真夏の暑い日に発症するイメージを持たれることが多い熱中症ですが、毎年5月ごろから熱中症による救急搬送人数が増えてきます。 暑くなり始める時期や急に暑くなった場合、まだ暑さに慣れていないことが影響しています。
環境省リーフレットにも記載されていますが、熱中症患者のおよそ半数は、65歳以上の方と言われており、その多くが室内で発症しています。
熱中症は、暑さや湿度などにより、体温の調整が出来なくなり、重症になると、命に関わります。
熱中症予防の基本は、水分補給と暑さを避けることです。
汗をかきやすいこれからの夏のシーズンや体調によって、いつも以上に水分が必要な時もあります。
特に今年も、昨年同様にマスク熱中症に注意です。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、マスクの着用・外出を控えている方も多いと思います。 それらのことにより、今年も特に早い時期からの熱中症対策が重要です。
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目次
熱中症が起こりやすい状況
マスク着用による影響
マスクを着用していることで放熱が妨げられ、体内に熱がこもります。また、マスクをしているとマスク内の湿度が上がり、喉の渇きを感じにくくなります。
そのため、知らないうちに脱水が進んでしまい、熱中症を引き起こす危険性が高まります。
外出が制限される生活による影響
人間は、屋外で日光にあたることで暑さに順応でき、汗をかける体になります。汗をかくことで体温を低く抑えることにつながります。
コロナ禍で外出が制限されているため、外出する機会が減ってしまい、日の光を浴び、暑さに備えた体作りができないまま、夏を迎えることになります。
さらに、在宅生活が長引くことで、運動不足による体力低下などにもつながり、より一層熱中症に気をつける必要があります。
お客様とご家族の安心・安全のためにも正しい脱水症の基本的な知識とその予防方法、体調確認ついてご紹介させて頂きます。
お客様の毎日の体調管理においては、『医療と介護の連携』は不可欠です。お客様の体調と水分量を確認し、介護記録に記載する事が体調管理において重要なので、体調・水分確認表を作成し、主治医と施設・事業所全体で周知徹底、情報共有をお願いします。
ご高齢者は、脱水症にかかりやすい
脱水症にかかりやすい主な理由
体内の水分量が減少する
加齢に伴い水分を蓄積する筋肉が少なくなるため、体内の水分量が約60%あったものが50%位まで低下します。
水分の排泄量が増える
腎機能の低下により、老廃物を排出するためにより多くの尿量が必要になります。
喉の渇きを感じにくくなる
感覚機能の低下により、身体が水分を必要としても、 水分補給しなくなります。
このように、ただでさえ脱水症にかかりやすいご高齢者にとって
①暑い夏場
②風邪をひいて発熱がある時
③下痢で普段よりも水分の排泄量が多い時
などは、特に注意が必要になります。
脱水症の初期症状は、「風邪」に似ている
初期の脱水症は、風邪の症状によく似ています。 下記の症状が見られる場合は、脱水症を疑いましょう。
- なんとなく元気がなくなる(活動性が低下する)
- 微熱がでる
※高齢者は代謝の関係で平熱が低く、35度台という人がほとんどです。仮に平熱が36度としても、36度5分は「微熱」と考えて良いと言われています。まずは、お客様の平熱を知ることが大切です。
※皮膚が乾燥する
※唾液分泌量が減少し、口渇感をおぼえる
更に、脱水症が進行すると、ウトウトした傾眠状態となり、うわ言やせん妄、幻覚等の精神症状が現れ、認知症の症状が進行したように見えることもあります。発見が遅れると、最悪の場合、昏睡状態から亡くなってしまうこともあります。
【補 足】
脱水症が疑われる場合、さりげなくお客様の腋の下を触って確認する方法があります。腋の下は、普段乾燥しにくい部分ですが、ここがツルツルで乾燥しているようだと 脱水症の可能性が高いといえます。
1日に飲水として1500ml以上の水分摂取が必要です
人間の身体は、尿・汗・呼吸などで、1日に2000~2500mlの水分を排出し、失った水分を飲水・食事・体内生産により補っています。
3食の食事をしっかり食べ、食事や体内生産によって、800~1000ml取り込むことができますが、残りの水分は、飲料水として補給する必要があります。
ゼリーやところてんは、のどごしが良いので食べやすいです。
牛乳や間食もうまく利用しながら栄養を補いましょう。
「トイレが近くなるから・・・」という理由で、水分摂取を控えるお客様の声をよく耳にしますが、命の源である水は、 最低でも食事以外に1500ml摂取することが必要なのです。
【注意】
心臓や腎臓の疾患で水分摂取量を制限するよう指示されている場合には、その指示を守ることが優先されますので、サービス開始時に水分制限の有無について確認が必要です。
1日の水分摂取量を把握する
「何で」・「何を」・「どのように」・「どれくらい」飲んでいるか観察すること
お客様が「お水やお茶は、よく飲んでるよ」とおっしゃっていても、安心してはいけません。
お客様が1日にどのくらいの水分を摂取しているか、具体的に把握する必要があります。
【1日の水分摂取量を把握する方法】
