特化型デイサービスが向いている人
リハビリ特化型デイサービスには一般的なデイサービスとは異なる特徴があり、人それぞれ向き不向きがあるでしょう。そこで、どのような方が向いているのかを解説します。
身体的な負担を減らしたい介護職の方
何らかの理由があって介護度が高い方の身体介護が難しいという人には、リハビリ特化型デイサービスが向いています。たとえば、重い腰痛などの持病を持っていて、介護度の高い利用者さんの介助には自信がないという人です。
介護度の低い利用者さんが多く、比較的身体介護は少なめなので、肉体的な負担が不安な方にもおすすめです。また、午前と午後の2部制を採用する施設が多く、「午前のみ・午後のみ」といった求人がも多く見られます。自分のライフスタイルに合った働き方ができれば、身体的な負担も軽減できるのではないでしょうか。
多職種と連携を取り、介護職以外の視点を取り入れたい方
機能訓練指導員などの専門職と一緒に働くため、ほかの職種の視点や考え方を学びたい人、介護職として幅広いスキルを身に付けたい人に向いています。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーションの専門家とも直接関わることによって、介護以外のさまざまな情報を得ることができるでしょう。
リハビリテーションに関する知識を高めたい人、さまざまな職種と連携を取ることで介護職以外の視点を取り入れたい人などが向いているといえます。
リハビリ特化型デイサービスは希少なだけに将来性がある
従来のデイサービスにおける介護保険報酬は、「介護支援に対する報酬」でした。しかし、現在では「自立した生活が送れるように支援することへの報酬」へと変わりつつあります。
実際に、「個別機能訓練加算」や「生活機能向上連携加算」、「ADL維持等加算」といった高齢者のリハビリにおける加算や、生活レベルを維持・改善したデイサービスにインセンティブを付与する加算が増えてきています。
今後の日本においては、要介護者を今以上に増やさないための「予防」に対する価値が高まり、自立支援を行うデイサービスの需要は更に増加するでしょう。介護度の維持や改善を目的としたリハビリ特化型デイサービスについてはまだ少ないのが現状です。
利用者さんの需要が減るとは考えにくい現状からしても、そこで働けるチャンスは今後増えることが予想されることから、将来性の高い職場であるといえるでしょう。