ケースカンファレンスを様々な場面で開催される際に、開催時期や運営方法等で悩まれることも多いと思います。今回はケースカンファレンスを円滑に行うための技法をご紹介しますので、皆さんの有意義なケースカンファレンスに、ご活用頂ければ幸いです。
目次
報告・連絡・相談の違いを知る
①報告…
相手に伝達することであるが、単に伝えるだけではなく報告する人が報告すべき内容を言語化し、報告を受ける人が最も理解できる方法で知らせること。したがって一方的に伝えるのではなく報告する前に求められた内容と一致しているか、相手が理解しやすい内容であるか確認が必要(縦のコミュニケーション)
②連絡…
情報共有であり、チーム内の連絡には業務上の引継ぎ事項・特記事項など日常業務に関することが多く、チームの行動を支える基礎である(横のコミュニケーション)
③相談…
課題解決を図るための1つの手段。相談する側と相談を受ける側のコミュニケーションであることから信頼関係が大切になる
建設的なコミュニケーションを図る
①5W1Hをふまえて話す
いつ(when)、どこで(where)、だれが(who)、なにを(what)、どのように(how)、なぜ(why)話す側も聞く側も大切
②意見と感想の違い
意見…個人の考えを述べること
感想…自身の思いであり主観や感情、好みが前面に出やすい
※カンファレンスでは支援者の個人的な思いや主観は極力排除し、支援対象者自身の体験している事実や専門的視点に基づいた話し合いが求められる
③否定はしない
否定…そうでないと打ち消すこと。価値などを認めないこと
④事実と判断・解釈が加えられた情報を区別する
支援者の判断や解釈が加えられた抽象化された情報からは、具体的なケアを導くことができないばかりか、事実とはかけ離れたところで議論が展開される可能性がある。事実とは離れた情報に基づいて導かれたケアは支援対象者のニーズを満たすことは難しい。
⑤お互いの専門性を尊重する
職種ごとに専門的視点の相違が生じることがある。見解の違いはお互いの専門性を知る機会となるので見解の優位性を争うのではなく、お互いの見解を尊重し、議論する中で支援対象者の状態に応じた適切なケアを選択するなど、より建設的なコミニュケーションが求められる。
効果的なケースカンファレンスの展開
ケースカンファレンスの展開過程(進め方)
Stage1 事前準備
- 開催通知
- 会場の確保と準備
- 事例提供者の決定
- 開催目的の明確化
- 資料の準備
Stage2 開会
- 定刻に開始、終了時間を明示
- 役割分担(司会・書記)
- カンファレンスの目的を確認する
- 参加者の紹介
必要に応じて自己紹介 - 展開過程(流れ、時間配分等)を確認
Stage3 事例の提示
- 事例提供者を改めて紹介
- 安心して発言できるような雰囲気づくり
- 事例概要と事例の選定理由(課題や検討事項)を明示
- 配布資料等にそって事例提供者が説明
- 検討事項の提示
- 要点や検討事項を整理
Stage4 事例の共有化
事例を共有するための質問《厳守すべきルール》
事例提供者の批判をしない
- 事例提供者の思いを共有する
- 情報を整理する
Stage5 課題の明確化
- 事例の選定理由にも配慮しながら、課題(論点)を2~3点に整理する
- 社会資源等の整理も行う
Stage6 課題の検討
- 課題(論点)にそってディスカッションを展開
- 全体の雰囲気作りに配慮
- 事例を深める
利用者の立場から検討事項をとらえたときの意味やメッセージに焦点をあてる。あくまで「利用者本位」の視点から考える - 今後の援助のあり方、取り組みを検討
Stage7 まとめ
- 検討内容の整理、記録
- 事例についての最終的なまとめどう利用者を理解したか
今後の援助の方向性、かかわりのあり方具体的な取り組み、残った課題等 - カンファレンスそのものの振り返り参加メンバーの感想等
- 守秘義務(プライバシー保護)についての確認
Stage8 閉会
- 定刻に終了
- 参加者全員がねぎらいの言葉をかけあう• 必要に応じて次回のカンファレンスの調整や案内を行う
意見が出にくい状況とは
- 話されている内容が十分理解できない
- 考えをまとめている
- 参加者同士が、別の人間関係の影響で牽制し合っている
- 自分の発言で事例提供者や参加者との人間関係に影響を与えると思って沈黙していることもある
意見が出にくい場合の対応とは
- 司会者が質問責めにすると、問わなければ語らない習慣がついてしまい、参加者同士の相互交流が妨げられるだけでなく、参加者の考えや感情の表出を遮ることになる。
- 可能であれば、沈黙を破るのは参加者からというように声がけの工夫を
カンファレンスで大切なこと
カンファレンスでは、最初から何らかの「答え」があってそこにたどり着くための場なのではなく参加メンバー全員による協働作業によって、「今後の方向性や取り組み」を見いだす創造的な機会
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カンファレンスの目的・方法の理解が重要
カンファレンスの留意点
カンファレンスは、本来、支援対象者自らが「意思表示」を行い、支援者は、そのことを尊重しながら今後の支援の方向性を見いだしていく場
↓
- 支援対象者が安心して意思表明できる関係性が構築されているか。事前準備がていねいに行えているか。意思表明しやすい雰囲気か
- 十分な情報提供、より豊かな選択肢の提案を
- 本人(支援対象者)の強みを知る
- 真のニーズはなにか
- 自己決定の尊重
支援対象者自らが参加でき意思表明できる場づくりを丁寧に行うことが「尊厳」を守ることへつながる
事業所におけるカンファレンスの効果的な進め方
- 開催準備を支援対象者とともに丁寧に取り組む
- 関係職員すべてが支援対象者へのかかわりを深める
- 関係職員の専門性や意見の相違を認め合える
(違うからこそチームの意味がある、誰の意見かではなく、何が話し合われているかを重視する) - 支援対象者を主語に話し合う
- 「できていること」を認め合う
- いまできること1つから大切に取り組む
- 支援目標を共有し、各々の役割を明確に(連携の意味を考える)
効果的なカンファレンスを展開していくためのリーダーの役割
- 誰のための、何のための場なのかの共有を図る(支援対象者の自己決定を大切に)
- 参加者の支持、信頼関係の構築
- 安心して発言できる場づくり
- 参加者の「考える」「表現する」「受けとめる」「気づく」を支える
- 論点(課題)の整理と焦点化
・ 支援対象者の悩んでいることに向きあえているか
・ 私達自身のかかわりの問題に向きあえているか
・ 支援対象者と私達とが有する課題を混同していないか - 社会資源(関係力)の活用の視点
まとめ
ケースカンファレンスとは、知識・経験・技術の交換や交流をしながら支援です。対象者の支援方針・方法を見出すだけでなく、事例提供者や参加者の自己研鑚の場でありケースカンファレンス参加者全員のグループワークの過程です。
このグループワークを重ねることで、皆さんの経験からの知識や技術が増え、共感・共有が出来ますので、ご利用者の支援にとって何を優先すべきかを主に学びの機会として下さい。