- お客様が普段使っているコップの容量を測り、1日に何杯飲んでいるか確認する。
- ポットのお湯でお茶を飲んでいるお客様は、ポットのお湯の減り方を確認する。
- ペットボトルを利用する
500mlのペットボトル3本にお茶や水を入れ、その減り具合を確認する
同時に、お客様が実際に飲んでいるところを観察する必要もあります。 お客様やご家族、ケアマネジャーと連携をとりながら、できるだけ正確に水分摂取量を把握しましよう。
水分摂取には様々な工夫が必要です
お客様に「お水を飲んでくださいね」と言葉で促していたとしても、お客様が実際に飲んでいなければ全く意味がありません。 私達は、お客様に水分を摂取して頂けるよう、様々な工夫をすることが必要です。
【1日1500mlの水分を摂取しているAさんの例】 Aさんのカップは約150ml
時間 | 場所 | 摂取するタイミング | 水分の種類 |
7時 | 自 宅 | 朝食後、娘と一緒に | 緑茶 1杯 |
9時 | 自 宅 | お迎えが来るまで、テレビを見ながら | ほうじ茶 1杯 |
10時 | ディサービス | 到着後、仲間と一緒に | コーヒー 1杯 |
11時 | ディサービス | 体操の合間に | スポーツドリンク 1杯 |
12時 | ディサービス | 昼食後、仲間と一緒に | 緑茶 1杯 |
15時 | ディサービス | おやつ | ゼリー1カップ 紅茶1杯 |
18時 | 自 宅 | 夕食時、娘と一緒に | ほうじ茶 1杯 |
19時 | 自 宅 | 夕食後、テレビを見ながら | ほうじ茶 1杯 |
21時 | 自 宅 | 就寝前に | 湯冷まし 1杯 |
ご家族やケアマネジャーと、連携をとりながら、食事以外に1500ml以上の水分を摂取を目指し、脱水症を予防しましょう!!
体調確認の方法
「なんとなくだるい・元気がない」が一番重要です。
体調管理をするために、毎回確認項目を順番に聞いていくと、お客様の負担になってしまう可能性があります。『体調管理』を、あまり堅く構えず会話の中から確認をし、確認表に記入しましょう。
≪聞き方の例≫
1 | 元気がある・ない | 「お元気ですか?」 「いつもと、お変りありませんか?」 |
2 | 食欲の有無 | 「食事はおいしく食べられましたか?」 |
3 | 気分が良い・悪い | 「ご気分はいかがですか?」 「ご気分はお変りありませんか?」 |
4 | 睡眠状況 | 「よくお休みになられましたか?」 |
5 | 発熱の有無 | 「熱はありませんか?」 「熱っぽくないですか?」 |
ご高齢者は、何らかの身体的な異常が起きたり、病気になった時、全身症状(なんとなく体がだるい等)として現れることが多く、「元気かどうか」と「食欲の有無」を確認すれば、日々の最低限の体調確認としては、十分だと考えられます。
但し認知症の高齢者の場合は、上記の確認だけでなく「様子の変化の観察」も大切な確認項目になります。不機嫌になったり、体の一部をしきりに触ったりというような変化が、重要な観察ポイントになります。
※夕方になると、不機嫌になったり、騒ぎ始めたり、元気がなくなる場合は、脱水症の可能性があります。
体調変化は、記録に書いただけで終わらせない。
ディサービスご利用の場合は、ご家族から連絡ノートへ、入所の場合はご家族から口頭で、「今日は暑いので水分を多く摂らせて下さい!」とご要望を頂く場合があります。
大切なことは「体調確認をした」「水分補給をした」「記録に書いた」だけで、終わらないことです。
頂いたご要望には連絡ノートや電話等を活用し、「何を」「どのように」「どれくらい」かを具体的にきちんとご対応した事をご返信するのがご家族の安心につながります。
下記の流れを確認し、確実に実践しましょう。
※ご家族から「今日は少し元気がない」という言葉を聞いたり、 食事を半分以上残されたなどを確認したら・・・・・
- 水分摂取量と便秘の有無を確認
⇒ここに問題がある場合、水分摂取量を増やす等の対応が必要 - いつも飲んでいる薬が飲めているか確認
- 原因が不明な場合は、医師の診断をすすめる
(病気慢性疾患の急性増悪の可能性があります) - 記録に残す
- 上長及びケアマネジャーに報告・連絡・相談
十分な睡眠や休息、服薬・定期受診で持病の管理をするなど体調管理も大切です。
暑さに強い体づくり
コロナ禍では、外出をすることや集団で行えていた運動などが難しくなっているかと思います。
そのため、各自室内でも運動を行い、体力低下を防ぎ、汗をかく機会を持つことで夏の暑さに備えましょう。
屋内で運動をする場合
- 適度に冷房を使い、換気も行いましょう。
- 運動前、運動中、運動後には水分補給を行いましょう。
(例)ラジオ体操やストレッチ、階段を使った踏み台昇降など
屋外で運動する場合
- マスクをする場合は、日頃よりも体温がこもりやすくなるので、いつもより少し軽めに運動を行いましょう。
※屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合は、熱中症のリスクを考慮し、マスクを外しましょう。 - 風通しの良い衣類や、脱ぎ着のしやすい薄手の長袖を利用したり、帽子を着用するなど暑さを避けましょう。
- 運動前、運動中、運動後には水分補給を行いましょう。
- 帰宅後は、手洗いうがいを行いましょう。