2022年介護業界に求められるケアテック活用【第一回】ケアテックの概況と展望

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ケアテックの概況と展望

皆さま、はじめまして。ビーブリッドの竹下と申します。介護現場でケアテックが役立てる様、現場のICT化支援を生業に12年実践して参りました。

本コラムでは、介護業界は如何にケアテックに向き合っていくべきかを、これから数回に分けて述べて行きたいと思います。

2021年は潮目の年でした

筆者の会社はケアテックに関わってから凡そ12年が経つのですが、昨年は過去と比較し最もICT化の波が大きくなった年であったと感じています。

一昨年(2020年)までは、事業者が各々のペースで取り組むべき、生産性向上に資するICT活用がテーマでした。ところが、昨年の法改正により皆さまにとって非常に大きな意味を持つ「科学的介護の推進」がテーマとして加わりました。

また、それとは別にICT等の活用によるケアプランの逓減制の緩和や、一部サービスにおけるICT活用による夜間職員配置基準緩和等、過去と比較できない程のICT活用に関連する改正内容が盛り込まれ、介護業務におけるICT活用は重要性を増しています。

ICT活用を推し進めてきた筆者からすると歓迎すべき内容と捉える事も出来ますが、この潮流の変化が大き過ぎると感じている事や、取り組み自体が必須かつ急務(各々のペースでは無く、例えば次回法改正まで)となった事に心配をしています。また、これらの潮流の変化は、現在我が国が抱える人口減社会、高齢者や障がい者人口増加に伴う需要増を考慮すると一過性のものとは考えられず、今後も政府主導でケアテック活用による生産性向上や、科学的介護の推進の流れはむしろ強まって行くでしょう。

これまでのケアテック

ケアテック製品およびサービスは、筆者が見て来た過去を振り返りますと、近年施設向け製品が中心とはなりますが、インカム、見守り系機器、コミュニケーションツール、自動化(AI系)ツール等、カテゴリ的にも過去と比較し非常に多様化をしましたし、製品毎の進化は目覚ましいものです。

また、導入をしないと決めている事業者も一部存在しますが※、多くのベンダーによる介護記録のソフトの充実やその普及も大きく進みました。今や記録から請求をシステム上一貫して行っている事業者は少なくありません。

※WAM 2021 年度(令和 3 年度)介護報酬改定に関するアンケート調査公表データによる

この様にケアテックの普及や進化は、現場の皆さまからすればまだまだ未熟だという声も多くありますが、以前に比べて選択肢が増えたという事は喜ばしい事だと思います。

提供側つまりケアテック企業からすると、どのカテゴリの製品においても良くも悪くも競合がいて、切磋琢磨出来る市場となったという事の表れだと思います。以前は各カテゴリに競合製品はほぼいなかったことを考えると、比較対象サービスが存在するという事は製品開発側にとって有益です。

現状の課題

一方で、選択肢が増えた事は事業者にとって良い側面と、「複数サービスから選ばねばならない」という新たな課題を生みました。現在筆者が受ける上位の相談内容として、各製品の比較に関する助言は、まさにこの現状から生まれたと課題だといえましょう。

また、令和2年の介護労働安定センターによる介護労働実態調査によると、回答された事業所の実に35%以上が「ICT機器を技術的に使いこなせるか心配である」と回答しており、また、筆者が所属するビーブリッド社の独自調査によると、ICTに興味を持つ事業者に絞り込んだ場合、実に50%以上が同不安を持っている事が結果として表れています。

今後は導入前と導入だけではなく、導入後を見据えた全方位の対策が必要となるでしょう。

ビーブリッドサークル図

まとめ

上述させて頂いた通り、ケアテックの普及と成長は今後もより進むと筆者は考えます。

人口減社会に伴う、人手不足でも介護の質を維持する為にケアテック活用を進めて行く為には、この様な課題を認識しながら、現場が不安にならない、現場を混乱させないケアテック普及が肝要と考えます。

その為にはケアテック企業による、現場に納得感が得られる製品開発ももちろん必要ですが、介護の現場側でも、10年後20年後を見据えた、現場や利用者にとって有益な事業運営を見据えたケアテック活用について、双方で考えて行かねば実現は困難だと考えます。

次回は、この様な現状のなか介護事業者として取り組むべき具体策について、述べて行きたいと思います。

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