介護サービスの質を向上させるためにスタッフを増やしたいと思うのは、介護事業者として当然のことといえます。しかし、介護保険法ではあらかじめサービス提供に対する介護報酬が定められているため、人材を増やすといっても限界があります。また、今後ますます介護人材が不足すると考えられるなかで、サービスの質を維持・向上させるためには業務の効率化を図るという視点が欠かせません。
介護事業所を運営する方の中には「介護事業はサービスを提供するものだから、効率化を図ろうとすると質が落ちてしまう。そもそも効率化なんてできるのだろうか?」そう考える方も少なくありません。本記事では介護業界で業務効率化を進めるための具体的手法や効率化によって得られるメリットについてご紹介します。
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目次
介護現場でも業務効率化を図れる
介護事業所を運営する上で、業務の効率化を無視することはできません。日頃の業務を定期的に見直し、利用者に対するサービスの質を向上させることは、介護事業所で働く人であれば行って当然のことといえるでしょう。ところが、実際に業務を効率化させる目的で、様々なシステムを導入したものの、上手くいかずに以前よりも運営状況が悪化した事業所も存在します。
この記事では、業務効率化に取り組む前に理解しておくべきポイントとあわせて、業務効率化に役立つ具体的な手法を紹介します。
介護サービス生産性向上に資するガイドライン
2019年3月、厚生労働省は「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を作成し、介護施設における業務効率化や業務改善の具体的な手法を紹介しました。
ガイドラインによると、介護の業務を効率化することで今まで時間のかかっていた画一的なケアから、個別ケアプランに沿った利用者へのケアが実践できるようになるとされています。これは利用者だけではなく、働く職員にとってもやりがいにつながる大きなメリットといえるでしょう。
業務効率化に向けて取り組むうえで重要な3つの視点を紹介します。
ムダな情報共有をなくす
介護業務はチームで関わることが多いので、情報共有は欠かせません。しかし、その情報共有にムダな手間や不必要な作業、例えば利用者の個別の介護記録を確認すれば良いのに、申し送りの記録や連絡ノートに同じ内容の記載は発生してはいないでしょうか。チーム内で入念に連携を心がけるあまり、それぞれが転記業務に時間を費やしていては意味がありません。そのためには利用者に向き合い、アセスメントやモニタリングの時間に活用出来るようにするなど利用者へのサービスの質を低下させることなく、業務を見直すことが重要になります。
<こんなときは見直しが必要>
- 業務を行う目的が明確になっていない(申し送りが長い、会議が多いなど)
- 同じ記録を複数の書類に書いている(デジタルとアナログで同じことを記録している)
負担がない人材育成
介護業務といっても、食事や排泄、入浴などの介護内容によって必要なスキルは異なります。また入職したからといって、新人職員がすぐにすべての利用者に対応できるとは限りません。介護職員一人ひとりに合わせた負担のない人材育成を行うことが、全体としての業務を改善することにつながります。
<こんなときは見直しが必要>
- 人材育成の指針や評価が曖昧(経験が浅い介護職員にすぐに夜勤を任せている)
- 介護職員によって業務量に差がある(特定の介護職員が残業対応している)
リスクのないチームケアを目指す
通所介護の送迎の運転業務など自分ひとりで責任を負い、連携の必要のない業務であれば内容を見直すことは簡単ですが、介護職員の業務全体を見直し、効率化させるとなると時間もかかって容易ではありません。チームへのリスクを最小限に抑えながら業務を効率化させるためには、チーム全体の意識改革と協力が必要になります。
<こんなときは見直しが必要>
- 業務マニュアルや手順書が浸透していない(個人によって業務手順や内容に差がある)
- 介護職員の配置が固定されていない
(最低人員は確保しているが、有休休暇などで日によって介護職員の数が異なる、他部署への応援要請が頻繁にある)
介護における業務効率化の具体的手法とは
介護において業務効率化を図る目的は、単に仕事を簡素化したりケア時間を短縮させたりするだけではなく、今以上に介護サービスの質を向上させることにあります。自分の事業所が前述した具体例に当てはまる場合は、次に紹介する方法を参考にして業務の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
介護業務の見える化
業務の効率化を図るうえで最初にすべきことは、現状の把握と業務の見える化を行うことです。まずは事業所の全体像を正しく把握し、個々の業務をどのように見直していくべきかを考えましょう。
