管理者の役割は、ご家族や地域の皆さんとの関係作りも大切になります。
令和3年介護報酬改定でも『日頃からの備えと業務継続に向けた取組の推進』として、災害時における地域との連携おいて、施設系サービスの災害時を想定した訓練も地域住民の参加が得られるよう連携を図ることが努力義務で明示されました。
今回は管理者の役割でもある、ご家族や地域の皆さんとの関係作りについてご紹介しますので、ご活用頂ければ幸いです。
ご家族について
①ご利用者の暮らしの様子や情報を伝える
⇒事業所が伝えたいこととご家族が知りたいことが一致しているとは限らない
⇒ご家族が心配していること・知りたいことは何か?
②家族が意見や要望・相談を伝えやすい環境を作る
⇒ご家族に対して職員全員が適切に応対しているか?
⇒職員に伝えやすい環境・雰囲気となっているのか?
③ご家族同士が交流できる機会を作る
⇒家族会、家族懇談会、交流企画など
◆ご家族とご利用者とのこれまでの関係性やご家族が抱いている心情を理解しようとする姿勢が求められる
◎管理者としての留意点
①ご家族に安心感を持っていただくために、ご利用者の暮らしの様子やサービスのあり方を情報として伝えましょう。それぞれの場面で家族は「不安」だったり、「知りたいこと」があります。
⇒ご家族がその時々でどのようなご不安を感じるのかを知る。
⇒事前にご家族がどのような情報を欲しているのかをご確認する。
⇒ご利用者の変化をこまめに報告し、家族と共有する(特に認知能力やADLが落ちている懸念の場合)
⇒どのような方法でお伝えすることをご希望されているのかを知る。
ご家族へご連絡する時の注意点として、ネガティブなことを伝える場合は、ご家族のご心配やご不安が増大しないような配慮が必要。
②ご家族がご意見や要望・ご相談を伝えやすい環境作りを整備しましょう。
- 管理者が毎日、職場にいるわけではありません。
不在時も職員全員が同じレベルで、家族対応できることが求められる。
⇒ご家族のご意見やご要望が私たち自身の支援やサービスのあり方の振り返りとなり、ご利用者の暮らしの向上につながる意識が共有されているか?
⇒職員からご家族にご確認する(拝聴とする)姿勢が持てているか?
⇒ご家族が伝えやすい環境となっているのか?
伝える場を意図的に作っているか?
⇒ご家族それぞれの気持ちやご事情に配慮できているか?
ご家族の情報も職員全員に正しく共有されているか?
◎取り組みの仕方
- 情報や要ご望をいただくだけではなく、それについて取り組み、その経過や結果を確実にお伝えすること。
- サービス担当者会議の活用
- ご家族アンケートの実施
ご家族がアンケートに本当の気持ちを伝えやすい工夫をする
(返送窓口は職員ではなく、管理者等返送窓口の配慮を行う。)
③ご家族のご意見の反映やご家族交流
→家族会の設立
→家族懇談会など、ご家族と職員との交流の場の設定
→交流企画の開催など、ご家族同士の交流の場の確保
◎課題
いつも決まったご家族が参加される傾向があるため、出来る限り多くのご家族の参加につながるような働き掛けが必要となります。
自分たちが考える「ご家族はこうあるべきだ」という価値観で判断しない。
ご利用者だけを見て、ご家族に「もっと○○してください」と押し付けるようなことはしない。
⇒管理者として「それぞれのご家族には共に歩んできた歴史」があること、その関係の中で生まれている感情や心情に十分に配慮する必要があることを伝える役割がある。
地域について(1)
◆「地域」とは何か?
◆なぜ、「地域」との関係が必要なのか?
①ご利用者の暮らしにおいて
- 今での生活スタイルの継続
- 馴染みある人や場所とのつながり
②事業所の運営において
- 事業所を支えてくれる人作り、環境作り
③地域が持つ力の向上
- 住民が住み慣れた町、地域で安心して住み続けることができるために
地域について(2)
①地域のことを知る
- 運営推進会議等の活用
- 地域で開催される会議への出席
⇒事業所が持つ機能(専門性)を地域に還元する
⇒一緒に考え、作ることができる関係作り
②事業所のことを知って頂く
- 交流できる機会を作る
⇒住民が地域に出て行く環境、人が寄りやすい環境
⇒何かあったら相談できる場所があることの安心感
③事業所がある地域のことを知りましょう。
- 地域の方と意見や情報交換する機会を持つ。
⇒運営推進会議の活用や町内会への参加、地域ケア会議への参加等
◎課題
○運営推進会議のマンネリ化、相互のコミュニケーションがうまくとれない等の課題がある。
- 事業所が持つ機能を還元する。
⇒地域の話を聞き、その地域にとって何が必要なのかを地域の人と一緒に考える。
事業所だけで考えることには限界がある、地域が求めていることとズレが生じる場合もある。
一緒に考えることで、地域の方が協力者・サポーターになってくれる。
反対に高齢化に伴い、地域の中で考え、取り組むことにも限界があるかもしれないので、事業所の持つ力を地域の中で出していく。
④地域の方と交流できる機会を作りましょう。
- 地域に出て行く環境作り
⇒町の祭りや行事
⇒災害訓練などへの参加
⇒地域の商店や設備を利用する - 事業所に人が立ち寄りやすい環境作り
⇒事業所が主催する企画に参加を呼びかけることから始める。
例えば、定期的な企画がその後の交流につながりやすい
(法話・お茶会・料理作りなど)。
地域の方の外出の機会や事業所においで頂いた際に、事業所の持つ機能をアピールできる方法を考える
(介護・看護・口腔・栄養等の様々な相談)
⇒何かあったら相談できる場所が事業所であることにつながる。
◎課題
- 事業所で情報を得ただけにせず、地域の行事に参加することが大切
⇒適切な対応のために、柔軟に人員を調整することが求められる。
地域の介護の拠点として、どのような機能を持つのか、持てるのかを考えていくことがこれから必要となってくる。
まとめ
私が立ち上げから関わっている料理特化型デイサービスでは、定期的にご家族やケアマネジャーをお招きし、『ご利用者のお料理の成果発表会』や地域の方々へ子供とご両親向けの『親子クッキング教室』を開催し、皆さんに喜んで頂いています。
介護事業所に出向くというのは、地域の皆さんにとって敷居が高いと言われることが多く、地域の身近な介護事業所となるためには、地道な事業所を知って頂く継続営業活動が必要になりますので、心がけて下さい。