2022年介護業界に求められるケアテック活用【第二回】ケアテック導入準備[業務分析]

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皆さま、はじめまして。ビーブリッドの竹下と申します。介護現場でケアテックが役立てる様、現場のICT化支援を生業に12年実践して参りました。

本コラムでは、介護業界は如何にケアテックに向き合っていくべきかを、これから数回に分けて述べて行きたいと思います。

前編の振り返りと、ケアテックの重要性

前回のコラムでは、2021年以前の振り返りとケアテックの現状と課題について触れさせて頂きました。

10年後や20年後の将来を見据えた時、人口減の最中に継続して提供するサービスの質を維持する為には、生産性の向上は必須条件です。これは国内のあらゆる産業において共通の課題であり、介護の現場においても例外では無いでしょう。

人口減社会の中で、「職員の負担を今以上に求めず」かつ「現状の介護の質を維持する」事を前提とした時、人手の確保[大量の移民の受け入れ,外国人人材活用,専門外業務の分業等]が急激に進まなければ実現は困難と言えます。但しこれもコロナ禍でリスクの一つになった事は言うまでもありません。

2022年と2023年の様に短期間で上述の問題を捉えてもピンと来ませんし、そもそも大きな変化を感じる事は無いでしょう。しかし、10年というスパンであれば間違いなく生産年齢人口は10%前後減少しますし、20年のそれで計算すると20%程度の減少となります。

これは即ち、現在介護の現場を担う為養成校等で勉学に勤しむ学生や、現場入職から間もない新人職員からすると、現場の一線で活躍するであろう年代になった際には、10人での業務を9人や8人で実践せねばならない時代が確実に訪れます。

もちろんケアテックは万能ではありませんし、まだまだ進化が必要です。しかし、今現在介護業界に求められる事は、先々を見据え、それの準備に当たる事であると筆者は考えます。

それを踏まえ、本篇ではこれからケアテック活用を具体的に進める事を検討する事業者にとって必要な準備と、その進め方について言及していきます。

1.業務分析を始めよう

業務改善の原則は、今まで当たり前と思っていた作業を俯瞰し省略出来ないかを検討する事です。特に介護は専門職の仕事ですから、対人援助の様に専門家でなければならない業務に関しては理由が無い限り効率化を図る必要性は低く、それ以外の業務を圧縮し、先の業務時間に再配分する事を検討しましょう。

特に事務系の業務や情報共有系の業務は、筆者の経験からすると見直しの余地が高いです。

2.業務分析と聞くと難しそうだけれど、少しでも簡単に行う為に

業務改善の余地を見つける為に、3つのM(ムリ・ムダ・ムラ)を探し出す事が重要です。厚生労働省ホームページにて公表されている、「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」※においても同様の記述がありますので参考にしてください。

また、3Mを見つける為に同ガイドライン掲載の「気づきシート」を活用しても良いでしょう。ここでは気づきシートのみの紹介となりますが、同ガイドラインには他のツールも掲載されていますので是非活用を検討してみて下さい。

気づきシート活用のアドバイス

ここでこのツールを更に有効に活用する為のアドバイスです。

この気付きシートはシート記載者の主観(自分の業務)だけでなく、必ず同僚の業務について客観的記載を求めましょう。

というのも中々自分が関わる業務について、ムダであるとかムリがある等、一見ネガティブな意見は言い辛いものです。しかし同僚が大変そうだという事であれば、それも意見がし易くなりますし、主観的評価だけでなく、客観的評価が加わる事でより課題が鮮明になります。

3.発見した課題の重み付け(優先順位の確定)

業務分析から得られた解決すべき課題に対する、対策の優先度を決めて行きます。

筆者や筆者が所属する会社では、以下の4つ観点にて5段階評価を行い、優先度を決めています。

①効果 (効果低1~大5)

対策を講じる事で、コストまたは時間をどれだけ圧縮できるか。

②緊急性(緊急低1~大5)

対策を放置した場合特定リスクが発動する等、急ぐ必要があるかどうか。

③コスト(効果1~安価5)

対策を講じる事で発生するコストの大小。

<ポイント>
ケアテック導入を検討する場合は、事前にメーカから見積もりを取る、導入済同業者に聞いてみる等、導入コストは事前に把握しましょう。また、購入に掛かるコスト(直接コスト)以外にも、間接コスト(対策する為に必要な学習時間等)についても検討に入れましょう。

④難易度(難易度大1~低5)

対策を打つ事自体の難しさ・容易さ。

対策を打つ事で大きくオペレーションが変容したり、利用者・入居者への承諾が新たに必要になる等の観点や、ケアテック導入時の使いこなしの容易さ等の観点で点数を付けましょう。

20点満点で点数の高いものから優先順位を付け、その他の要件によって順番を前後しましょう。

最初はそれが2点なのか3点なのか判断し辛いものもあるかと思いますが、業務改善を繰り返す事で事業所なりの観点がまとまってきますので、先ずは難しく考えず点数を付けてみてください。慣れるまでは5段階でなく3段階評価とするのも有効です。

<ポイント>

業務改善活動に慣れるまでは、難易度が低めのものを優先する事をお勧めします。

将来的には有益ではあれど、現場の皆様に取って多忙な中対策を推し進める事は業務負担にも繋がります。

先ずは、効果が低くても難易度が低いものを優先し、小さな成功体験を得る事が極めて肝要です。小さな成功体験を得てから難易度中や高の施策にチャレンジしていきましょう。

4.対策のスケジュール化と予算化

優先順位が確定したら、後は対策をいつ頃行うかのスケジュールを立てるのみです。

ケアテック導入となれば当然費用も発生しますし、少なくとも導入製品に関するトレーニングや業務変容についての職員教育も必要になりますから、それらを踏まえ上位の会議体(経営会議や理事会等)で予算化をしましょう。

本編ではケアテック導入までの準備としての業務分析について述べて参りましたが、次回はその他検討すべき要点について述べて行こうと思います。

▼前回のコラムはこちら

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