たとえば、勤務表から営業日ごとに介護職員の業務をタイムテーブルで図式化し、全体を客観的に把握します。同じ内容で重複している業務があれば、誰がそれをどの利用者に行うかを明確にすることで業務を整理することができます。
本来の業務に専念するための役割分担
介護職員が行うべきケアにさまざまな事務業務が付随し、本来行うべき利用者のケアに専念できないようなことがあってはなりません。介護職員の役割や援助内容を明確にすることで、職員は不安や不満を感じることなく利用者のケアにあたることができます。
たとえば、介護業務に加えて送迎業務を介護職員が行っている場合には、送迎専門の職員を配置することで介護職員が利用者のケアに専念できるようになりますし、運転の慣れていない職員に運転をしてもらう事故のリスクが減ります。
業務を標準化する
新人と経験年数の長い職員でスキルに差があるのは当然ですが、本来行うべき介護業務の内容に差があってはいけません。事業所に所属するすべての介護職員がどの利用者に対しても同じ対応が行えるように、業務をマニュアルで標準化しておくと、介護職員の迷いを減少することで、利用者からの苦情を防ぐことができて有効です。限られた介護職員に負担が集中しないように、どの業務をマニュアル化、標準化するかを検討してみましょう。
アンケートや面談で労務管理
職員全員に対するアンケートを定期的にとり、面談も取り入れながら、業務負担を感じている介護職員に早期の対応ができれば、離職防止の対策になります。また上司が主導して現場に協力を得られない手法を取り入れた結果、かえって手間やコストが増えてしまうこともあり得ます。
アンケートや面談で得た意見を積極的に取り入れることで、運営に関わっている自覚が介護職員に芽生え、業務効率化に自主的に取り組むことにつながります。たとえば、「ノー残業デー」や「定時終業の声掛け」など、残業時間を削減するために介護事業所のスタッフ全体で行う意識は、一般企業同様介護業界にも広がっています。
もはやICTは当たり前
介護業務の一環として書類作成や介護記録などにパソコンを使う機会も多いことでしょう。ICTを活用すれば介護職員の事務負担を大幅に軽減でき、利用者に対するケアに注力できるようになります。
変則業務の勤務表の作成などは、時間がかかるうえに毎月必ず行わなければなりません。 CWS for Careなどの人員配置基準を踏まえた施設全体のシフト作成が行えるICTシステムを利用すれば、作業効率が上がり、その分利用者のケアに時間を作ることができます。
介護業務効率化により得られるメリット
介護業務の効率化の効果は、事務作業時間の短縮、負荷の軽減と徐々にあらわれます。重要なのは、効率化によりもたらされた時間をどのように利用者のサービスの質の向上や顧客獲得に活用するかまで検討しておくことです。
これまで時間に追われて、残業をしてや限られた職員で行ってきた利用者の個別カンファレンスを日中の時間に出来るだけ多くの職員で行ったり、チームの課題への解決マネジメントが向上することで、事業所としてのコミュニケーションが円滑になり、対応力や魅力向上も期待できます。
仕事へのモチベーションが向上!
介護職員の仕事満足度の向上は、業務の効率化で得られるメリットの一つです。介護職員であっても事業の収益や支出に関心を持つことは大切で、介護の質の向上が、事業所のウリを作り、事業所の顧客獲得=収益向上につながり、さらに利用者のために貢献したいと意識を高めることは必要なことです。
また介護の質の向上という意識が職員それぞれに芽生えることで、仕事に対するモチベーション向上にもつながります。個々の介護職員の意識や雰囲気は職場の風土にも影響するため、結果的に優秀な人材を育成かつ確保出来るようになる好循環を生みます。
離職率の低下
業務内容が見直されて負担が軽減すると、介護職員の労働時間の短縮が図れたり、悩みを持つ職員への面談時間にあてたりすることが可能になります。
現場で働く介護職員が「自分は事業所から必要にされている」と感じることで、事業所や上司への信頼感が高まり、雇用環境や人間関係に不満をもって退職する介護職員を引き止めることにもつながるでしょう。
業務の効率化で介護の質を皆で上げよう
「慢性的に人手が足りない」、「時間内に業務が終わらない」と感じているのであれば、ICTを活用して、事業所全体の業務を見える化してみましょう。業務の見える化によって、介護内容や利用者個々の介護量を計測することができ、もっとも人の配置が必要になる時間帯を把握したり、介護ロボットで対応きる介護内容を決めことができます。
効率良く介護サービスを提供することができれば、介護者の負担軽減が可能になるだけではなく、サービスの質を向上の時間にかけることが出来るとともに、多様化する介護ニーズにも的確に対応することが可能になります。