【連載3】看取り介護を考える:苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい

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病気などで苦しんでいる人に対して、励ましの言葉やアドバイスを送る事は逆効果になる場合もあります。そうした際、どのようなことを意識しておけばいいのでしょうか。めぐみ在宅クリニック院長で一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会理事、小澤竹俊先生にご解説いただきます。

励ましの言葉は、必ずしも苦しんでいる人にとってうれしいものではない

もし皆さんの目の前に苦しんでいる人、たとえば病を抱えていることで苦しんでいる人がいたら、何をしたらよいと考えますか。

少しでも笑顔が取り戻せるように励ましたいと思う人がいます。
そのため、勇気づけるような言葉をかけます。

しかし、残念ながらこのような声かけは、苦しむ人から見て必ずしもうれしいこととは限りません。

  • 簡単に言わないでよ
  • あなたは元気でしょう
  • 病気ではないでしょう
  • あなたには私の気持ちなんてわからないよ

このような声が返ってくるかもしれません。

どれほど私たちが心を込めて、相手の立場に立ち、物事を考えたとしても、相手の本当の苦しみを100%理解することはできません。

相手からみて「わかってくれる人」になることが大切

ではどうしたらよいのでしょうか。
ここでは、次のような発想をします。

私が、相手を100%理解することはできない。
しかし、相手が私のことを「わかってくれる人だ」と思うことには可能性がある。

つまり、私を主語とせず、相手を主語として考えます。

どのような私であれば、相手からみて、わかってくれる人になるのでしょうか。

それは、励ます私ではありません。
苦しみの原因を説明する私でもありません。
そばでじっと耳を傾けて聴く私です。

「理解した」相手の話を、人は聴かなくなってしまうという問題

聴くということは、簡単なようですが、とても難しいことです。
なぜならば、相手を理解したと思ったとき、人は相手の話を聴かなくなるからです。

少しだけ意識して、相手の伝えたい思いに耳を傾けてみませんか。

相手の伝えたい思いを、もし聴くことができたならば、相手の人は、あなたのことをわかってくれた人と思ってくれるかもしれません。

「苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい。」

これは、苦しむ人と向き合う上でもっとも大切な課題です。

改めて、別の角度からこの課題をご紹介してみたいと思います。

苦しみに気づく感性を養うには

前回、苦しんでいる人に対する接し方として有効なのは「励ましの言葉やアドバイス」ではなく「苦しみをわかってくれる人」と思ってもらえることだとお伝えしました。今回は、別の角度から「相手の苦しみに気付く」ためのポイントをお伝えします。

相手の苦しみに気づくことの難しさ

もし、あなたが子どもから「苦しみって何?」とか「どうして人は苦しむのかな?」などと聞かれたら、どのように答えますか?

そんなこと考えたことはないと思う人もいるでしょう。

苦しむ人の力になりたいと思うとき、相手の苦しみをキャッチすることは、もっとも大切な基本です。
しかし、そばにいて相手の苦しみに気づくことができるかというと、なかなか難しいことがあります。

例えば、朝のニュースを見終わったあと、「どんなニュースが流れていましたか?」と問われれば、ある程度答えることができるでしょう。
しかし、「ニュースキャスターのネクタイの色は?」と聞かれて答えることができる人は多くありません。 苦しみに気づくことも同じです。

ではどうしたら、苦しみに気づく感性を養うことができるのでしょうか?

苦しみは、どんなときに感じるのか

小学校では、次のような問いを紹介します。

問い:次の3人の苦しみの共通点はどんなことでしょう。20字以内で答えてください。

  1. 朝起きることがつらい
  2. 宿題がつらい
  3. 花粉症がつらい

答え:苦しみの共通点は、「希望」と「現実」との間に開きがあること

朝起きることがつらい人は、朝寝ていたいという希望に対して、起きないといけないという現実があるから苦しい、と捉えます。
遠足の朝などは、子ども達は早く起きることでしょう。
このときは、どんなに朝が早くても、つらくありません。

同様に、宿題をしたくないという希望に対して、しなくてはいけないという現実との間に開きがあるとき、それを苦しみと捉えます。

もちろん、宿題がつらくないと捉える人もいるわけです。
相手の希望と現実の開きが苦しみであることに気づくと、何気ない相手の言葉や態度に、いかに多くの苦しみのメッセージが含まれているかに気づく感性が養われることでしょう。

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